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夢の螺旋  作者: Tomokazu
第一章
13/18

9

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 教授室にて、凜は石山と向き合っていた。


「実験の結果が出たようだね」


 石山はゆっくり言葉を紡いだ。


「はい」

 と、凜は短く答える。


「君のことだから、実験自体は滞りなく進められただろうけどね」


「もちろん、きちんとデータは取れています」


「じゃあ、結果を見せてもらおうか」


 凜は石山に紙を差し出した。A4サイズの用紙数枚にわたって、A、T、G、C、4種類のアルファベットの羅列が続いている。DNAサンプルの解析結果だ。その中の一部の配列を示す記号が、赤文字で書かれていた。



“GCAGTGCATAGTGATCAGTGCCCTA”



 そんなパターンの配列が、続けざまに、もしくはわずか数塩基か数十塩基のインターバルをはさんで、繰り返されている箇所があった。STR配列を示す塩基配列である。


「これは、ほぅ――」


 石山はその部分に、目を見やった。


「驚きました。これだけ保存度の高い状態のサンプルははじめてです」


「そうだね。保有者であっても、数十塩基対程度しか確認できない人もいるからね」


「このサンプルのSTR配列の長さは、全体で1000塩基対近くもあります」


「そのようだね」


「驚きの保存度です。僕の知る限り、ここまで長く、完璧な配列が続いているサンプルは見たことがない」


 STR配列の保有者であっても、その領域に欠失、塩基の置換、異なる塩基配列の挿入などの変異が起こっており、保存度が低くなっている例は珍しくはない。だが、このサンプルの保存度はほぼ完璧といってよかった。


「一体、このサンプルは何なんですか」


 凜は、先日の質問を改めて石山に投げかけた。


「さあ――何なんだろうね。もう少し、自分で考えてみないか」


「考えるも何も、こちらに与えられている手がかりが少なすぎます」


「これから見つかってくるかもね。――そうだ、そのためにもう一つ、別のサンプルを君に渡してあげよう」


 凜は眉をひそめた。いつまでこんなことに付き合わされなければならないのだろう。


「そんな顔をしないで。まあ、ゲームみたいなものだよ」


「ゲーム? お遊びってわけですか」


「有望な君に向けた、私からの挑戦状――というところかな」


「僕の身にもなってくれませんか」


「まあ、そう言わず。もう少しくらい、老人の我儘に付き合っても罰は当たらないよ」


 凜の胸の中は不安でいっぱいだった。しかし、どこかやり遂げるという気概もあった。乗りかかった船だ。ここで降りてしまうのも悔しい。石山が秘密にしている真実を、自分の手で引きずりだしてやる――と凜は内心で強く決意した。

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