第4話:『忠義の騎士は、白くて丸い』
1. 白い来訪者
「ふむ、今日のフォロワーの伸びは緩やかだな。やはり定期的に『あざとい動画』を投下せねばならんか……」
クロが縁側でスマホの画面(さくらの置き忘れ)を肉球で操作していた、その時。
庭の生垣を突き破り、真っ白でふわふわした「毛玉」が猛スピードで転がり込んできた。
「ハァッ、ハァッ……! 見つけた……ついに見つけたぞ! 我が魂の主、ヴァルザー様ぁーッ!!」
「……ぬおっ!? 何だ、この動く綿菓子は!」
クロが飛び上がると、その白い物体は二本足で立ち上がり(のつもり)、激しく尻尾を振った。
その振動で全身の毛が揺れ、もはや生き物というよりは、激しく振動するモップである。
「お忘れですか! 魔界騎士団長、ゼノンにございます! この屈辱的な『ポメラニアン』という肉体に転生してもなお、我が忠誠心は微塵も揺らぎませぬ!」
2. 暑苦しい忠誠心
「ゼノンか! 貴様、その……なんだ、その殺傷能力の欠片もなさそうな姿は。まるで雲ではないか」
「それを言うならヴァルザー様! 先日のネット動画、拝見いたしましたぞ! テレビ台の下で震えていらしたあのお姿……騎士団長ゼノン、不甲斐なさに血涙を流しました! 」
「すぐにあの放送局を焼き払いに行きましょう!」
キャンキャン! と高い声で吠え立てるゼノンに、クロは耳を伏せて辟易とする。
「待て、落ち着けゼノン。あれは……そう、人類を油断させるための高度な心理戦だ」
「おおっ! さすがは我が主! 敢えて情けない姿を晒し、全人類の母性本能を掌握して、精神的に支配する……『覇王(可愛い)』の極意ですね!」
「……まあ、概ねそうだ。だから勝手に放送局を焼くな。我がフォロワーが減るだろうが」
3. 聖なる供物の衝撃
そこへ、学校からさくらが帰宅した。
「ただいまー。……あれ? 何この白いワンちゃん! 迷子? どこの子!? 超かわいい〜〜!!」
さくらはカバンを放り出すと、ゼノン……もとい「ポメ」を抱き上げた。
「ぐっ、離せ人間! 我は高潔なる魔界騎士……貴様のような下等生物に抱かれるなど、死に勝る――」
「よしよし、いい子だねぇ。お腹空いてるのかな? これ食べる?」
さくらが差し出したのは、犬用ミルククッキーだった。
鼻先をくすぐる、芳醇なミルクとバターの香り。ゼノンの理性が、ポメラニアンの野生(食欲)によって激しく侵食される。
「ふん、毒見……毒見が必要だ。我が主を害さぬよう、この私が……はむっ」
サクサク、という軽快な音。
次の瞬間、ゼノンの瞳から大粒の涙が溢れ出した。
「な、なんという慈悲深い甘さ……! ヴァルザー様、この娘、もしや天界の聖女か何かですか!? このような至高の霊薬を惜しげもなく与えるとは……ッ!」
「……クッキーだ。ただのクッキーだぞ、ゼノン」
4. 騎士の新たな任務
数分後。
そこには、さくらの「お座り! お手!」という指示に従い、完璧なキレで前足を出しているゼノンの姿があった。
「よし、お利口さん! クロちゃんとお友達になれそうだね」
さくらに頭を撫で回され、ゼノンは「ハッハッハッ」と舌を出しながら、全力で尻尾を振っている。
(……こいつも、ダメだ。一瞬で堕ちおった)
クロが呆れていると、庭の向こうからゴールデンレトリバーのアレク(勇者)が散歩で通りかかった。
アレクは、さくらに懐きまくっているゼノンを一瞥し、深い溜息をついた。
『……ヴァルザーよ。お前のところの騎士も、結局「おやつ」の魔力には勝てなかったようだな』
「……黙れアレクサンダー。貴様、後でゼノンに噛まれても知らんぞ」
こうして、魔王の拠地には「暑苦しいほど忠実な(おやつに弱い)騎士」が加わった。
世界征服への道のりは、ますます賑やか(カオス)になっていく。
【次回予告】
我が覇道に立ちはだかる、新たなる「癒やし」の拠点。
そこに鎮座していたのは、顔のパーツが中心に集まりすぎた「鼻ペチャ」の魔族だった。
「……ベルゼ! 第四王子のベルゼか! 貴様、その顔……壁にでも激突したのか?」
親子(?)の再会が、血で血を洗う「ブサかわ」バトルを巻き起こす!
次回:『猫カフェの支配者、エキゾチックな罠』
お楽しみに!
ふん、最後まで読み進めた貴様を、我が軍の『読者』に任命してやろう。
貴様の端末の下にある【★評価】と【ブックマーク】のボタンを押すが良い。
それは点数ではない。我が今夜、侍女から「ちゅ〜る」を献上させるための『信仰心』だ!
★を五つ捧げ、我が覇道に貢献せよ。
決して、おやつが欲しいから媚びているわけではないぞ! クカカカ!




