第3話:『深淵の眼光(※ただしカメラ目線)』
第3話スタートです!世界征服計画ついに始動?
1. 魔法の鏡、SNS
「ほう……。この光る板切れ一つで、数万の人間を操れるというのか」
クロはさくらの机の上で、彼女のスマホを前足で器用にスワイプしていた。
画面に流れるのは、先日さくらが投稿した「学校の窓際で数学教師を睨みつけるクロ」の写真だ。
『この猫、覇王色の覇気出してるな』
『「貴様に教わることなど何もない」って顔してて草』
『中二病の権化みたいな黒猫だなw』
「クカカカ! そうだ、もっと我を恐れ、崇めるが良い! 人類が我に『いいね』という名の供物を捧げておるわ!」
クロは満足げに喉を鳴らした。
物理的な世界征服は時間がかかるが、この「えすえぬえす」なる魔術を使えば、寝そべりながらにして民衆を洗脳できるのではないか。
魔王は確信した。
今、時代はデジタルだと。
2. 魔王セルフプロデュース
「さくらよ、その魔法具を構えよ。我が真の力を、愚民どもに見せつけてくれる」
「あ、クロちゃん。また変なポーズしてる。動画撮っちゃおうかな」
クロは渾身の演技を開始した。
まずは、カーテンの陰から顔の半分だけを出し、鋭い眼光を向ける。
(名付けて、『深淵より覗く者』ポーズだ!)
次に、さくらの勉強机にあった黒いマジックペンを前足で抱え、天に突き出す。
(これぞ、『闇を切り裂く魔剣』!)
さらに、夕暮れ時の窓際。逆光を浴びながら、片目だけを前足で覆い、物憂げに遠くを見つめる。
(『疼く邪気眼……クッ、鎮まれ我が右腕よ!』……完璧だ)
「わははは! 面白い! クロちゃん、本当にお笑いの才能あるよ!」
さくらはゲラゲラ笑いながら、ハッシュタグ「#中二病猫」「#闇の王」を付けて動画をアップロードした。
3. バズという名の暴走
数時間後、ネット界隈は騒然となった。
クロの徹底した「中二病ムーブ」は、あまりのクオリティの高さにミーム化し、爆発的に拡散されたのである。
『誰かこの猫のセリフ、CV:津田健次郎で脳内再生してくれ』
『猫なのに「フン、所詮はこの程度の世界か」とか言ってそう』
『この猫が前を通ったら不吉どころか、異世界に転生させられそう』
スマホの通知音が「ピコン、ピコン」と鳴り止まない。
クロは「フハハ! 鳴れ! 鳴り響け! 我への称賛の鐘よ!」と大はしゃぎ。ついには、通知の音に合わせて尻尾でリズムを取り始める始末だ。
しかし、事態は思わぬ方向へ。
「ねえクロちゃん、すごいよ! テレビ番組から『出演してほしい』ってDMが来ちゃった!」
「て、てれび……?」
クロの動きが止まった。
さくらが見せた動画には、巨大なスタジオで大勢の人間がモニターを指差して笑っている姿が映っていた。
「……ま、待て。あの巨大な箱は、一度に数百万人もの視線を吸い込む広域殲滅魔法ではないのか? 魂を……魂を引っこ抜かれるアレではないのか!?」
4. 魔王、震える
翌日。番組スタッフがさくらの家へやってきた。
カメラが回る中、さくらが「クロちゃん、いつものポーズして!」と促す。
だが。
「む、無理だ……。あの巨大なレンズ、まるでゴーレムの単眼のようではないか……。殺される……我はまだ、ちゅ〜るの全フレーバーを制覇しておらぬというのに……!」
さっきまで「我は闇の王なり!」と豪語していたクロは、どこへやら。
彼は完全にビビり倒し、テレビ台の裏の、埃まみれの隙間にシュバババッと逃げ込んだ。
「あー、ごめんなさい。うちの子、内弁慶で……」
結局、放送された映像は、
『ネットで話題の魔王猫、実物はただのビビリだった!』
というテロップと共に、お尻だけをテレビ台の下に出してプルプル震えているクロの姿だった。
『ギャップ萌えwww』
『中二病設定のキャラが実はヘタレなの、お約束だけど最高』
『お尻が黒いたわしみたいで可愛い』
フォロワー数はさらに倍増。
クロは夜、さくらの布団の中で「解せぬ……」と呟きながら、悔しさ紛れにさくらの指を甘噛みするのであった。
【次回予告】
さらなる転生者の気配。
我が庭に転がり込んできたのは、真っ白でふわふわした「動くモップ」だった。
「ヴァルザー様ぁー!」と叫ぶそいつの正体は、魔界一の武闘派……だったはずの男。
次回:『忠義の騎士は、白くて丸い』
お楽しみに!
ふん、最後まで読み進めた貴様を、我が軍の『読者』に任命してやろう。
貴様の端末の下にある【★評価】と【ブックマーク】のボタンを押すが良い。
それは点数ではない。我が今夜、侍女から「ちゅ〜る」を献上させるための『信仰心』だ!
★を五つ捧げ、我が覇道に貢献せよ。
決して、おやつが欲しいから媚びているわけではないぞ! クカカカ!




