第2部 第15話:『天界の視察員、魔王の「おへそ」を狙う!』
1. 黄金の飛来物
映画『THE MOFU-MOFU』が全世界で興行収入1位を記録し、人類の文明が「クロ様を愛でるため」だけに回り始めた頃。
さくらの家の庭に、尋常ではない神々しさを放つ一羽の「真っ白なウサギ」が舞い降りた。
その背中には小さな羽が生えており、額には知性を宿した紋章が輝いている。
「ヴァルザー、そしてリリス。地上でのあまりの堕落ぶり……天界の監視網も無視できなくなりましたよ」
「……その、無駄に高潔で鼻につく声。天界の監査官、六翼のミカエル(ウサギ)か!」
クロはキャットタワーの最上階から身構えた。ついに、この「モフモフの楽園」を破壊しに来た、本当の『聖域』からの刺客が現れたのだ。
2. 天界の粛清
「人類の魂を『可愛い』という名の邪教で汚染し、経済を麻痺させた罪、重いですよ。これより、貴方たちの魔力の源を封印し、天界へ強制連行します」
ミカエルが耳をピンと立て、神聖な魔力を練り上げる。
「待て! 我らが連行されれば、絶望した人類が暴動を起こすぞ! それでも良いのか!」
「構いません。天界には、もっと純粋な『癒やし』があります。……まずは貴方、ヴァルザー。その『おへそ』にある、魔力の結節点を突かせていただきます!」
ウサギの姿をしたミカエルが、驚異的な脚力で跳躍した。狙いは、仰向けで寝ているクロの無防備な腹部――「おへそ」である。
「ぐわぁぁ! やめろ! そこは我の弱点……というか、普通に恥ずかしいところだ!」
3. 聖域の崩壊(接待)
混乱の中、学校から帰ってきたさくらが扉を開けた。
「ただいまー! ……あれ? また新しいお友達? ……わあぁぁ!! 何この天使みたいなウサギさん!!」
さくらはミカエルを見るなり、その圧倒的な「聖なるモフモフ」に理性を失い、ミカエルを優しく、しかし力強く抱き上げた。
「な……放しなさい、下等な人間! 私は天界の――はっ!? 何だ、この掌から伝わる、母なる大地のような温もりは……!」
さくらが慣れた手つきで、ミカエルの耳の付け根を絶妙な力加減でマッサージし始める。
「はい、これお近づきのしるしの『国産イチゴ・練乳ジュレ添え』だよ!」
「…………っ!!(シャクシャクシャク!) ……美味しい。天界のカスミより、圧倒的に糖度が高い……!」
4. 終戦のゴロゴロ
一時間後。
そこには、さくらの膝の上で、リリス、ベルゼ、そしてミカエルが並んで「とろけている」姿があった。
「……ミカエルよ。天界の正義はどうしたのだ」
クロが呆れて尋ねると、ミカエルはイチゴの果汁を口元につけながら、うつろな目で答えた。
「……正義? そんなものは、このジュレの前では無力です。ヴァルザー。……この家を『天界の出張所』として認定します。私も、ここに住みます」
「な……っ!? 貴様まで居座るというのか!」
『……ミカエル様。ようこそ、堕落の殿堂へ』
ポチとアレクも、もはや驚くことなく新しい同居人を受け入れた。
5. 支配の先の日常
夜。さくらのSNSには、黒猫、白猫、鼻ペチャ猫、そして羽の生えた(ように見える)ウサギが、一つのホットカーペットで「団子」になっている写真が投稿された。
タイトルは――『世界平和、達成しちゃいました!』
クロは、さくらの指先を甘噛みしながら思った。
世界征服も、魔界の再興も、天界の粛清も、すべてはこの「六畳一間の聖域」の心地よさには勝てないのだ。
「ふにゃ〜ん(ま、明日からもこの調子で、適当に人類を支配してやるか)」
ふん、最後まで読み進めた貴様を、我が軍の『読者』に任命してやろう。
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それは点数ではない。我が今夜、侍女から「ちゅ〜る」を献上させるための『信仰心』だ!
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決して、おやつが欲しいから媚びているわけではないぞ! クカカカ!




