第2部 第14話:『全米が泣いた(笑った)、魔王の銀幕デビュー!』
1. 敏腕の帰還
「……クロ様。いえ、主演俳優のヴァルザー様。準備はよろしいですか?」
SNSの熱狂をビジネスチャンスに変えたシャロン(元・暗殺ギルド受付嬢)が、分厚い脚本を手に、さくらの家のリビングに現れた。
「何だ、その……不吉な厚みの紙束は」
「全米3000館公開予定の超大作、映画『THE MOFU-MOFU』の脚本です。貴方には、世界をモフモフの深淵で包み込む『闇の猫神』を演じていただきます」
「……ほう。ついに我の真の姿を映像化しようというのか。良かろう、ハリウッドとやらに魔王の真髄を叩き込んでくれるわ!」
2. ハリウッド流の洗礼
後日。さくらの家の庭に、豪華な撮影クルーと巨大なクレーンが到着した。
「リリス様、照明が暗いです! もっと『自分が世界の中心である』という光を放ってください!」
「言われなくても、私の輝きは太陽を超えているわよ!」
リリスは、シャロンが用意した特注のダイヤ付き首輪をつけ、カメラの前で優雅に毛繕いを始めた。一方、ベルゼは特殊メイクならぬ「特殊衣装」に身を包んでいた。
「父上……。この『トゲトゲの首輪』、重たくて……スピースピー……。というか、私の役どころが『地獄の門番(パグと誤認)』というのは、どういうことですか……」
「我慢せよベルゼ。それが『THE MOFU-MOFU』における主要なポジションなのだ(たぶん)」
3. 魔王の「演技」指導
いよいよクロのソロシーン。監督がメガホンを構える。
「ヴァルザー様、ここで人類を絶望させる『最凶の咆哮』をお願いします!」
(クカカ……見ておれ。全人類の心臓を止めてやる!)
クロは岩(猫用爪とぎ)の上に立ち、全身の魔力を喉に集中させた。
「ニャーーーーン!!(貴様らすべて、我が肉球の塵となれ!!)」
……その瞬間。
撮影現場に居合わせた全スタッフが、胸を押さえてその場に跪いた。
「……素晴らしい。なんて……なんて可愛い鳴き声なんだ……。全米が……全米が萌え死ぬわ……!」
「違う! 絶望しろと言ったのだ! なぜ全員、スマホで動画を撮り始めている!」
魔王の渾身の威嚇は、最新の4Kカメラを通すことで、世界最高精度の「超高画質癒やし映像」へと変換されてしまった。
4. 勇者の友情出演
撮影が佳境に入った頃、アレク(勇者)とポチ(将軍)が「エキストラ(近所の犬)」として乱入してきた。
『ヴァルザー、聞いたぞ。この映画のクライマックスは、我と貴様の決戦シーンらしいな。……手加減はせんぞ』
「望むところだアレク! 聖剣を失った貴様など、一揉みにして――」
「はい、カット! 犬と猫が鼻をくっつけてる! 超エモーショナル! 友情の奇跡です!」
シャロンの叫びと共に、二匹が睨み合うシーンは「種族を超えた愛と絆」の象徴的なワンカットとして採用された。
『……屈辱だ』
『……ああ、屈辱だな。だが、ギャラのササミは、さくらが管理しているから文句は言えん』
5. 銀幕の果てに
数ヶ月後。
映画『THE MOFU-MOFU』のワールドプレミア。
レッドカーペット(という名のさくらの家の廊下)を歩くクロたちの姿が、世界中に生中継された。
劇場のスクリーンに映し出されたのは、壮大なBGMと共に、ただひたすらに「お腹を見せて転がる黒猫」と「白目を剥いて寝る鼻ペチャ猫」の120分。
エンディングロールが流れる中、全米の観客は涙を流して立ち上がった。
「……Oh, MOFU-MOFU...(なんてモフモフなんだ……)」
興行収入は歴史を塗り替え、クロはついに「世界を征服した(興行的に)」のである。
(……おのれシャロン。我をただのエンターテイナーに仕立て上げるとは。……だが、オスカー像(鰹節製)は美味かった)
魔王の覇道は、今や銀幕の光となって地球全土を照らし続けるのであった。
【次回予告】
「銀幕デビューを果たし、全人類の『推し』となった我ら魔王軍。
だが、そのあまりの可愛(汚染)ぶりは、ついに『天の聖域』をも動かしてしまった!
空から舞い降りたのは、神々しき羽を持つ白きウサギ。
それは天界の監査官にして、魔王の急所――『おへそ』を狙う非情なる刺客であった!
『ヴァルザー。貴方の堕落、天界の名において粛清します』
魔王vs天界、全宇宙を巻き込んだ最終決戦(接待)の幕が上がる!
最後にホットカーペットの上で笑うのは、闇か、光か、それとも――。
第2部 第15話:『天界の視察員、魔王の「おへそ」を狙う!』
お楽しみに!
ふん、最後まで読み進めた貴様を、我が軍の『読者』に任命してやろう。
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それは点数ではない。我が今夜、侍女から「ちゅ〜る」を献上させるための『信仰心』だ!
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決して、おやつが欲しいから媚びているわけではないぞ! クカカカ!




