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『世界征服はちゅ〜るのあとで。〜転生に失敗した魔王(黒猫)はちゅ〜るに屈する〜』  作者: 今日も今日とて黒猫さん


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第2部 第9話:『最凶の追っかけ(受付嬢)、握手会に現る』

1. 闇の握手会

テレビ出演の反響は凄まじかった。

さくらのSNSフォロワーは爆発的に増え、ついにショッピングモールで「クロ様&ベルゼちゃん&リリス様・ふれあいイベント」が開催されることになったのだ。


「ふん、握手会だと? 我に触れるなど、本来であれば万死に値する不敬……。だが、これほどの人類が我が魔力を求めて列をなすとは、支配も最終段階というわけか」


クロは、高級ベロアのクッション(王座)に座り、威厳たっぷりに構えていた。


「父上……。さっきから『可愛い』という名の精神攻撃が止まりません……スピースピー」


隣ではベルゼが、鼻を鳴らしながらファンと握手(肉球タッチ)を繰り返している。

そして特設ステージの中央では、白銀の毛並みを輝かせたリリスが君臨していた。


「……いいこと、下等生物ども。私の体に触れていいのは、指先を清めた者だけよ。あら、そこの女。今の私の角度、最高に美しく撮りなさい。SNSのアイコンにする許可をあげるわ」


女王リリスは、ファンサービスという名の「信者獲得」に余念がなかった。



2. 暗殺者の気配

平和なイベントが続く中、一人の女性が列に並んだ。

眼鏡をかけ、事務的なスーツを着こなしたその女性は、周囲の熱狂的なファンとは明らかに違う「冷徹な視線」を放っていた。


「……っ!? ゼノン、警戒せよ! あの女、ファン心の奥に、研ぎ澄まされた『事務能力』を感じるぞ!」


「ヴァルザー様、リリス様! あの歩法……間違いありません。魔界暗殺ギルドの元受付嬢、シャロンです!」


シャロン。

かつて魔界で暗殺依頼をテキパキと処理し、期限を守らない魔族には死よりも恐ろしい「督促状」を送りつけることで恐れられた女。


そんな「事務の化身」が、なぜここに……?



3. 握手(肉球押し)の儀式

ついにシャロンの番が来た。

彼女は無表情のままリリスの前に立ち、スッと一枚の紙を差し出した。


「お久しぶりです、女王リリス様。本日より、貴女の肖像権を我が社で一括管理させていただくことになりました」


「な……肖像権!? 私の美貌は全宇宙の公共財産よ! どこの誰が決めたの!」


「さくら様です。『リリスちゃんの写真が勝手に使われるのは可哀想だから、プロに任せるね』とのことでした」


リリスが絶句する間に、シャロンはクロの前へとスライドした。


「そしてヴァルザー様。いえ、クロ様。貴方にはこれからのスケジュール管理、および契約書の捺印(肉球押し)をいただきに参りました」


シャロンの手には、びっしりと予定が書き込まれたスケジュール帳があった。


「明日、朝5時から猫砂のCM撮影。10時から雑誌『月刊モフモフ』の取材。13時から……」


「待て! 誰がそんな激務を受けると言った! 我の自由時間はどこだ!」


「『ちゅ〜る一年分』の契約金は、すでにさくら様が受理されました」



4. 逃れられぬ契約

「えっ!? さくら、本当か!」


クロが驚いて見上げると、さくらはホクホク顔で契約書を確認していた。


「クロちゃん、これでもう食べ放題だよ! すごいね!」


「お、おのれ……。さくらの天然さを利用して、我を社畜ならぬ『社猫』にするつもりか!」


逃げ出そうとするクロ。だが、シャロンが冷たく微笑み、一本のレーザーポインターを取り出した。


「……ヴァルザー様、そしてリリス様。動くと、この『赤い点』がどこまでも貴方を追い詰めますよ?」


壁に映し出された、怪しく光る赤い点。

二人の野性が、理性を上回って反応してしまう。


「な……身体が勝手に……! おのれ、暗殺ギルド秘伝の誘導術か……ッ!」


赤い光に翻弄され、抗えぬ本能に従ってステップを踏む二人。

そして、いつの間にか契約書の捺印欄に肉球を「ポン!」と押し込んでしまった。



5. 支配者の陥落

「(……クカカカ……世界を征服するはずが、いつの間にか『分刻みのスケジュール』に支配される側になるとは……)」


結局、イベント終了後。

クロとリリスはシャロンによって過密スケジュールを言い渡され、ぐったりとクッションに沈んだ。


「父上……。人間界の『契約』という魔法、魔界の契約ギアスより重いです……スピースピー」


有名猫としての華やかな生活の裏で。

魔王軍は「マネジメント」という名の新たな強敵に震えるのであった。




【次回予告】

敏腕マネージャーの過密スケジュールから逃亡した我らが辿り着いたのは、緑豊かな「勇者の聖域」であった。

勇者アレクがハッスルするその場所で待ち受けていたのは、殺気よりも恐ろしい「大型犬の親愛ヨダレ」の嵐!?

「待て貴様ら! 距離が近い! 鼻息で我の毛並みが湿るではないか!」

魔王軍、ドッグランの巨大な壁を前に完全沈没。救いの手は、まさかの宿敵の背中にあり!?

次回:『第十話:勇者の聖域ドッグラン、大型犬の群れに包囲さる』

お楽しみに!

ふん、最後まで読み進めた貴様を、我が軍の『読者フォロワー』に任命してやろう。

貴様の端末の下にある【★評価】と【ブックマーク】のボタンを押すが良い。

それは点数ではない。我が今夜、侍女さくらから「ちゅ〜る」を献上させるための『信仰心ポイント』だ!

★を五つ捧げ、我が覇道に貢献せよ。

決して、おやつが欲しいから媚びているわけではないぞ! クカカカ!

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