第2話:『宿敵はゴールデン、野望は校舎の陰に』
第2話スタートです!早速宿敵のあいつが登場します!
1. 魔王、外の世界を知る
「フハハハ! 見よ、この愚かな人間たちが作り上げた檻(網戸)を、我が魔爪が一瞬で切り裂いたぞ!」
実際には、さくらの母が掃除のために少しだけ開けていた隙間に、頭をねじ込んでこじ開けただけである。
クロ様……もとい闇の魔王ヴァルザーは、意気揚々と庭に降り立った。
「まずはこの界隈の地図を脳内に描き、支配の足がかりとするのだ。……ふむ、あの動く色鮮やかな物体は何だ? 我を惑わす魔法具か?」
ひらひらと舞うモンシロチョウに対し、クロの瞳孔が限界まで見開かれる。
「逃がさんぞ、光の精霊め!」
……バシッ、スカッ、ゴロゴロ。
一分後、生垣に突っ込んで全身に枯れ葉をつけた黒猫が、何事もなかったかのように立ち上がった。
「……ふん、ただの偵察だ。深追いはせぬ」
2. 宿命の再会(犬の姿)
近所の公園まで辿り着いたクロは、そこで「異常なまでの正義感」を放つオーラを察知した。
この、胸がムカムカするような清々しさ。
数千年前、自分を封印したあの男の気配だ。
「……アレクサンダーか!?」
クロが振り返ると、そこには一頭のゴールデンレトリバーがいた。
その犬もまた、クロを見た瞬間に足を止め、驚愕に目を見開いた。
『ヴァ、ヴァルザーか!? 貴様、なぜそのような、つつけば転がりそうな毛玉になっているのだ!』
念話(のつもりで発せられたワンワンという吠え声)が響く。
クロは毛を逆立て、背中を丸めて威嚇した。
「黙れ! 貴様こそ、その間の抜けた垂れ耳と、無駄に長い尻尾はどうした! 勇者の威厳はどこへ捨ててきた!」
『これは……転生の副作用だ! 私は今、アレクという名でこの地の民を警護(散歩)しているのだ!』
「ふん、飼い主に紐をつけられているのが警護か? 笑わせるな。今ここで、数千年の決着をつけてやろう!」
黒猫と大型犬。一触即発の空気が流れる。
クロが鋭い爪を立て、アレクが低く唸り声を上げたその時――。
「あら〜、アレクちゃん! 猫ちゃんと遊びたいの? 仲良しねぇ」
アレクの飼い主が、ほっこりした笑顔でアレクの頭を撫でた。
すると、あろうことか伝説の勇者は。
「へらぁっ」と口を開けて、嬉しそうに尻尾をブンブンと振り始めたのである。
(……こいつ、完全に屈服していやがる……!)
クロはあまりの情けなさに、戦う気力すら失った。
3. 学舎への潜入
「あのような腑抜けた勇者は放っておけ。我が進む覇道に、もはや敵などおらぬ」
クロは次に、さくらが通う高校へと向かった。
開け放たれた窓から、校舎内へ滑り込む。
「ここが次世代の戦士たちが集う練兵場か……。どれ、さくらの様子でも見てやるか」
数学の授業中。居眠りをこきかけていたさくらの机の上に、黒い影が飛び乗った。
「さくらよ、我を称えよ。そして、ちゅ〜るを献上……」
「えっ、クロちゃん!? なんでここに!?」
さくらの叫び声に、教室内が騒然となる。
「うわっ、黒猫! 可愛い!」
「こっちおいでー!」
次々と差し出される生徒たちの手。
クロは「貴様ら、気安く触るな!」と叫ぶが、女子生徒たちの「肉球ぷにぷに攻撃」の前に、あえなく骨抜きにされた。
「……っ、この……! 集団による精神攻撃か……! 抗えん……ッ!」
4. 勇者の末路、魔王の悦び
結局、さくらに捕獲されたクロは、放課後まで図書室の段ボールで謹慎を命じられた。
帰宅路、さくらのバッグの中から外を覗くと、ちょうど散歩帰りのアレクが見えた。
アレクは自宅の玄関前で、飼い主に「お座り!」と言われ、ビシッと背筋を伸ばして座っていた。
「待てよ〜、よし、お利口さん!」
ご褒美のクッキーを貰い、アレクは「ワフッ!(感謝します!)」と尻尾を振っている。
(……救いようのない奴め)
クロは鼻で笑った。
帰宅後、さくらは「もう、学校に来ちゃダメだよ? でも、寂しかったのかな。はい、これあげる」と、少しお高い「削りたてのかつお節」を皿に盛った。
「フン。我は勇者とは違う。これはあくまで、さくらが我が軍門に降ったことによる、貢ぎ物なのだ」
そう自分に言い聞かせながら、クロは「ゴロゴロ」と最大音量で喉を鳴らし、かつお節を夢中で貪るのだった。
【次回予告】
我が覇道は、デジタルからも侵攻を開始する。
「えすえぬえす」という魔術を使い、全人類を我の虜にしてやろうではないか。
だが、調子に乗った我の前に、未知の巨大単眼ゴーレム(TVカメラ)が現れ……!?
次回:『深淵の眼光(※ただしカメラ目線)』
お楽しみに!
ふん、最後まで読み進めた貴様を、我が軍の『読者』に任命してやろう。
貴様の端末の下にある【★評価】と【ブックマーク】のボタンを押すが良い。
それは点数ではない。我が今夜、侍女から「ちゅ〜る」を献上させるための『信仰心』だ!
★を五つ捧げ、我が覇道に貢献せよ。
決して、おやつが欲しいから媚びているわけではないぞ! クカカカ!




