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第七章:格好悪い救出劇

 トゥルーは上機嫌であった。悪人は退治でき、この騒動に関与している疑いは晴れ、自分の力量を評価してくれ、あまつさえ礼金まで頂けた。万々歳である。ただ、この騒動には100%関与しているので、多少の罪悪感を感じていた。


 トゥルーは普段あまりとらない遅めのランチとお茶を、おいしいと評判の店カレットで頂くことにして繁華街を歩いていた。派手な宝飾品から若者向けの雑貨、流行りの飲食店が集まっている通りで、トゥルーが王都にいた時も場違いな感じがしてあまり近寄らなかった場所だ。


「あれ?ナオさ……」


 今まで横にいて嬉しそうにきょろきょろしていたナオが見当たらない。後ろを見ると人ごみの中、数人の男たちに囲まれる形で路地の方に連れ込まれていた。


「えっ?なんで?」


 トゥルーは困惑していた。それも当然で、ナオにとってこんな輩は一瞬で黄泉の国でも次元の狭間にでも放り込めるから、力ずくで連れ込まれる理由などない。なのに、なぜ抵抗もせず?――その違和感が胸をざわつかせた。


 しかし、そんなことを考える暇もなくナオの姿が路地の方に消える。トゥルーが慌てて追いかけるが、路地に近づくにつれ通行人が邪魔をしてくる。焦っているせいか、通行人全員が男たちの味方のように見えた。ようやく路地に入ったときにはナオの姿はどこにもなかった。


「一体なんなんだ?どこ行ったんだ!」


 トゥルーは路地を走り回るが、ナオの姿はどこにもなく、足が止まる。その時、トゥルーは男に腕を掴まれた。


「ちょっと来てもらおうか」


 腕を掴んだガラの悪い男はそう言うと、乱暴にトゥルーを引っ張り近くの倉庫に連れてきた。そこは大きな倉庫だが路地側の裏口なのであまり綺麗ではない。そこの荷物の搬入口にも見えない薄暗い扉を男が開けると、トゥルーに倉庫の脇の階段を下りるように指示してくる。


「ナオはこの奥にいるんだな?何が目的だ?」


「いいから入んな!」


 後ろから男がトゥルーを乱暴に押し出す。よろけるように階段を下った先は、薄暗くだだっ広い部屋だった。部屋の端々には荷物が乱雑に置かれており、そこからガラの悪い男が十人ほどゆっくりとこちらに向かってくる。

 目を凝らしてよく見ると、部屋の一番奥に椅子に縛られたナオがいた。


「ナオさん、無事……ですよね」


「もちろん、この通り。お茶も飲めない感じですけど」


 トゥルーは安心して目を閉じた。たかが人間にナオが傷付けられるわけはないと分かってはいたが、見た目はか弱い女性なので心配であった。


「白の塔の魔術師さんよ、他人のシノギを邪魔しちゃいけないって、あんたの神様に教わんなかったか?」


「とりあえず今回は、あんたのあり金とこの女で許してやるから、早々に街を出るんだな」


「金はどうでもいいが、ナオは帰してくれないのか?」


「初めはそのつもりだったんだがな。こいつを見て気が変わった。えらい美人じゃねぇか。オヤジにはもったいねぇよ」


「それは困る。親戚から預かった大事な娘さんなんだ」


「知らねぇなぁ。怪我したくなけりゃあ、さっさと金を置いて出ていくんだな」


 男たちがトゥルーの周りを囲み、そのまま抑え込もうとした時、トゥルーは反射的に呪文を唱えようとした。


「おっと、ここでは呪文は使えないよ。そのくらいの準備はさせてもらってる」


 ナオのそばにいた、この場のボスらしき男が鼻を鳴らしながらトゥルーに言い放つ。

 その声を聴いたトゥルーは、周りの男たちを躱しながらボスの視線の先を見た。そこには装飾の入った台座の上に虹色に光る石があった。


(封魔の結界?結界石か、なんでそんな物が?ならば)


「魔法砲(マジック・キャノン!)」


 トゥルーの差し出した左腕が輝き、眩しい青白き光が渦を巻きながら結界石の方に放たれた。マジック・アローの上位に位置し、完全装備の騎士を馬ごと吹っ飛ばせる呪文だ。通常部屋の中で使用する呪文ではない。

 目標となった封魔の結界石は範囲内の魔法を使用不能にする。もちろん一般に出回る物ではない。しかし万能ではなく、一定レベル以上の強力な魔法は打ち消せない。また、結界石自身は普通の石同様、衝撃には弱い。

 眩い光が渦を巻きながら結界石に直撃し、爆音とともに石は粉々に砕け散った。衝撃波が部屋を揺らし、台座も壁も、まるで積み木細工のように崩れ落ちた。それと同時にトゥルーはナオのもとへ駆け寄った。


 トゥルーの周りを囲んでいた男たちは、そのあまりの破壊力に全身が固まり、まったく動けずにいた。そんな中、ボスだけは我を取り戻し、腰に付けたナイフを取り出した。


「この野郎!」


 ボスが振りかざしたナイフがナオの顔に当たりそうになり、トゥルーはそれを素手で止めた。


「ぐっ、痛ってぇ!」


 もちろんトゥルーは防御呪文をかけている。ナイフごときで傷つくわけはない。


「そ、そのナイフは?」


「ふっ、分かるか?それだけ信頼されているという……」


「催眠雲召喚(スリープ・クラウド!)」


 トゥルーは相手が何か言い終わる前に呪文を唱えた。トゥルーの掌辺りから何かが光り、灰色の霧が辺りを包む。その霧に触れた男たちの瞳から光が消えていった。男たちの体は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。ちょっと卑怯な感じはするが、戦闘中に自慢話をする方が悪い。トゥルーは念のため辺りを見回した後、ナオの縄をほどく。


「ナオさん、なんでこんなことを?」


「何事も経験が大事かと。それより私をかばってくれたのですね」


(反射的にナオをかばってしまったが、よく考えたら人間にナオが傷付けられるはずもない。俺、何やってんだよ。こんな怪我までして……)


 トゥルーは自分の行動を省みてちょっと落ち込んでいたが、ナオは何だか嬉しそうに見えた。いや、確かに微笑んでいた。


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