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第三十五章:問題は解決した

 皇帝アマドは考えに考え、回答期限ぎりぎりにヴィーゼ王国へ書簡を返送した。

 

 曰く、今回の不幸な出来事は、すべてキュベレー教の教皇ドゥルガーの独断専行であり、キュベレー教の責任者は全員身柄をヴィーゼ王国に引き渡す。

 曰く、キュベレー教は国を危険にさらす邪教として、ガルーダ帝国内ではすべて非合法とする。

 曰く、ただガルーダ帝国としての責任はあるので、ヴィーゼ王国の査察などにはすべて協力すると同時に、国家予算に匹敵するような巨額の賠償金も支払う。


 という形での手打ちを考え、ヴィーゼ王国への回答としていた。同時に大魔道を抱き込むための使者をヴィーゼ王国に送り込んだ。




 トゥルーは山里に戻っていた。元々堅苦しい宮廷が好きではないうえ、ガルーダ帝国をどう扱うかで宮廷内が騒がしすぎるのだ。特に最近は国王ルートヴィヒへの口添えを頼んでくる輩まで現れ、うっとうしいことこの上なしである。


 山里ではトゥルーのおじちゃんが戻ってきてくれたと子供たちも喜んでくれ、しばらくは平穏な生活を満喫していたが、ある時トゥルーの玄関に場違いな格好をした一団が現れた。


 金や紫を基調とした派手な衣装をまとった若い美女が一人。それよりは少し落ち着いた侍女のような女性が一人。後は護衛兼荷物持ちのような男たちが三人。その身なりや雰囲気からして、おそらく全員ガルーダ人。その一団は里の者にトゥルーの居場所を聞くと、好奇の目をものともせずにトゥルーの家に向かった。そして玄関の扉を叩く。


 部屋に入ってきた一団は、扉の前でトゥルーに対しガルーダ式の最敬礼をしてきた。


(あっ、これ絶対面倒くさいやつだ)


 そう思った瞬間、一団の姿が消えた。空気が冷えたかのような静寂がおとずれた。


 美女が立っていた場所には、金や紫色で派手な服が無造作に落ちていた。ピクピクと動く肉片は……ない。一瞬まさかと思ったが、今回は違うようだ。


 ナオに視線を向けると、なぜこっち見てるんだろうといった表情で、


「帰っていただきましたよ、マイ・ダーリン」


 前回とは違い、ナオはトゥルーが嫌だと思う相手を殺さなかった。一団が消えた瞬間は心臓が止まる思いをしたが、これはナオが人として成長したんだとトゥルーは思った。なので、どこに帰って頂いたかは聞かないことにする。




 皇帝アマドからの書簡を受け、ヴィーゼ王国内ではガルーダ帝国が間接的とはいえ責任を認め、キュベレー教指導者たちの身柄の引渡しや帝国内の査察。さらには巨額の賠償金にも応じるとのことで、それまで優勢であったあくまで戦うべきという王国内の主戦派は姿を消した。


 国境に集結しつつあったヴィーゼ王国の軍は、即応体制を維持しつつも一部は元の配属地に戻っていった。


 ただ、ガルーダ帝国は王国の属国や保護国にすべき。皇帝は死罪もしくは退位してもらうべき。といった主張があり、会議はなかなかまとまらなかった。

 特に今回被害にあった地方の貴族や過去に因縁のある者たちは、皇帝とその一族の根絶を強硬に主張しており、穏健派との対立は激しくなっていった。


「貴公らは、あのたぬきを信じるとでも言うのか!」


「誰がそんなことを言ってる!貴公は仇討ちしたいだけであろう!」


「戦いが怖いならそう言えばいい。俺は戦うぞ!」


「貴公は領主の責任というのを考えた方が良いな!」


「我が家系を侮辱する気か!」


 一向に話はまとまらず、ただただ時間だけが過ぎていくなか、このままではらちが明かないので、最終的に国王ルートヴィヒに一任する。ということになった。




「はぁ……トゥルー、どうするよ」


「私、こういうことはちょっと……」


「あいつらのことは気にせんで良い。お主のことは表には出さんから、自由に話せ」


(いや、絶対表に出すでしょう。俺はいいけど、大魔道はこう言ってたぞって)


「貴族社会や政には疎いので、そういうことに明るい方にお聞きになられた方が……」


「余はお主の意見が聞きたいのだ。いいから話せ」


「分かりました。では」


 トゥルーは渋々話し出した。その後、諸侯を含めた大会議で王からの決定事項として話された内容が、その時トゥルーが話した内容とほとんど同じだったので、後々責任を取らされるんじゃないかと頭が痛かった。


 まず、ヴィーゼ王国民とガルーダ帝国民とでは民族性が違いすぎる。との判断から、併合や保護国といった案は却下され、同じ理由で属国という案も却下された。なるべく関わらないようにしようということだ。


 同時にガルーダ人は強制帰国を基本とし、本人の強い希望がある場合は素行が善良でヴィーゼ王国への貢献が高いと認められた場合のみ、制限付きで国内居住が認められた。


 皇帝に関しては、禍根を残したくないのは山々だが、キュベレー教根絶との両面対応は難しく、対応策が色々と検討された結果、皇帝の制度自体は維持する。ただし、立法などの権限は現在の議会へ移譲。治安維持や裁判は新設の司法省に移譲された。権限を分散して互いに牽制してもらう形だ。


 また最低限の交流と情報収集を行うための交流協会をお互いの国に設置し、ガルーダ帝国内で不穏な動きがないか、監視だけは行って、反ヴィーゼ王国の動きに関してだけは外交問題として厳しく対処することとなった。


 対外的な案件として、悪意ある情報操作が行えないよう、国内外にガルーダ帝国の今回の所業をヴィーゼ王国とガルーダ帝国の共同で発表すると同時に、その所業はキュベレー教が主体となって行っていたこと。そのため、両国においてはキュベレー教を禁教とすると同時に、ヴィーゼ王国の温情のもと、ガルーダ帝国の国体は維持されることが発表された。


 これでヴィーゼ王国にとって長年悩まされてきた、ガルーダ人およびキュベレー教による数々の国益の毀損問題が解決することとなった。


 しかし、皇帝アマドやキュベレー教の野望は潰えたわけではなかった。


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