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第二十四章:敵地、白の塔

 トゥルーとヨーゼフは危機管理局の中央センターに跳んだ。反乱軍のど真ん中である。瞬間移動阻害の永久結界が張られているこの場所に跳んできたのは、おそらくトゥルーたちが最初だろう。周囲にいたの魔術師たちは、そのあり得ない光景に動きを止める。トゥルーはこの結界の保守の際、結界石に詳しい者がいないとのことで、危機管理局に手伝いに行ったことがあり、その時に瞬間移動が阻害できない周波数があることを知っていたのだ。もっとも分かったところで、ただでさえ複雑な術式を改変できる魔術師などそうそういないのだが。


 中央センターは先ほどまで戦闘があったことをうかがわせる痕跡が残っていた。大きな観測機器が岩がぶつかったように圧壊しており、あちこちに不自然な水たまりがある。さらに血痕も飛び散っており、部屋の隅に負傷者も垣間見えた。

 ただ、そこにアデリナたちはおらず、情報通りなら局長室に連れていかれたようだ。


 周りの魔術師は茫然としていた。ここ中央センターは白の塔の要衝であり、白の塔の目であり耳である。ここには瞬間移動阻害の永久結界が張られているので、どんな高位の魔術師であっても直接ここに移動することはできない。皆そう信じていたから冷静に動けなくて当然である。


 そんな魔術師たちを尻目にトゥルーたちは悠然と扉に向かう。しかし魔術師たちはトゥルーが扉から出る前に我に返った。


「待て!」、「何者だ!」、「どこから来た!」


 魔術師たちはそう言いながらトゥルーたちを追いかける。それに気づいたトゥルーは急いで扉を出ると呪文を唱えた。


「石壁生成(ストーン・ウォール!)」


 下に向けた手のひらから黒っぽい魔力が地面に流れ、それに呼応するように石の壁が地面から生え、それが扉に被せるような形で天井まで伸びていった。

 白の塔の高位魔術師なら石壁程度は容易に壊せる。しかしここは中央センター。ただでさえ先ほどの戦闘で甚大な被害を被っているのに、巨大な石壁を破壊するような呪文を唱えたら、中央センターに回復不能なダメージを与えてしまう。かといって、瞬間移動で跳ぼうにも永久結界が張られているので跳ぶことはできない。

 これでしばらくは中央センターからの出入りはできないだろう。


 トゥルーたちは突き当りの局長室に急ぐ。ヨーゼフが扉を開けようと近づいたところでトゥルーが止める。


「待て!何があるか分からん」


「でも……」


 ヨーゼフは焦ったような声を出すが、トゥルーはその声を聞き流し、扉にどういった仕掛けが施されているかを考えた。


(いくら非常時とはいえ毒物や爆発するようなものは考えづらい。通常時に危険すぎるから。そうではなく侵入者を無力化できる仕掛け……常に魔力を必要とするような手入れが必要なものは仕掛けないだろう。となると、物理的に動きを封じるもの……壁……何もない。床……カーペットが不自然だな。落とし穴か)


 トゥルーはカーペットを思い切り引っ張った。H型に床の切れ目が見える。落とし穴だ。中から操作できるのだろう。床板の切れ目が部屋の中に続いている。


「石壁生成(ストーン・ウォール!)」


 石の壁が現れる。今回は縦でなく横に。落とし穴は石壁に隠れて役立たずとなった。


「ヨーゼフくん。あの扉を壊してくれ。部屋の中に被害が及ばないように威力は調整してな。私が中に飛び込んで人影を確認しだい閃光の呪文を使うから、目は閉じておいてくれ。あとは各個撃破で」


「まかせてください!」


 ヨーゼフは得意な呪文を使えるのでちょっと嬉しそうだった。


「火球(ファイア・ボール!)」


 ヨーゼフの手のひらから打ち出された火の球が扉にぶつかり、扉を吹っ飛ばした。破片となった扉が部屋の中で燃えている。

 部屋に飛び込んだトゥルーとヨーゼフの目に、ぐったりと横になっているアデリナたちと、その周りでこっちを見ているコンラートたちがいた。


「閃光(フラッシュ!)」


 強烈な光が辺りを白に塗りつぶし、何も見えなくなった。最初にヨーゼフが動く。


「催眠雲召喚(スリープ・クラウド!)」


 灰色の霧が辺りを包む。その霧に触れた魔術師たちの瞳から光が消えていく。しかし倒れたのは数人。さすがに白の塔の魔術師。そう簡単には寝てはくれない。


 次にトゥルーが呪文を唱える前に、閃光にも催眠にも抵抗した魔術師たちから反撃の呪文が放たれた。


 魔法の矢が三本。トゥルーに一本、ヨーゼフに二本。しかし、トゥルーにはかすりもせず、ヨーゼフの足に一本当たっただけであった。術者が対象を認識している限り必ず当たる魔法の矢が当たらないということは、まだ目が見えておらずデタラメに撃っているのだろう。ただ、目はすぐに回復してしまう。


「沈黙(サイレンス!)」


 トゥルーは魔術師たちの呪文を封じようと沈黙の呪文を唱える。トゥルーの魔力を考えた場合、いくら白の塔の魔術師とはいえ、抵抗するのは難しい。

 多少人数が多かろうと、寝ている魔術師や呪文の使えない魔術師は役に立たない。ほどなくして局長室はトゥルーたちに制圧された。


「ヨーゼフくん、怪我は?」


「大丈夫です。これくらい自分で治せます。それよりアデリナさんたちを」


「分かった」


 トゥルーはアデリナたちの元に駆け寄る。アデリナたちは皆重傷だが生きていた。回復の呪文を唱え、話せるのを待つ。


「トゥルーさん、面目ない」


「遅くなってすまない。生きていてくれてよかった」


「トゥルーさんがここに来られたということは、反乱阻止に成功されたんですね」


「あぁ、ほぼほぼな。それも君たちのお陰だよ」


 縛られている局長コンラートたちとアデリナたちを中央に集め、ロンベルク伯爵の屋敷の大広間に跳ぼうとした時、扉の方から大勢の足音が聞こえた。援軍にしては早すぎる。中央センターの石壁が破壊されたような音はしていない。さらなる敵を予想したトゥルーたちは動きを止め、臨戦態勢で扉の方を凝視していた。


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