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第二十二章:敵地からの逃走

 トゥルーたちが跳んだ所。そこは見知った場所、ロンベルク伯爵の屋敷の大広間だった。

 数人しか残っていない警備兵が驚き、他の警備兵を呼ぼうと大声を上げようとしたところで、トゥルーの存在に気付き、慌てて動きを止める。


「白の塔の……?」


「トゥルーです。先ほどのロンベルク伯との会議の時におられましたか?」


「はい。主ですが反乱軍の制圧に出かけておりまして、まだ帰ってはおられません。それよりこの方々は?」


「王都の反乱軍です。まだ後二か所残っています。我々はまたここを出ますので、こいつらお願いします。しばらくはこの状態かと思いますが、念のため手足だけでなく口の方も縛っておいてください」


 トゥルーは二十人ほどの動けない男たちをロンベルク伯の警備兵に押し付け、休む間もなく次の拠点に行く。警備兵も何となく察してくれているようで、細かくは聞いてこないのがありがたい。


「分かりました。主に伝えることはありますか?」


「参事会は制圧しました。これから騎士修道会の方に向かいます。王都の三か所が制圧できたら戻ってきますので、吉報をお待ちください。と」


 トゥルーはそう返事をしたが、実は先ほどからアデリナとボンデロに念話を飛ばしているが返事がない。念話が封魔の結界に阻害されているのか、もしそうであれば危機的ともいえる。最悪、アデリナもボンデロも既に意識不明あるいは殺害されている可能性すらある。しかし、そんなことはおくびにも出さずトゥルーたちは敵地である騎士修道会に跳んだ。




 トゥルーたちが跳んだ場所。そこは王宮に隣接する教会で、白の塔にも近い。大きいが質素なデザインの建物。塀が高くて中はよく見えない。もしボンデロが制圧に成功していれば念話が通じるはずだが、それが通じないということは、失敗している可能性が高い。しかしこのままここで立ち止まっているわけにもいかない。

 

 その建物の門には金属鎧を着て槍斧を構えた屈強な門番が二人。身じろぎもせずに正面を見ている。門の中にも武装した兵が見え隠れしており、簡単には通れそうにない。姿を消したり空を飛んで侵入する方法を考えていた時、七、八人の魔術師が門の方に小走りで近づいてきた。白の塔の魔術師だ。顔を見られないように後ろを向き、魔術師が通り過ぎた瞬間に魔術師たちの後ろについて走る。

 そのまま騎士修道会の門をくぐる。話は通っているようで、門番は道を開けるように動いた。そのまま建物の中に入り、奥の広い階段を駆け上がる。

 こういう急いでいる集団では、後ろの人間を気にする余裕はない。また外から見たら同じ格好で走っている一団の中に部外者が混じっているとは思わない。結果、何の工夫もせずに騎士修道会の中に入りこめた。


 そこには部屋の中央で白いローブを赤く染め、床に倒れ込んでいるボンデロがいた。床にはおびただしい量の血が溜まっており、ボンデロは身じろぎひとつしない。近くに立っていた騎士の剣先から血が垂れていた。あとの二人も同じくローブを赤く染め縄で縛られていた。こちらは微かに胸が動いており瀕死ではあるが生きているようだ。

 奥のテーブルは一部壊れており、近くに虹色の小石が散らばっていた。おそらくボンデロたちに破壊された結界石だろう。

 その近くに数人の騎士に守られる形で立っている騎士がいた。トゥルーはその顔に見覚えがある。管区長のバルドゥル。今回の反乱の首謀者のひとりだ。

 トゥルーはヨーゼフに目配せし、小声で作戦を伝える。


「結界石は壊れている。まず俺がダークを使う。暗くなったらボンデロたちの近くに走ってくれ。そしたら全員をテレポートで逃がす。魔方陣が展開されたら、得意の呪文をバルドゥルに向けて撃ってくれ。おそらくこっちに被害が出る前に跳べるはずだ。タイミングを外すなよ!」


 ヨーゼフは軽く頷くと、頭の中で自分のやることをイメージしていた。


 その時、騎士たちの後ろに隠れていたバルドゥルが前に進み出て、半分震えたような声でこちらに悪態をつく。


「おぅお前たち、遅いぞ!何だこいつらは。死ぬところだったんだぞ!」


 その情けない態度に半分呆れながら、白の塔の魔術師。おそらくは反乱軍の手のものと思われる上位の魔術師が応える。


「それは申し訳ない。ですが、こちらからの連絡は間に合ったでしょう。それに……結界石も役に立ったようですね」


「それはそうだが……」


「大事の前ですから。身柄は預かっていきますよ。大事な仲間ですからね」


 その上位の魔術師は悪魔のような笑顔を見せ、腕を上げると手のひらを前に振った。その合図に配下の魔術師たちが前に進もうとした瞬間、


「暗闇(ダーク!)」


 トゥルーが腕を前に突き出し、何かを掴むように手のひらを握る。辺りの光がその手のひらの中に吸い込まれ、辺りが真っ暗になる。


「何だ?」、「敵か?」、「早く灯りを!」


 真昼間なのに真っ暗で何も見えなくなったので、敵はかなり慌てているようだ。その隙にトゥルーとヨーゼフはボンデロの元に走り込み、トゥルーが呪文を唱えた。


「集団瞬間移動(マス・テレポーテーション!)」


 暗闇の中、床に光輝く神秘的な文字が現れ、それらが幾重もの円を描き、大きな魔方陣を形作った。その時、


「紅焔爆裂(プロミネンス・エクスプロージョン!)」


 ヨーゼフの突き出した両手に火炎がまとい、それが手先に集まったかと思うとバルドゥルに向かって飛んでいく。


 その魔法の火炎がバルドゥルに当たる前にトゥルーたちの姿が消えた。その後には火炎渦巻く爆裂呪文で吹っ飛んでいく騎士と魔術師。片や鎧に守られた騎士。片や防御呪文に守られた魔術師。直撃したバルドゥル以外は死んではいないはずだ。そのことはトゥルーたちを安堵させた。


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