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女勇者は普通に生きたい  作者: 脇汗ルージュ
3/14

間違って召喚された女の子?

朝。城の客室に、やわらかな陽光が差し込む。


「……ふわぁ……」


アリシアは窓辺で紅茶を啜っていた。

異世界に来て3日。人目を避け、目立たないように暮らしている。


(このまま、何事もなければ……)


と、そのとき――


ドンッ!!!


勢いよく扉が開いた!


「ようっ!ここが“間違って召喚された女の子”の部屋かー?」


「ちょ、お前、いきなり入りすぎ……!」


「ねぇ、本当にただの子なの? 勇者じゃなくて?」


「てか、部屋かわいすぎじゃない? なんかイメージと違うー!」


突然、見知らぬ4人が部屋になだれ込んできた。


金髪の双剣使い。

氷を纏ったクールな魔法使い。

でっかい盾を背負った筋肉系戦士。

元気いっぱいな僧侶の女の子?。


「え……あの、あなたたち……?」


アリシアは紅茶を持ったまま、呆然。


「おっと、自己紹介な! 俺たち、“勇者と一緒に魔王討伐するはずだったパーティーメンバー”!」


「でも、なんか召喚されたのが“女の子”って聞いてさー! え?ミスじゃね?ってなってテンション下がってたんだけど、一応勇者のパーティーメンバーだし」


「気になってさ、どんな子だったのか見に来たの! いや~マジで来てよかったわ、めっちゃかわいいし!」


「……けどさ、ほんとに君が“勇者”なの? 魔力も戦闘気配も全然ないけど……?」


アリシアは笑顔を崩さず、紅茶を置いた。


「えぇ、私はただの女の子です。たぶん……召喚ミス、ですよ」


4人は顔を見合わせ、ふーん?という反応。


「まぁでも、なんか放っとけない感じだし、仲間だしよ!これからも顔出すわ!」


「てか、仲間の前に普通に友達になろーぜ!召喚ミスでも!可愛いし!」


アリシアは困ったように微笑んだ。


(やっぱり、“普通の女の子”でいられる……今は、それでいい)


だが彼女は知らない。

このメンバーが、やがて世界の命運に関わるほどの絆を結ぶことになるとは――まだ、誰も。



ーーーーーー


金髪の青年が腕を組んで、にやっと笑った。


「じゃ、俺たちのことも紹介しとくか!」


彼が一歩前に出る。


「俺の名前はレイヴン!双剣使いでパーティーのエース!ま、見ての通りカッコいいし、強いし、モテるし?」


「うるさいわね、あんたのどこがエースよ」


横からぴしゃりと声が飛んだ。


氷色の髪を揺らした少年が、冷たい目でレイヴンを見やる。


「シリル。魔法担当。君が“勇者”じゃないってのは、見た瞬間にわかった。魔力、ほとんど感じないから」


「え、えっと……そうですよね……」


アリシアはぎこちなく笑う。

“感じない”のではない。彼女が完全に魔力を隠しているだけだ。


「次、俺だな!」


ごつい体格の男が、グッと拳を突き出した。


「ガルドだ!盾役だ!敵が来たら俺が受け止めてやるから、安心してくれ!」


「……なんか、強そうですね」


「おっ、そうか? じゃあ今日からお前の盾だな!」


「……ふぅん。ならアンタたち三人で勝手に盾になってなさいな」


ふわりと香る花のような匂い。

しゃなりと腰に手を当て、女装気味の僧侶がウインクした。


「ミナって言うのよ、よろしくねアリちゃん!あらあら、こんなむさくるしい男ばっかりのとこに来て、よくぞ耐えたわねえ? むさいわねー、ほんっと!」


「え、えっと……ミナさん……?」


「おーっほっほっ!ミナ“ちゃん”よ!わかった?ミ・ナ・ちゃん!」


ぎゅっと抱きつかれ、アリシアはタジタジになった。


「――ふぅ。なんていうか、みんな……元気ですね」


「ま、アレよね。こうやって見ると、ただの召喚ミスの子って感じでもないけど……」


「けど、何か変な空気はあるよな。お前、ほんとに“何もできない子”なのか?」


アリシアは笑った。


「えぇ。私はただの、普通の女の子ですよ?」


その笑顔の裏に、誰も気づかない――

すべてを救った、最強の女勇者の影など。


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