物件探し
「こちらはワンルーム、一階には人気のパン屋さんが入っていること。軒先が広いので安心感、防犯面は優れています。最寄駅まで三分というのもオススメポイントですね。ワンルームなので二人でお住まいになるには少々狭いですが、敷金、礼金、家賃、管理費、共益費は無料です」
「駅近と安心感は捨てがたいなぁ。何しろ子どもも生まれるしね」
そう言う夫に対して妻が口を開く。
「ワンルームはちょっと狭くない? 子どもにはのびのび育ってほしいし」
∧( 'Θ' )∧
「では、こちらはいかがでしょう? ワンルームでも少し広め。鉄壁のガラス対策。wi-fi完備。駅近。一階に大手コンビニ。去年入られていたお客様からも『子育て環境抜群!』と評価を得ています。もちろんこちらも敷金、礼金、家賃、管理費、共益費はかかりません」
「あ、こっちの方が確かに広いね」
と妻。
「うん。うん。さっきの物件は新築っぽかったけど、去年入居者がいるっていう実績もいいね」
と夫。
わいわいと盛り上がる夫婦に不動産屋が押しの一言をかける。
「こちら毎年人気でして、この時期、早い者勝ちなんですよ〜」
夫婦はぴぃぴぃ話し合うのをやめ、顔を見合わせた。しばらくして揃って頷く。夫が口を開いた。
「わかりました! それじゃあここに決めます!」
「ありがとうございます! それでは契約手続きに移らせていただきます」
そう言って不動産屋はカタカタと小さなパソコンを操作する。
「無事、巣が決まってよかったね」
「うん。いいところが見つかった」
「頑張って餌運ばないとね」
そう、ここは〝ツバメ〟専門の不動産屋だ。今年も多くのツバメカップルがここを訪れている。
近所のコンビニの入り口にこんな張り紙がありました。
「入居者募集! 鉄壁のガラス対策。wi-fi完備。駅近。一階に大手コンビニ。子育て環境抜群! 敷金、礼金、家賃、管理費、共益費なし ツバメ専用物件」
防犯カメラの上にツバメの巣がありました。ユーモアのある店員さんがいるんだな、と心がほっこりしました。
後日、こんな張り紙が。
「七月七日。無事巣立ちました」
七夕に巣立ったツバメ達、なんだかロマンチックです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




