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魔法使い、猫くん  作者: なぎさん
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第42話 「猫ドライブ」

ローファンタジーです。


久々更新、短めです。


猫くん一家 VS 都市伝説

 晴れた!予定通りじゃん!


わたしは、猫くんの腕を掴んで飛び跳ね、その後、いそいそと、イリーゼお出かけセットを準備する。


赤ちゃん連れのドライブは、通称、民族大移動。ミルクにお湯に毛布に、オムツにそれから…あーもう。いろいろだっての。



 <イリーゼちゃんセットは、こちら。パミルより>


キッチンに、パミルの置手紙。さっすが亀!(よくわかんない)


猫くんは、ふーっとため息一つ。



 猫くんの真ん前に立つ。両手を首に回す。


「この、超絶美人妻がドライブを楽しみにしているのに、何だねその浮かない顔は?ん?」


ちゅーっ、っと。これでイチコロ。のはず。


「この私が運転とは…車をゴーレムにしてしまえば自動運転じゃないか…?」


「ゴーレムが交通法規知ってるとは思えません!てか、運転してる猫くんが見たい!」


ダメ押しに、抱き付いちゃえ。オラ。


「仕方ない…あまり遠出はナシだぞ…:」


こうして、わたしの愛はドライブを勝ち取った。



 猫くんの買った車は、イタリア製のオープンカー。猫くん、映画見て気に入ったらしい。


カッコいいので、即決。支払いも、即決。



 最大の問題は、猫くんが免許取りたてであること。


ゆっくりなら大丈夫でしょ?



 隣の隣の隣の隣の隣の町あたりの、湖までGO!


この美人妻、芽唯流サマと、可愛い赤ちゃん、イリーゼを連れて、GO!



 ぶーーーーーーん。おお!この瞬間を待っていた!


ナナメ後ろから見る、猫くん横顔に余裕はない。いやいや、こんな真剣な顔はいつ以来かね?プロポーズ?


揶揄いたくなる。ベイビーシートにイリーゼはしっかり押さえて、横にわたし。猫くんの真後ろがイリーゼね。


とは言え、ウチの防御力は完璧なので。何と言っても、バリヤー張ってるんで。事故など無いのだ。いや、ぶつかっても、ウチの車がへこむことは無いし、誰一人ケガしないのだ。



 他愛無いお話しながら。景色を見ながら、都市部を抜けて、猫くん号は高速へ。


高速に入ったら。猫くんは少し余裕が出て来たみたい。基本、車だけだもんね、居るの。信号少ないし。



 ドライブインに寄った。高速沿いの道の駅。


道の駅には、食べもん的誘惑がいっぱい。勿論、その誘惑には勝てない。


「ほう…地物フランクに特製ぶたまん…買って行こう、芽唯流?」


こういう時の猫くんは素直でカワイイ。ぷぷ。



 再び、モグモグしながら出発!


オープンカーモグモグは対向車の視線が気になる…けど、まあ、いいや。



 さて、もうすぐ湖。


峠の道はガラガラで、すれ違う車も少なくなってきた。


てか、全然すれ違わなくなってきた。



 まさか…。


「猫くん、迷った?」


「ギク。」


「ギクじゃねえ。」


「仕方ない、お前がそう言うならカーナビを起動しよう。」


「最初から入れておけば良かったのでは…」



 「“疑似生命付与…カーナビよ、ワッザム湖まで案内せよ”」


「無駄な呪文消費きたー。」



 <ナビ不可能、ナビ不可能…>


へ?あり得るのそれ??


「ふむ…ナビとは無力なものだな。」


「いや、おかしいと思うよ猫くん。」


「うーむ。」


「…なんか…昔のドラマ見たような感じ…」


「ふむ。まるで戦争映画のようだな。服装が。」


「撮影…じゃないよね。」



 猫くんが、古めかしい商店の前で車を止める。


ニコニコ座っていたお婆さんは、近くに置いてあったカマを手に取り、ゆっくり近づいて来た。


「出るか…。」


「イエス。」


ぶーん。


カマを持ったお婆さんが、駆け足で近づいて来たところをサクッと逃げる。


「ねえ、猫くん。」


「不安そうな顔をするな。イリーゼが怖がる。」


「だって…」


「迷い込んだ、な。」


「…都市伝説じゃん…」



 車でグルグル回る。行き止まり、左折。右折。同じところに帰ってくる。


お婆さんの前をまた通り過ぎた。


「猫くん、車ごとテレポートする?」


「…さぁ、できるかな。一言で言うと、結界内に閉じ込められたな。」


「猫くんでも脱出できないの?」


「例えば、海はそこに在るだけだが、不幸な誰かを飲み込むこともある。今回は“迷った”ことが原因だ。入り込んでしまった。テリトリーの中では、テリトリーのルールが強い。」


「そんなぁ。どうしよう…殺人鬼村じゃないコレ?」


「と言いつつ、私なら結界ごと、ぶち壊せるが…この程度。」


「なら脱出しようよ~?」


「まぁ、様子見だ。心配するな。芽唯流。指一本触れさせん。いざとなれば、私が皆殺しにするだけだ。」


「人型というか、村人を~?」



「うーむ。ガソリン減って来た。燃費がいいのか悪いのか私には分からん。」


「多分悪いんじゃないかなぁ~はいぱわーだし。」


猫くんは、民家の前で車を止めた。


「イリーゼ、これは全部猫さんだ。“イリュージョン”」


周囲に、村人の影。


のそのそ、寄ってくる。手には、カマや、クワ。スコップに、包丁。


無表情。いや、微笑み。


怖すぎる~。


きゃっきゃと喜ぶイリーゼ。


きっと、猫さんが沢山寄ってきているのだね~。



「ここで、黒幕のお出ましを待とうか。」


村人が駆け足になって来た。


猫くんはふっと笑って、呪文を唱える。


「“拘束”“拘束” “拘束”“拘束” “拘束”“拘束” “拘束”“拘束” “拘束”“拘束”!」


全員、ロープでグルグル巻きになって転がっている。さっすが猫くん。わたしの夫。



 なーんか、天候が怪しくなってきた。黒雲渦巻く。


「そろそろ来る。芽唯流、イリーゼを抱いてバリアを張れ。」


黒雲の中心から、雷が車に落ちてくる!


「“避雷”」


不自然に雷は曲がって明後日の方向へ。



 雨に混ざって、泥に混ざって、人の形をした影が近づいて来る。


「おーまーえはあ、にんげえんかぁ、なんだぁああそのおおのろいのおおちからぁあ」


猫くんは、何も言わず、光弾をぶちかます。


ぶぺ。泥は何かを言いかけて、ふき飛んだ。


でも、猫くんは勝ち名乗りをしない。まだなんだ。きっと。



 地面から、水がしみ出して来る。


水位が、上がってくる。


「ね、猫くん!?」


「安心しろ。芽唯流。私を誰だと思っている。」


「“浮遊”」


車が宙に浮く。水位も関係ない。大体、村が水没ってどういう事!?


あ。もしかして…。


「コイツ等は、集団で一つの呪いの塊。豪雨や洪水で沈んだ哀れな亡霊。」


泥から、次々に人の姿。手を挙げて、こちらに伸ばす。届くハズのない、水面を求めて。


「哀れな亡霊共。迷い込んだ者に八つ当たりしかできない亡霊共。天に帰れ。せめて、手伝いをしてやろう。」


「“天候操作!” “乾燥!”」


黒雲を、猫くんの魔法が追い払う。明るい日差しが戻る。雨が消える。泥の地面は、硬い地面に。乾燥した地面に。


あああ、水が消えたあああ。やったあ。みずがきえたあああ。



 猫くんが、突然、100m位離れた所に飛んでいく。


何かを、見つけたらしい。私からは、良く見えない。


「お前だな!村人の呪いを増幅させ、迷い人を生贄にしている<魔>は!消えろ!亡霊を食い物にする<魔>よ!」


「“光弾”“光弾”光弾“!…はっ。お前のテレキネシスなど効くか。”サモンゲート・ヘブン!“」


虹色のゲートが開く。以前みたなぁ。


天界の、誰かの手が見えた…。悪の塊みたいのを、いつかみたいに引きずり込んでいく。



 うん。こわいなー。天界に強引に連れていかれた<魔>ってどうなるんだろうなぁ…。


少なくとも、解決した後で突然「うへへ…」的な、ホラーのオチにはなりそうにない。



わたしの夫は、伝説の大魔法使い。呪いも、邪悪も、都市伝説も怖くない。


村人たちの縛り付けられていた魂は、静かに天に還っていく。



 …気が付くと、わたし達は、狭い林道にいた。


「右方向です。右方向です。続いて、右方向です。およそ、そのあと、道なりに7kほど進みます。」


「面倒だな。飛ぶか。」


「いや、走ろ?」


わたしは、後ろから、猫くんの肩にあごを乗せて言う。



 きっと、この道を登り切れば、きらめく湖面が見えてくる。


ね。イリーゼ。


安心して迷えるドライブなんて、素敵じゃない?


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