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魔法使い、猫くん  作者: なぎさん
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第3話 「猫 動画」前編

転移モノ、ローファンタジーです。

人目を忍び猫の姿で異界を彷徨っていた魔術師と、彼を猫と勘違いし拾った女子大生の物語。


第3話 前編です。

第3話 「猫 動画」前編



 ずっとこの姿で居るのは危険だ。


私自身が危険だ。変身の魔法は、細部にわたりその生き物になってしまう。

心が人間でも、能力も、嗜好も元来の生き物の影響を受ける。


そうでなければ、芽唯流の猫じゃらしに反応などするわけが無かろう!

TVの黒い点をつい追ったりするわけがなかろう!


私は300年の人生の黒歴史とも言える、ここ数週間の自分の行いが許せない。


 …ので、理屈をつけては人間の姿に戻る努力をしている。芽唯流はまだ嫌がるのだが。


大体、元国王たる私が、こちらで言うところの<ペット>として養われているのは納得いかない。古物商で換金した金を家賃として芽唯流に渡そうとしたが断られた。



「…そこで芽唯流、私は働こうと思う。」


芽唯流はソファで腕くみし、片目を瞑りつつ…

「ほうほう、殊勝な心掛けだけど、何をしようと言うのだね、猫くん。」


笑いをこらえている様にしか見えない。失敬な奴だ。


「ボディーガードとかな…」

「屈強な猫を従えるセレブ…!?」


「探偵とかな…」

「猫探偵!!」


芽唯流はひたすら笑い転げている。


「お前、失礼すぎる。神速の吟遊魔術師たる私の力は知っていように!」

「ぜえぜえ…ゴメンゴメン、あんまりビジュアルが可愛くて!」

「誰もこの姿で稼ぐとは言っていないぞ!」

「えーそうなの?まぁ、誰も猫が喋るとか魔法使うとか思ってないからね!変身しないと就職は無理だと思うよ。でも、気持ちは嬉しいぞ、猫くん。わたしとずっと居たいってことだよね!?」


ぎゅうう。


「私ともあろうものが、ただ養われていることに納得いかないだけだ。」

「でも、変身したら出来るだろうけど、もう少しこの世界のこと知ってからの方が良いんじゃない?マナーとか、礼節とかあるし。文化が違うんだし。」


…正論である。たまにまともなことを言う。


「あー、出来なくもないことがあるけど…」

「なんだ?」


「いつもの猫ダンスを動画配信。」


…あれか。すまほ、でよく見ているやつか。あれに私を映して流すと。


「道化はお断りだ。」

「え、吟遊詩人猫じゃなかった?」


う?う?


「人前で演じてたんでしょう?猫ダンスと歌」


…違うが。


「それが、映像なだけ。んで、見てくれる人が多いとお金稼げるんだよ。」


国王の座を譲ってから、世界の情勢を見守る為に吟遊詩人として国を回り続けた。様々な情報を集め、裏から手を回した。とはいえ、”人間の姿で”の話だ。


「猫くん芸を見せていたんじゃないの?」


…嘘が自分を追い詰める。良くあることだ。全く自業自得で嫌になる。


最早、引き受けるか。正体を明かし、変態と罵られるか。


「やって…みるとしよう。」


我ながら破滅的な道を選んだ気がしてならん。


「わー、わたしもチャンネル開設初めてだし緊張するなぁ~」

言いながらワクワク顔をしているこいつが腹立たしい。


「どうせAIだのCGだの思われるんだから、最初っからCGですって言っとこ。」


CG…たしか本物そっくりの絵だったか?。



 こうして、私の仕事は始まったわけだが。実際は芽唯流の部屋で、音楽に合わせ踊るだけで仕事の実感はない。


故郷の宮廷の楽曲に比べ、とにかくこの世界の曲は早い。映像?の中にいる若者たちの動きに合わせるのはひと苦労だ…。人間の姿の方が本当は踊りやすいに決まっているのだが!?


まぁ兎にも角にも。

私の仕事は猫の姿で踊ることになった。らしい。


―――働くとは、かくも厳しく、己を賭けることなのだ。若人よ。

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