第37話 「猫くんの魔法ランド」
開業間近の、猫くんプロデュース、<魔法ランド>! 菱川グループの社運を賭けた大事業、いかに。
ローファンタジーです。TRPG、RPG、リプレイなどお好きな方是非。第37話。
第37話「猫くんの魔法ランド」
猫くんが造っている我が家(城)…の近くに、菱川グループのホテルが絶賛建設中。
どうやら、例の土精霊はこっちでも活躍しているらしく、猛烈な建設スピードの裏で、一部従業員を恐怖のどん底に突き落としているとか居ないとか。
更に、我が家?と同じく、直接、猫くんが物質創造しているためスピードアップ。
ちなみに、彼は耐震や免震は独学で覚えたけど、電気まわりと水まわりはまだ解らないんだとか。だからその辺だけは専門だよりね。
まぁ、とにかく。現代科学と魔法の融合建築。良いのかなあ~。
さて今日は、開業前のアトラクション・プレミアツアー。
一部報道陣を引き連れて、本ホテル支配人になる予定の菱川揮人の妹、つまり、わたしが案内する。わたしは黒猫を抱きながら、報道陣をアトラクションに連れて行く。
わたしが抱いているのは、身重の私が楽なように体重を羽の様に軽く調節した、普通の黒色の猫くん。
レア。
妹のわたしが案内人になることは問題無いんだけど。わたしの写真は使わない約束だし。
お腹が大きくなってきたわたしが働く羽目になるとは…猫くんめ…。
このホテルは「ソーサリーランド・ホテル」になる予定。
ホテルを中心に、アクティビティーの巨大な遊園地を併設。
憧れの某夢の国的なモノを目指し、この北国の、ど田舎に開園予定。
最大の売りは、「緑猫」…猫神様の全面協力による本物の魔法体験!!
売り上げだのなんだのはともかく、怖れられる魔法を身近にするために、または異界の人たちへの理解を深める為に、猫くんプロデュース。
あの、容赦ないカレが作ったアトラクションなんだよねえ…。
にぃに、これ、大コケしないと良いねえ…。妹として心から心配するよ…。
今回お連れするのは、4人の地元新聞記者。
4人の犠牲者…もとい、栄誉ある初乗り体験者…どうか、ちょいまともな取り上げ方になりますように!
――――――
さて、最初のアトラクションは迷路。いや、懐かしめの3DダンジョンRPGを想像して貰えたら…アーカイブにあるやつ~。パパが昔やってたらしい。
では、皆さん行きましょう。黒猫を抱え、わたしは進む。
まず、ホールから。4つの魔方陣が床に在る。
「皆さん、好きなところに入って下さいね~。わたし、あとはモニターで皆さんの活躍を見てますね~」
それぞれ、部屋に進む。わたしは即、横のシークレットブースに入り、オペレーターと共に部屋の様子を見ていた。
彼らの最初の一言は、<おおお!すごい!本当に飛んだ!テレポートだ!すげえ!!>
運のいい記者、阿栗さん…Aさんと呼ぼう…は、そこにある宝箱からプラスチックの剣を手に入れた。
運の悪い記者、別府さん…Bさんと呼ぶ…が恐怖に逃げ惑う。部屋にいた3人のオークが棍棒を持って襲い掛かってる。 あー、リアルな映像だなぁ。(きっと違う)
「いやぁ、芽唯流。映像じゃない。幻影だよ幻影。」
「やっぱし…ショック死が出そうだよコレ!!お化け屋敷に改名だよ!」
<ひっぃいぃー!> 逃げ惑う記者B。
可哀相なので放送。
<えー、リタイアは部屋の壁の緑に光るボタンを押して下さい。幻影が消えます。>
彼はリタイアボタンを押し、ホールに帰って来た。とても顔が青かった。
「幻影は宝箱のおもちゃ武器が触れると倒されるのだ」
「勇気のいる迷宮だなぁ…」
別の部屋から <ぎゃああああ!落ちるー!ああああー!>
という叫び。
「ああ、落とし穴トラップの幻影だ。下には針の山と骨の…」
「やめてあげてええー!」
<こほん!落とし穴は高度なバーチャルリアリティーです。貴方は落ち続けてなどいません。壁の緑に光るボタンを押してください。落とし穴が消えます!>
<うぎゃああ!宝箱が爆発した!>
<え、ど、ドラゴン!?このおもちゃ剣で!?>
各部屋から悲鳴が響き渡る。
「うーん、難易度下げるか。」
わたしは猫くんの頭をぺしっと叩いた。
…皆さん、如何でしたか~? えへへ…。
ほぼ全員青い顔をしていたけど、一人だけ最後まで運のいい女性記者の椎名さん…Cさんと呼ぼう…はクリア報酬の冒険者バッチを受け取り、ホクホクしていた。
「いやー!最高です!幻影と判ってても、この大迫力!流石!猫神様ですね!」
…いや、怖すぎる… …無理だ… …死ぬかと思った…
3/4の呟きが刺さる。にぃに、このホテル無理かもー。
――――――――――
さて、次は巨大な水槽に連れて行く。
「猫くん、巨大イカとか出ないよね?」
「ぎくっ」
「ううう、皆さん覚悟は宜しいでしょうか…こちらの指輪を付けてください。決して外さぬよう。効果は決まってますが。アタリハズレがありますう。では制限時間までご自由に楽しんでください。」
「こ、今回はパスします!」記者A。
「あの、わたしもここからで!」記者B。
絶好調の女性局員Cさん、即指輪を選んで着ける。彼女はポン、とイルカになって、そのまま水槽に落ちた。
<わぁああぁぁ~素敵~!!私イルカになってます!楽しいぃ~!速く泳げます!!うわぁあ~!最高!>
「おお、これなら楽しそうだ!行ってみよう!」
先程はリタイアの大剛さん…Dさんと呼ぶ…は乗り気になった。それにつられ、残りの記者たちも指輪を装着。
そして、変身した。 1人はマグロに。 1人はウニに。 1人はヒラメに。
<おおお、楽しいけど泳がないと息が苦しい気がする!>
<う、動けない…ゆっくりしか動けないんだが!>
<あぁ、なんか砂の中に潜りたくなる…なぜだろう…>
「皆さん、緑猫氏の言うことには、互いを食べようとしないように! とのことです。」
<食えるのかー!!>
「なんかわからないけど、大丈夫だそうです!」
<あ?奥から何か来たぞ! げ! 大王イカ!?逃げろー!イルカ逃げろー!>
<ヒィィィィイー!!>
イルカは逃げたが、恐怖に固まったマグロが捕まった。
「あ…。」
<あって何だ!?安全策は!?>
マグロは捕まった瞬間に入り口にテレポートしてきた。人の姿に戻って。
「えー、このように…海底生活をある程度満喫した後は、厳しい自然界を味わうことができるそうです…。」
<要らないだろそれ!> <子どもが泣くぞ!> <俺は既に泣いている!>
まぁ今回も、女性局員Cは高評価。さっきよりは評判…いいのかなぁ…。にぃに。やばいかもだよ…。
―――――――――ー
大きな庭園に連れて来た。ここは、ものすごく広い。でも、空の遠くには明らかに白い光でバリアみたいな光がある。大きな光のドーム。庭園は歩けるみたいだけど、全面に何とネットが張ってある。
「はい、皆さん今度はこの指輪を付けてください。1時間で効果が切れるそうですので、ゆっくりお愉しみ下さい。」
「あの、今度は何ですかね…?」
「あ、これは大丈夫です。楽しいですよ?わたし、やって見せますね。」
わたしは、フライの呪文を唱えて、庭園をすーっと飛び回って地上に降り立った。こんなこともあろうかとマタニティーの下、スカート系やめて良かった。
「おー、これは確かに楽しそうだ!」
「落ちないのかね?絶対落ちない?」
「…大丈夫です。皆さんは泡に包まれるらしいです。泡が衝突も落下も防ぎます。」
「お、おお、ならやってみようか!」
今回は、みんな素直に飛び回った。最初は恐る恐る、でもだんだん慣れて来て、ものすごく楽しそうにみんな笑ってた。
そうなんだよねえ!そうなんだよねえ!空は楽しいんだよねえ!
あー、初めて楽しんでもらってるアトラクションだあ!
…にぃに、これ一本で良いのでは無いでしょうか!?
お客様が飛び回る上空を見ながら。
「猫くん。初めて一緒に飛んだの、海だよね」
「あぁ。懐かしいな。」
「2年もたってないけどね。」
「今度は3人で飛ぼう。芽唯流。」
「うん!」
「あー、所で…芽唯流?」
うん?
「この私が、ただ楽しいだけのアトラクションを作るとでも?」
<…皆さん、お愉しみの所…緑猫氏が何か仕掛けてるようなのでご注意を>
下の庭園から、巨大な柱が伸びて来た。何本も。何十本も。
<そろそろ慣れて来ただろう。次々と出るから避けて飛べ。ぶつかると強制退場だ。>
猫くんの集団テレパシーがわたしにも聞こえて来た。
あー、こういう人だよ。うん、よく知ってるよ。
<うぎゃあああ> <しまったああ!> <ちくしょー!ふれた!当たり判定でけえ!>
「誰だ?ゲーム用語で不満言った奴は」
<よ…と…はっ!!>
最期まで残ってたのは、やはり記者Cだった。ただ者ではないかもしれない。
でもさっきまでと違うのは、もっかいやりたがる人ばっかりだったこと。
「次は最後まで飛び回って見せる!もう一度やらせてくれ!」
柱が引っ込んでいき、再びリセットされた空を飛びに行く。
ちょっとわたしも挑戦したくなってきた。幻影の柱とはいえ、なかなかにスリリング。
こんど、やろ。
皆が笑顔で戻って来た。大人達、子供みたいな笑顔だ。ちょっと嬉しいな。
「どうでしたか?皆さん」
うん。勿論、答えは聞くまでもなく最高評価だったよ。
にぃに、これだけにした方が良いと思います。妹より。
さて、最期に異界の街並みを模したショップ、レストラン等を案内し、今回のツアーは終わった。
ショップもレストランもまだ稼働してないので見るだけだけど。稼働したらわたしも来たいな。
では皆さん、記事はお手柔らかに~!
ありがとうございました~!
揮人にぃにが、出口で待っていた。
「皆さま、如何でしたか?当ホテルは来年のオープンを目指し準備中です。どうぞ、宜しければご紹介下さいませ。」
にぃにの紳士的な応対に、記者たちは満足げに帰って行く。
ところでえ。
「…猫くん、出口が4つあるのは何故?」
「良い所に気が付いたな、タダで帰れるわけが…」
<あー!何この迷路!?く、暗い!怖い~!!>
<うあああ、橋の両側に溶岩があああ! 死ぬ、熱いい!>
<あー楽しかった。良い記事書きますね~!ありがとうございました!>
<え?何?オレ小さくなってる!?ふ、踏まれ…あああああぁー!>
…猫くん…ノドしゅりしゅりの刑。 執行。




