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魔法使い、猫くん  作者: なぎさん
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第35話「猫くんとダンジョン」

猫くん、現代のダンジョンに挑む。


ローファンタジーです。TRPG・RPG・リプレイ等お好きな方ぜひ。第35話。

第35話「猫くんとダンジョン」



 俺様の迷宮に足を踏み入れたからには、生かして返さん。


しかも、しかもだ、こいつ等、冒険者ってやつらだ。

はぁ、この世界ではレアな存在を一度に3人も消すのは勿体ない限り。


あの女だけは残そうか。オレの部下に丁度いい。いいオンナだ。後は2刀の戦士と弓射使いのハーフナーか。


この間は警察ってやつが来たが、1部屋目で消えたし。

ガキが2人ほど来たようだが、興味なかったのでどこまで進んだかも知らん。

ガキの直後に、車に乗って派手な若いやつらが10人近く来た。大笑い&バカ騒ぎをしながら入ってきたが、2部屋目で静かになった。女1人だけ残して、奥の部屋にご招待したが。



ココは俺様の迷宮だ。迷い人のお宝は頂く。正直、お宝って程のモンを持ち歩くやつも居ないようだが、とにかく、死んだ奴の持ち物はオレのものだ。それが迷宮の掟ってもんだ。


オレと同じようにこの世界に紛れ込んだ奴らは、どっかの組織に雇われたり、人目を忍んで能力を使って生き延びたり、国や軍の暗殺者になったり、まぁ、色々聞いているが。


俺は此処を住処に決めた。好きなようにやるさ。どうせ、<大いに進んだ>この世界の法律では俺たちを裁くことも出来ない。他にも欲しいモノがあれば奪うし、殺す。俺は迷宮の主。一番困っているのは死体から奪ったスマホの充電と、車の運転の仕方だ。



さて、そんな俺様の快適な住居に、先程の侵入者がやって来たわけだ。

お手並み拝見。ちょい楽しみでもある。


連中は2つある入口の左に入った。


3人の足元を歩いていた使い魔の黒猫がじっと、水晶玉と通じている街灯を見ている。

じっと見てやがる。気づいたか。見られていることに。あの3人の内、誰かが魔術師か。女だな?


なかなかの手練れらしい。面白いな、何処まで来るかな。是非、女だけ生き残ってほしい。色々仕掛けてあるぜ、俺様の迷宮は。


――――――――――


 入口からは一方通行だ。最初の部屋には、3つの魔方陣が引いてある。真ん中が正解だ。左を選べば、右から入った最初の部屋に飛ぶ。迷うことだろうな。ループに思うだろうな。

右を選べば、地下室へ飛ぶ。空中に飛び、その下はゴミ箱だ。ああ、勿論スライムだ。溶かしてくれるので綺麗なもんさ。


黒猫が、何か呪文を唱え、3体の人形を呼び出した。

それぞれの魔方陣へ入らせた。何だアイツ。単独で動いてる使い魔か。ち、戦力に入れると4人か。めんどくせえな。


猫は3人の男女に何やら話をし、自らは右へ入って行った。バカなのか。助かる。


…平然と、入り口に再び戻ってきやがった。ち、さてはスライム燃やしやがったな!?

再び街灯の遠眼鏡を見て、ニヤッと笑いやがった。この猫ごときが!



 奴らは、揃って真ん中に進んだ。

真ん中の部屋には、骨の山と、骨に埋もれた大きなチェストがある。


仮面を被っている女が、クンクンと匂いを嗅ぎ、首を振る。


戦士の手に剣が現れた。魔剣か。ハーフナーの手に弓。これもか。死んでくれ、良さげなアイテムじゃねえか。女の手にも鉤爪が生えた。獣人だったか。風のように剣士と女が走る。


一斉に立ち上がったボーンゴーレムをバキバキに砕きまくりやがった。好き放題やってくれるじゃねえか!

弓使い、ボーンに弓…無駄なことをと思ったが、頭蓋骨のど真ん中ばかり打ち抜きやがる。ちぃぃ、マスタークラスか!


チェストを残し、砕け散った骨だらけの部屋。

黒猫が、中身を見ようともせず、チェストにマジックブラストをぶち込みやがった!?

…ミミックが一撃で死んだ。たった一撃か!? せっかく配置した化け物ども、1分で死んじまった。


部屋に隣接する小部屋3つを覗き込み、その一部屋から、奴らガキを見つけ出した。


女が抱きしめ、泣きわめくガキ2匹を外へ連れて行く。さてはガキ共、どういうわけか順入れ替わって、襲われる若造共を見て隠れたワケか。どうせその後怖くて動けなかったんだろう。運のいいことだ。だからガキは嫌いだ。ま、考えようだ。助かるっちゃ助かる。女が戻るまでに全滅してくれりゃあ、自動的に女ひとりだ。



 2人と一匹が次の部屋の扉を開けた。

部屋の中央に、テーブルと宝石が置いてある。その宝石に触れると、テーブルの下にセットした毒矢が飛ぶ。だがこれは囮のワナ。メインディッシュはこちら、吊り天井が落ちてくる。ぺしゃんこさ。


床にこうやって罠を仕掛けると、意識は下にばかり向くものさ。


奴らは一歩入ると、ハーフナーが何やら言いだした。屈みこんで覗き込み、すぐに毒矢の罠を見つけたようだ。そうだ、その目の良さが命取り。一流ゆえの命とり。


ハーフナーは、入り口から見事に罠を打ち抜いてぶっ壊した。大したもんだ。ハハ、でも次だぜ?

俺様がまだかまだかとワクワクしていると、猫が何かを召喚した。はぁ?猫が召喚?

いま手から作り出したのは何だ?簡易ゴーレムか?何を使って!そんな召喚素材がこの世界にあるってのか?


骨で出来た竜人みたいなゴーレムが中央に進む。宝石を手に取る。

途端に、上から吊り天井が落下してくる。我ながらスゴイ轟音だ、この部屋まで聞こえてくるぜ。ガラガラ、ズドンとなぁ。腹立たしい。砕いたのはゴーレムだけか。


…いや。違うらしい。天井自体が消滅している。

この一瞬で天井を消滅させた? は? 魔法でか? 猫か? 何だコイツ!?


まさか、例の「緑猫」か!? なら辻褄が合う。何匹も魔物倒してりゃ、素材も有るだろうよ。こっちの連中はその辺の価値はまるで知らんようだからな。取り放題だろうよ。


ハーフナーが意気揚々と宝石をポケット入れた。怒るまい、これもまたダンジョンの掟。



正直、俺はかなり焦りを感じ始めている。そろそろ、逃げ出す準備をしようか?

予想以上にダンジョン慣れしてやがる。腕も一流だ。1対3+Gはズルくねえか?

まさか、ここまで来るとは…。次の部屋はまた3つの魔方陣で迷わせるようにしているが、同じ方法で回避するだろう…。


…思った通りだ。順当に正解選びやがった。間違っても、もうスライムは燃やし尽くされているんだろうけどな。


――――――――――


 ラストの部屋。チクショウ、此処で死んでくれ。

若造共の中に居た派手な服装の女を此処に上から吊るしてある。足元には穴。呪文で金具を外せば真っ逆さま。


普段は足かせ鎖つきで床に転がしていたが。いよいよ役立ってもらおうか。

ココは、部屋自体が落下する。最低一人は殺せるだろう。なんせ、女を抱き留めないと、女だけ真っ逆さまに直行だ。ここは4階。動画で見た<遊園地>ってやつから閃いたんだぜ。


どうする?お前ら!?


…猫が、迷うこと無く呪文を唱え、女が悲鳴をあげながら落ちて行く。


はぁ!?助けねえのかよ!


連続呪文か!?レビテーションの呪文で浮遊させ、テレキネシスで引き寄せる。速い!!

そして、部屋が真下に落ちて行く。連中、一歩引くだけでこの罠を避けちまった。

轟音が響き、地震のように揺れる。煙が下から上まで登ってくる。


引き寄せた女を、剣士が抱き留める。何だよ、その「映画」のヒーローみたいな笑顔はよ!?ふざけんな。


猫はフィールドの呪文を唱え、それを橋にして渡り始めた。

面白い使い方をするなあ。おっと、感心している場合じゃねえ、殺すなら今だ。

今しかねえ。千載一遇だ。


呪文は、脆いもんだ。なんせ、ディスペルの一発で消せるんだ。


フィールドで作った橋を渡る? 大チャンスじゃねえか。


消せば終わりだ!! 皆、地獄へ落ちろ!


俺は勢いよく扉を開け、全力の魔力を叩きこむ。いかに化け物ぞろいの冒険者でも、ダメージを受けるだろう。うまくいけば死んでくれ。部屋ごと落ちているのだから逃げようもない。


使い魔は残りそうだが、どんな上級使い魔だろうが、使い魔と魔法合戦で負けるようじゃ終わってる。大体、マスタークラスの魔術師じゃなきゃ、ダンジョンなんか作れるもんかよ!俺をなめるんじゃねえ!


「<ディスペル!> 消えろ!猫の魔法よ!!」

ハーフナーの弓が、俺を狙っていた。惜しかったな、そこまでだ。落下しながら悔しがるといいぜ。


…消えない…。

半透明の橋が消えない!?


ハーフナーの弓が、立て続けに3発。1本は俺の魔導書をぶち抜き、残り2本は俺の両手に突き刺さった。俺のパッシブ防御をすり抜けて突き刺さった。魔弓か。呪文を…物理的に封じてきやがった…。


ハーフナーの横を、動けない獲物を仕留める虎のようにゆっくり近づきながら、猫が…人間の姿になった。


あぁ、人間だったか。チクショウ。

その襟章、魔道国ツァルトの魔道士。エンブレムは金色…か。初めて見るぜ。これが<アークマスター>か。


人間になった途端、遠慮はいらぬとばかり膨れ上がる魔力。肉眼で見える程の魔力の揺らぎ。…化け物が。


もう判っている。逃げられん。コマンドだけで発動するアイテムで戦うのも無理だ。タンポポで象を叩くようなもんだ。


「ツァルトのアークマスター…。魔王メイフィールドがこの世界に来ているようじゃ俺たちに自由はなさそうだな。」

「いいや。」 魔王は欠片も目を逸らさず言った。

「元の世界でも、此方でも。邪悪な者に居場所など無い。自由と無道をはき違えるな。」

「はは、魔王って呼ばれる男が正義ぶるなよオイ。」


魔王は、思いの他、優しく、笑い出した。笑いながら、やはり隙など微塵もなく。俺の言った言葉が、無意味で、間違っていることを思い知らされる。腹が減った虎に、鹿を食って罪を感じないかと聞いたようなものだった。



どうやら、ここまでだ。俺は覚悟を決めた。

「迷宮の主、魔道士ヴォンリー・ベルスト。俺の宝はお前らのモンだ。アークマスター。」


次の瞬間、俺は石になっていた。まだ意識だけはあった。両手が叩き壊されたことは何となく理解できた。おや、何故バラバラにしない?


「この世界では出来る限り殺さぬことにしている。眠れ。いつか、遠くない未来に。その罪を裁く法が出来た時に目覚めさせてやる。法に従い償え。」


ハ、件の魔王も意外と甘いもんだ。それとも、何かがこの男をそう変えたのか。

考える前に、俺の意識は眠りに落ちて行く。永続魔法の睡眠じゃ自然と起きることはないだろう。



ち。うまく遊んでたつもりだったんだけどなぁ。俺のダンジョン。


「市営5」とか書いてあった古臭せぇ4階建て。無人の廃墟だった。



俺が来る前から、まるでダンジョンだったぜ。

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