第33話 「猫くんとフランス人形」
猫くんと芽唯流がハネムーン帰りに買ってきた人形には、秘密があった。
ローファンタジーです。TRPG・RPG・リプレイ等お好きな方、ぜひ。
第33話 「猫くんとフランス人形」
わたし、ケッコンしました。てへり。
名前変わりました。芽唯流・メイフィールドです。
某有名マンガみたいに、あだ名が「MAYMAY」か「メイメイ」か「マイマイ」になりそうですが、今まで通り芽唯流で良いです。うん、まだ誰にも呼ばれてないけど。
講義があるから、ハネムーンは一週間。フランス行ってきた。あー、素敵だった。たーっくさん写真撮って、動画撮って、美味しいもの食べて、素敵な景色見て、おみやげ沢山買ってきました。
空港まで到着すれば、あとはテレポートで飛べるんだけど、家まで旅の雰囲気を味わいたかったから、普通に交通機関を使った。疲れたけど。幸せ。
さて、久しぶりに家に帰って、まずは山ほどあるお荷物を整理する。
お土産コーナーを作り…自分たち用のモノは開封して、飾る場所を考えて、お菓子は開けちゃって、今夜のワインのおともにして、服は洗濯の方に持ってって、と。
「猫くんはお土産メモ通りに分けて積んでね!」
「ハイハイ…働きますよ…お前たちのこの、土産という文化が私には理解できん…。」
「文句言わずやる!」
「ハイハイ…」
猫くんが家族や友人たちへのお土産整理をしている間に、私は自分たち用の小物などを飾り付けている。今回の大物は2体のフランス人形なんだけど、一つはわたしが余りに可愛くて買っちゃった人形。
もう一つは、猫くんが気に入ってアンティークショップから買った歴史ある感じのお人形。可愛いけど少し古めかしい。猫くんが欲しいと言ったのが余りに意外で笑っちゃった。お値段、私が選んだやつの3倍した…まぁいいけど。
結局、二体のお人形は寝室へ。2匹のピンクのクマちゃんの間に仲良く並んだ。
この日は疲れてたけど、まだ旅行の興奮から覚めなくて、2人で沢山お話した。
旅行の興奮からなのか、夫婦になった気持ちの高揚なのかはわかんないけど…。てへ。
夜。猫くんは、お気に入りで買った人形がクマちゃんに挟まれているレイアウトを見て、何か言いたげだった。気に入らなかった?雰囲気合わない?
「いや、良いんだ。言っておくが、これ呪いの人形じゃないからな?絶対に。」
実はわたしが密かに疑っていたことをズバッと猫くんが言ったので、ちょっと安心。
――――――――――
翌朝。明け方。猫くんの<携帯>が鳴る。朝っぱらからうるさいなぁ。
ん~、携帯、と言うことは政府の…国軍の依頼なんだなぁ…猫神様への。
「私だ…。…そうだが。黒いスライム? はぁ、災難なことだな。銃弾?効くわけあるか。燃やせ。…できない? でかい? 大勢逃げてる? 場所は……あぁ、判った。」
猫くんはお出かけみたい。
「行ってくる。アメリカで仕事だ。人助けしてこよう。」と言って服を着る。
「危ない仕事?」
「いや、集まってりゃ、一瞬なんだが。探す必要があるだろうから、昼までは掛かるだろうな。残すと増えるんだ。退治してくる。大丈夫。私には触れることも出来ん。」
わたしも立ち上がって、ちゅー。
「行ってらっしゃい、あなた。」
「…行ってくる。芽唯流。」
猫くんはテレポートで消えた。
で、彼が飛び去った後…。
…うひゃあああああ~!! やってみたかったんだコレ!! 新婚ごっこ(ごっこじゃないけど)!! 恥ずかしいいい~!! ひゃああ~!! 照れるううう!!
ベッドで転げまわるわたし。
あー、暫く転げまわってたら目が覚めて来た。ご飯食べよ。
服を着て、起き上がる。「おはよ!」人形にご挨拶…ん?…ん??
昨日、前を向いていたはずの猫くんの買ったお人形が横向き。
猫くんぶつかったのかな。ま、いっか。後で直そ。
顔を洗い~歯を磨いて~TVつけて~まだメイクはいいや~ご飯食べて~だらだら~
…そう言えば、今日までは休みだった。流石に疲れてるから、もっかい寝ちゃおう。
うん、寝ちゃおう。ゴメン、働いてるパパ。ゴメン。(あまり思ってない。)
――――――――――
さて、寝室に入り、ベッドに潜り込み、違和感にわたしはベッドの上で座り込む。
あの人形。
何で前向いているの。わたしさっき、直してない!!
胸がドキドキする。いつも知ってるこの場所が、急に怖い場所に見えてくる。
猫くんは呪いの人形じゃないと断言したけど。
わたしだって数々の異界案件に立ち向かってきた異界女子だぞ!負けるもんか!猫くんだって今頑張ってるし!サミーちゃんが居る!こ、怖くない!
わたしは人形の前に立つ。じっと、その青い瞳を見つめた。
…何も、起きるな…気のせい…かも…?
人形の瞳が、瞬きした。
「きゃあああああー!」
とりあえず身を守る時は!
「 <鉄身!> 」 体が一瞬で硬質化する防御呪文。
「きゃああああー!人が鉄になったぁ!!」
人形が叫んだ!
「しゃ、しゃべった~!?きゃあああ!サミー!サミー!!」
使い魔が実体化する。
「ご安心を。芽唯流様!!」
「きゃああー!猫が喋ったあああー!!」
再び人形が叫んだ。
「きゃああー!」
「きゃあああー!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
…何か不毛だった。
――――――――――
鉄身を解いたわたしは、サミーちゃんに守られながら生き人形と話をする。
「あなた、何者?お人形さん。確かに夜は前向いて飾ったのに動いて…動けるの?あなた?」
「そ、それはその…」
人形は何か言いにくそうにしていた。
「こっちのサミーちゃんは使い魔なの。わたしはその大魔法使いの妻。…わー、妻だって妻。うわー。」
こほん。
「だから、超常現象同士、正直に話し合いましょ?どう?」
「だからその…その…貴女たちご夫婦が、夜の…を始めちゃうから…恥ずかしくて途中から横を向いて…あ、耳も頑張って塞ぎました…!」
わたしは、ベットにダイブして突っ伏した。気持ち的には、フライパン上のバターの様に恥ずかしさで溶けだした。だ、だめ、立ち直れない。人生最大の恥ずかしさ。泣きそう。
「ううう…恥ずかしいよおお…忘れてよおお…さみーこの人の記憶消してえええ…」
「無理です」サミーはキッパリ言った。
「精神体の記憶を消すなど無理です。まぁ、この者が幽霊ならば成仏してくれれば自然と忘れるかと!」
「それだ! お願い!成仏して!供養するから!祈るからあ!」
「いや、わたし幽霊という程のモノではなく…。農家の娘だったのですが、幼い頃から体が弱く…。自分が早死にするのは気が付いていたの。だから、生まれ変わったら世の中の事いっぱい見てみたいなあ、っていつも思ってました。そしたら。」
「そしたら?」
「何故か人形の中に居るのです。大切にしてたお人形でした。で、いつの間にかショップに飾られ、買われたり戻ったり。戦争もあったみたいだけど、わたしはなぜか無事で…。で、早100年…名前はシェリーヌと言います。幽霊じゃないです。」
「いや、あなたそれ幽霊なのでは…?」
「断じて違います!わたしはシェリーヌです!」彼女はちょっと怒った様だった。
「世の中の見た事ないことを、昨夜はじっくり見せてくれてありがとうございます!決して忘れません。」
「わかりましたああ!あなたは幽霊ではないですう!早く忘れてくださいい!!」
「シェリーヌさん。あまり主をいじめると、破壊しますよ。魂ごと。」
サミーが警告を発した。シェリーヌの動揺が伝ってくる…。
「サミーちゃん、辞めて。この子、悪い子じゃ無いようだし。そこまではしなくていいよ。でも、解決の為にお互い協力しましょ。いいでしょ?」
こうして、わたしとシェリーヌは解決のための方策探しに出た。
―――――――――
さて、ここは冒険者の宿。「緑猫の旅団」
「ダリアさん、この子を救う方法は?」
「ん~、からだ残ってる?」
「わたし死んだの100年ぐらい前だと思いますが…」
「んじゃ無理だ。」
「瑠香ぁ、この子を救う方法は?」
タロットをめくる瑠香のカードは、「世界」
「見たいもん見せてみる?」
「シェリーヌ、何が見たい?」
「あー、怪獣映画と、○○ランドと、Mtフジと寿司レストランと、忍者アニメの○○○が見たいです!」
なに。日本好きなの? 人形を売ってた店主の趣味?
まぁ、わたしのぷらいばしーの為に、このミッションは何が何でも果たさねばならない。
さて、映画館。ポップコーンを買い、有名なキングオブモンスターの新作を観る。
むむ、面白い。
あれ、ポップコーンが、倍の速さで消費されている。シェリーヌ、食えるんかい!?
映画を見終わった彼女は、言った。
「感動しました…大迫力でした…ポップコーン次はキャラメルでお願いします…」
次、○○ランド!
急降下モノは、赤ちゃんが心配だから乗れないんだと素直に白状すると、彼女は妙に感動したようで、どんな気もち?とかいろいろ聞いてきた。この間の子みたいに。また一人、妹が出来たような気がした。途中で会ったナンパをかわし、緩やかな乗り物を楽しむ。
「ナンパの断り方も見れて勉強になりました…!ここ楽しいです!」
結局、ここには夕方まで居た。
で、次はシェリーヌを抱えて富士に飛ぶ。寒いのでサミーちゃんに温度調節の魔法をもらった。
「あ、ああ、美しい…!よく、銭湯で描かれているそうですね…!?」
そうなんだ。ご近所の温泉にはないなぁ。でも見たいから探してみよう。
まぁそれでも、夕日を浴びた富士はとても綺麗だった。今度、猫くんと来よう。
回転する寿司に来た。
皿が倍速消費されている!?
わたしが食べたふりしないと怪奇現象じゃん!誰も撮影シテマセンように!!
「おいしかったですう!!サーモンの脂の乗り、ウニのぷにぷにして濃厚な味、上トロのとろける甘み!お寿司サイコー!!」
「…それはヨカッタデスネ…しかも妙に詳しいですネ…美味しかったけど…。」
最期に。家に戻って、お菓子を出してアニメの鑑賞会が始まった。プ○○○会員なので見放題。食い入るように見始めるフランス人形。減り続けるお菓子とドリンク。あまりアニメファンではなかったけど、面白い。さすが超有名忍者アニメ。
「ただいま。芽唯流。遅くなった。済まない。」
「猫くん!猫くん~!わたし頑張った。褒めて!」
猫くんは私を抱きしめたあと、何食わぬ顔で人形の横に座り、「楽しいか?」と一言聞いた。
「お前を見た時に、<世界を見たい>とだけ念が伝わって来た。何者かまるで分らなかったが、悪意が無いのは判っていた。だから連れて来た。日本はどうだ?楽しい一日だったか?」
「はい、楽しいです!」
「…驚きだ。ここまで意思があるとは思っていなかった。」
「天に行きたいか?」
わたしの聞きたい一言を、猫くんは優しく聞いた。
「やっぱり、わたし幽霊なんですかね?」
「そうとも見える。乗り移りとも見える。選ぶのは君だろう。好きな方で、解決してやろう。」
え、出来るんだ?まじ?わたしの苦労ナニ?
「幽霊じゃ…ないと思います。わたしは、人形に乗り移ったシェリーヌです。もし仮に、幽霊だとしても。このアニメ最終回まで観ないと未練たらたらです!」
猫くんは笑い出した。
「その体、より動けるようにしてやろう。つまり、ゴーレムだ。楽しく好きに生きろ。」
時間が経てば、判る。好きなことをして満足して動かなくなったら、幽霊だったのだろう。その時は、ウチのプリーストが天まで導いてくれる。消えないようなら、<入れ違い>が起きた魂だ。流石の私も、人にすることは出来ないが、新しい人形の体で楽しく生きることは出来る。
「ありがとう、大魔術師。ありがとう、芽唯流さん。お礼に、昨日のことは絶対誰にも言わないから。」
それ、お礼なんだぁ…。
「昨日の事?」
あ、あのね猫くん…!!わたしは小声で耳打ちした。
「まぁ不思議な人形とだは思っていたので…まさか完全に意思があるとは思わなかったが。ふーん、そうか。じゃあ、今夜もあそこに飾ろう。」
「「や、やめてえええ」」
シェリーヌとわたしは同時に叫んだ。
「冗談だが、約束は守ってくれよ。」
猫くんは優しく微笑んだけど、約束を破った瞬間に絶対人形は不幸になるなと、わたしは直感した。
…多分、シェリーヌも感じ取ったに違いない。
まぁ、こうしてフランス人形騒ぎは解決した。
この後「緑猫の旅団」の酒場には、<最先端のAIフランス人形>置かれました。
わたしの仲間達やお客さん達と会話を楽しんでいます。フランス語の出来る方は是非どうぞ。日本語も急速上達中ですよ。
彼女の近くにはTVが置かれていて、誰も居ない深夜、勝手にTVが付くという怪現象を楽しむことが出来ます。もし見かけたら怖がらず、一緒にアニメを鑑賞してあげてください。異様に詳しいので、盛り上がる事受け合い。
お菓子とジュースを忘れずにね。




