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魔法使い、猫くん  作者: なぎさん
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第29話 「猫くんと姫と兄弟と」後編

遥か昔、300年前のおとぎ話。生意気な青年が、竜を倒し、領主になるまでの物語。

猫くんの、過去。


ローファンタジーです。TRPG、RPG好きな方ぜひ。後編です。

第29話 「猫くんと姫と兄弟と」後編



 明け方。飛行で王城に到達した私は、門番を吹き飛ばし、魔法で城門をこじ開けた。


「魔術師マーリーン!!出てこい!!」


「何者だ!取り押さえろ!殺しても構わん!!」数十人の兵士に取り囲まれる。


「<スリーピング><スリーピング><スリーピング>」


全員、眠らせた。バタバタと崩れ落ちる。



「ディムを返せ!!」


私は大声で叫びながら、城の正門を開け大広間に入った。入った瞬間に弓矢が飛んでくる。


「アンチ・ミサイル」


飛行武器を避ける呪文。弓矢は全て私の手前で床に転がった。


弓を諦め、精鋭の兵士たちが槍系の武器を構え走り寄る。



「全範囲拘束!マス・ワイヤード!」


私は歩きながら、全員をワイヤーで封じた。鎧の上からにしたのはせめてもの配慮だ。


「動くな!動けば、鎧ごと切る!」



 私は、さらに歩を進める。この先に謁見の間があるだろう。そこに居なければ、王族の居住区まで進むのみ。王宮魔術師達がまだ出てこないな。判っている。いつでも来い。


「マーリーン! ディムを返せ!!」



謁見の間。扉を魔法でこじ開ける。


王の姿は無かったが、恐るべき魔術師は一人でそこに居た。


私は臆すことなく更に進みよる。殺意をみなぎらせて。



格上?関係ない。我こそは神速の魔術師!



「私を騙したな!」


悪ぶれず、赤いローブの老魔術師は言った。


「騙されてくれて嬉しいよ。お前ほどの魔術師を騙せるならワシの腕も中々のモノ。」


「貴様…」


「女を寄越せなどどいう輩に本物の女性をくれてやるほど、我が国は非道ではないし、領土を求める野心家の心根がどこにあるかも知りたかった。そういうわけだ。」


「種明かしなど、どうでもいい!ディムを返せ!」


私は全力の魔力で、体に揺らいだ空気を纏いながら叫ぶ。



「返す?彼女は君のモノではないだろう。聞いてみたらどうだ?本人に?」


「何だと!?」



魔術師は、召喚の魔法を唱えた。


「古の姫をここへ」


古く、しかし豪華なつくりのベッドが召喚され、石像が横たわっていた。石の姫が。ディムが。


「このディムは、ワシの孫娘。古代魔法王国の姫。滅びに際し、眠りにつかせたのだ。平和な時代に起こすと決めていた。この国の今は、お前が思うよりはまっとうな支配者により治められ、他国よりは落ち着いている。ワシはすぐに目覚めさせる前に、魔法で作り出したニセモノの体に彼女の意識を移して、現代を慣れさせるべく見せていたのだ。お前について行かせたのもその一環なのだがな…。」



赤いローブの魔術師…古代魔法の恐るべき後継者…マーリーンは、石化の魔法を解いた。


石の色が白く温かみのある肌の色に変わり、姫が目を覚ます。


祖父の後ろに居る私を見つけ、ベッドから飛び降りて駆けだしてくる。


「レーテ! レーテ! 迎えに来てくれた! ごめんなさい!ごめんなさい!」


私は、愛しい姫をただ、抱きしめた。初めて、抱きしめた。本物の、ディムを。作り物の体を悟られぬよう身を固く隠したディムではなく、暖かく柔らかい本物のディムを。


周囲を、精鋭の兵やお抱えの魔術師達が囲んで居るのは知っていたが、どうでも良かった…。この瞬間だけ、ほしかった。



 コツコツと、杖を突く音が聞こえ、謁見の間の奥から、国王がやってきた。思ったより若く、聡明そうに見える。


「宮廷魔術師マーリーン。どういうことか。」


「なあに、姫の為に城の城門からここまで、一人で乗り込んできたバカな若者を捕まえただけです王よ。」


「死者は?」


「いませんな。けが人は居るでしょうが。」


「あれは、お前の孫娘ではないのか? 我が一族の妻にはさせてくれなかった例の」


「まあそのへんは恨みっこなしで。王よ。何事も、何事も決めるのは本人ですわい。」



「おじい様、わたしはこの方と歩みます。行かせてください…。」


私は、姫を後ろにかばいながら、王に懇願した。


「王よ、私は、約束通り竜の群れを追い払った。褒美がほしい。ただ一つ。この姫を。他に何もいらない。名誉も財宝もいらない。ディムがほしい」



王は、魔術師の横まで歩くと、苦笑しながら、


「その姫は私の血族ではない。ここのマーリーンの孫だ。そしてそもそも、誰の持ち物でもない。姫が決めるがいい。私が決めるべきは、お前の狼藉の罪と、褒賞の栄誉をどうするかだろう。」



「そも、この者はなぜ押し入ってきたのか。」


「そりゃ、ワシが騙して、ツクリモノのディムを連れて行かせ、更に突然、無理やり連れ帰ったからですな。」


「なんだそれは。お前のせいではないか。」


王は更に苦笑した。



「竜王を追い払っただけのことはある。王城に一人で乗り込むか。気に入った。望み通り、お前に領地を与える。爵位を受け、我が国に仕えよ。それをお前への褒美であり罰とする。そこの姫と共に、領民に安寧を与えられるかどうか、見せてもらおう。」



私はディムと顔を見合わせた。予想外の、童話のようなハッピーエンドに。


「ディムを妻にするなら、ワシの家族となる。ワシの教えは厳しいが。継ぐ気があるなら挑んでみよ。古代魔法の秘奥の数々。」




 この後、慌てて私を追いかけて来た兄弟たちは、事の顛末に驚き、または大笑いしていた、


そして、彼らも私とディムの領地に来ることになる。



強大な力の大神官、才ある商人、最強の剣士、恵みを連れ来る精霊術師。敵を葬る大魔法を使える領主。我々の力があれば、少々の苦難など軽々乗り越えられた。


民の信頼も徐々に深くなっていった。そもそも、王国領地の端の端である。未開地と隣接するこの地は、外部の魔物との最前線であるかわりに、鉱物、農地、様々な可能性の秘められた土地であった。実際に、この後、私が広げた鉱山からは、多くの貴石が産出され、領内は一気に豊かになっていった。



これが、僅か数年後、ある別の事件をきっかけに独立を認められる、魔道国ツァルトの前身。


私はこうして、妻と兄弟たちに支えられながら、王になった…。



…あぁ、300年も昔の話だ。



――――――――――


「猫団長、竜ってのは本当か!?」


2刀の剣士ユーバルスが、驚きを隠さず私のタブレットを覗きこむ。


赤い竜を見て、思い出を掘り起こしていた私を現実に戻す。



「まあ、映像で見る限りは、赤竜だな。」


「でっかいニャ―!」


大きな瞳を更に大きく見開いて、猫の獣人リュカ。


「竜王ってほどではあるまいよ?」


「見たことないだろ竜王なんぞ。テキトー言うんじゃないよ。呪うよ?」


新たに仲間となった口の悪い駆け出しプリースト。元ネクロマンサーのダリア。



私は苦笑した。竜王とは存分にやりあった。


 さて、当然の様に高空を飛行する赤竜だが、この世界には竜より速い戦闘機がある。ミサイルがある。魔法しか効かない竜王でなければ、倒すに十分のはず。しかし、怪獣映画の様にそんなものを使って攻撃できるかな。人々の住む地域で。


しかしまぁ、これはまた、異界のテンプレみたいな、代名詞みたいなモンスターが来たものだ。どれだけ巨大な門が、歪みが現れたというのか。案の定SNSでは大騒ぎだ。隠せるものなのかコレ。それとも。



 最近、複数の国で、怪物映像が出回っている。中には、国が本物と認めた物もある。徐々に、徐々に、支配者たちは人々に存在を匂わせているのだろう。真偽織り交ぜながら。


そんな思いを巡らせていると、軍から連絡が来た。まぁ、やはりというところか。市街地でミサイルは撃ちにくいだろうからな。



「行こうか、みんな。すでに被害が出ている。話の出来る相手では無さそうだ。」


「報酬は?」


「竜退治で手に入れるのは乙女に決まっているさ。」


じろり。


「何言ってるのかしらねー。パパが変なこと言ってますよ~。ほぼ人権案件な発言ですよ~。」


お腹をさすり話しかけながら、芽唯流が睨んでいる。



「…冗談だ…行こう。10億だ。」



あぁ、チャルが酔って昔を語る時、いつも言ってたっけ。


「どんな敵も怖くなんてなかったね。わしら揃ってたら、必ず勝てると信じてたよ。」



そうだな、恐怖など欠片もない。なぁ兄弟たち、今の私の仲間も、悪くないだろう?



…レッドドラゴンか? その翼、一瞬で切り落としてくれる。


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