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魔法使い、猫くん  作者: なぎさん
38/56

第28話 「猫ちゃんと吸血鬼」

猫の獣人、リュカが出会ったの男は、今を生きる伝説の怪異。 獣人VS吸血鬼。


ローファンタジーです。TRPG、RPG好きな方ぜひ。

魔法使い、猫くん 第28話 「猫ちゃんと吸血鬼」



 バイトの帰り。またまたバイトの帰り。


最近のモンスター退治で貧乏生活から抜け出したものの、アタシの生活は浪費癖が激しいので余裕が無いのニャ。


勿論、この猫メイドカフェもチヤホヤされるから気に入ってるし。

客の中には、たまにイケメンも来るけど、なーんか安いヤツばっかだし。メイフィールド持ってかれちゃったしな~。その辺にサイコーなオトコ立ってないかニャ。



 もう家も近くなって来た人気のない道路の街灯の下で、抱き合ってる男女が居たよ。オイやめてよ。人目気にしろよ。びっくりだよこっちの世界。と、思いかけて、アタシは目をそらしたニャ。


当然、夜目は効くのニャ。猫だもの。


 黒いコートを着たそのオトコは、キスしてたんじゃないニャ。オトコが口をあてていたのは、それは首筋で、アタシにはハッキリと牙が見えたニャ。


ヴァンパイア。最恐のアンデッド。


獣人のアタシに何とか出来る相手じゃニャい。

悲鳴を上げて逃げる感じにしようか。お邪魔してごめーん、って感じで胡麻化そうか。

判っているのは、目を見るな、ってことだけ。目を見たら、終わる。意識を奪われる。


オトコがオンナから離れると、オシャレな感じの細いオンナは、ぐしゃっと、足元に崩れ落ちた。可哀そうだけど、もう遅い。吸血鬼に血を吸われた犠牲者はどうなるんだっけ。たしか…。


確か、死んで、蘇る。蘇った時には、吸血鬼として…元のヤツのシモベになって…。

あーヤダヤダ。獣人吸血鬼なんて聞いたことないニャ。



 アタシはくるっと向きを変え、「お邪魔でした~^^」作戦で行くことにしたニャ。

家の方には帰れないニャ。瑠香なんてアタシ以上にイチコロニャ。

足元だけを見ながら、人通りの多い方へ、多い方へ急ぐ。そして即、スマホニャ。

あう、1%…切れた…充電がぁ!使い過ぎたニャ!


繁華街へ再び出て、グニャグニャに道を巡って、別の道へ。一回コンビニに入って、電池式充電器をつなぐ。コンビニを出た瞬間に、嫌なニオイが漂ってきた。近い。

アタシはまた、駆け出してグルグル、ぐちゃぐちゃに回った。


…怖いニャ。

ずっと、ニオイが付いてくる。

死の匂い。死人の匂い。


ヴァンパイアの匂い…。


アタシは、比較的人通りがまだある道路わきに、絶滅危惧種、電話ボックスを見つけ、中に駆け込んだニャ。


小銭を入れて、ナニコレどうやってかけるんだっけ、とにかく電話。

「ハイ、もしもし…?」

「アタシニャ。リュカニャ。助けてほしいニャ、追われてるニャ!」

「リュカ?どうしたの?あなたが助けを求めるなんて、今、猫くんに変わるね!」

「………どうしたリュカ?」

「メイフィールド!追われてるニャ!ヴァ…」


電話を、白い手が切った。

背後に、狭いボックスの中に密着して、冷たい息が首筋にかかる。

狭い中で何すんだよヘンタイ!

扉を開けられた感覚は無かったニャ。


あ、死ぬ。噛まれて終わるニャ。


…嫌ニャ!


アタシは、一瞬で猫に変化した。

全力のパワーでガラスを砕き割り、逃げ出した。そして、近くにあった地下鉄の下り階段へ駆け込む。


「あー猫ちゃんおるわ。かわいい~。」


地下はまだ人気が多い。とにかく人が多いところでしのぐニャ。

少しだけ、ニオイが遠ざかった。やはり人気が多い所の方が安全ニャ。


<皆様、25時になりますと出口が封鎖となります。御用の方はお急ぎください>


無情なアナウンスが聞こえて来たニャ。そう言えば、ここシャッター閉まるんだっけ!!


待てよ、このまま隠れるかニャ?

いや、見つかったらそれこそ誰も居ない地下空間で追われるニャ。


アイツらの弱点は太陽ニャ。当然、外! とにかく離れるニャ。

アタシは、元の姿に戻り、初の地下鉄切符を、別な意味でドキドキしながら買った。使えるカードあったかも。わかんないけど。とにかく終電に乗り込んだ。



 飛び乗った終電は、静かな音を立てながら、地下の闇を走っていく。疲れた人々は静かで、ただ下を向いて目を瞑るか、スマホを眺めるだけ。


そんな静かな最終の地下鉄は、一駅過ぎるごとに、だんだん人が減っていく。車両の区切りに扉の無いこの地下鉄は、直線になれば向こうの車両が見える。


ヤツが、居た。


カーブで、見えなくなり、再び直線になると、1両近づいてた。


また見えなくなり、見えるとまた 近づいている。近づいている。背筋が凍える。

もう、前を向いちゃだめニャ。下を向いてないと、目を合わせたら負けニャ!


地下鉄が止まった。殆ど誰も降りない終着2つ前。アタシは飛び出した。床だけ見るようにしながら飛び出した。急ぎ足で改札をくぐり、たまたま、一緒に降りて来た見知らぬおばさんの後ろを付けるように歩く。おばさん、不審に思わないでほしいニャ。おばさんが居ないと襲われるかもなのニャ!


地上に出た瞬間に、即スマホを入れた。何%?ひとケタでもいい!繋がればいいのニャ!

「メイフィールド!出てニャー!!」

・・・・・・・・・

「!リュカか!?何処だ!」

「わ、判らないニャ!地下鉄の…2…つ………」

初歩的なミスと言えばそれまで。スマホで話す時は顔をあげてしまうニャ…。

上げてしまったニャ…。


目の前の、白い顔をした外国風のイケメンが、赤い目を輝かせていたことに気付いた時には、身体の自由はもう、無かったニャ。



オトコは電話を切り、アタシのスマホを自分のポケットに入れた。

「…かえ…せよ」

なんて、言えるのは、アタシにまだ意識が残っているから。


僅かに喋ることも出来る。理由?獣人の耐久力や耐性なのかも知れないし、異界から来たアタシらは一種の超人だからかも知れないし、アタシがキレイだからかも知れないニャ。


「ほう…驚いた…。」魔の貴族が偉そうに言った。何語かは判んない。メイフィールドに掛けてもらった魔法で翻訳されてるからニャ。


「だが、身体の自由は貰った。お前、ただの人間ではないな。溢れる生命力、動物への変化。何者だ? だが、話は屋敷でゆっくり聞こう。お前の血という最高のデザートを頂きながら、お前を知りたい。安心しろ、お前はただのエサにはしない。お前は美しい。眷属にしてやろう。奴隷にしてやろう。」


「おこ…とわり…ニャ」


アタシの前を歩いていたおばさんは、気付くこともなく、もう随分遠くへ行ってしまった。背後のシャッターは閉まり、付近に人影はない。通り過ぎる車は、ただ暗がりで男女が話をしている様にしか見えないんだろう。


「まずは館へ行こうか、猫のお嬢さん?」


化け物に、嬉しくないお姫様抱っこをされ、宙に浮いた。アタシは見た、オトコの背中からコーモリの羽が生える瞬間を。


―――――――――――


 多分、館というに相応しい洋風の邸宅。もしかして、領事館か何かなのかニャ。黙っていても両開きのドアは開き、中には人形の様にフラフラ立っている美女たちが5人ほどいた。


5人。いや、5体の間違いニャ。そのコ達からは、生者の匂いはしない。


入口からすぐ、ダンスホールのような広間。いくつもあるソファーの一つに、アタシは降ろされた。

降ろされてすぐ、血を求める女たちがフラフラ、ゾンビみたいに寄ってくるのを、オトコは制止した。


「下がっていろ。コイツはお前たちの仲間になる。ワインを持ってこい」

一番近くに居たオンナが、フラフラと命令に従い別の部屋へ消えて行った。


「さて、聞かせろ。お前は何者だ。どうして変身できる?どうして魅了が効かない?」


アタシを見て獣人と判ってない。コイツ、向こうから来た奴じゃないニャ。<こっちの>魔物ニャ!


さっきのオンナが、ワインとグラスを1つ持ってきた。

「これは極上のワインでね…」

オトコはワインを少し注ぐと、一口飲んでから、残りをアタシの首筋にかけた。

「質問には、ゆっくり答えてくれればいい。私は気が長いのだ。それに、どうせすぐ。私を愛するだろう?」


「や…め…ろぉ」

見てるしかできなかった。戦いの好きなこのアタシが。為すすべなく。悔しい!

オトコは、恋人みたいに馴れ馴れしくアタシの肩を強く掴み、牙を近づけて来た。



でも、牙が首筋に触れる前に。アタシは指先の青い光に気が付いた。

指輪。人差し指と中指に、青くうっすらと光る指環。アタシはこんなの付けてなかったニャ。

この輝き…まさか、ミスリル、ニャ?


「「 <鉄心>と<転移>だ… 」」


心に直接語り掛ける、聞き覚えのある声。


「<メタ…ライズ!>」

瞬時に、アタシの体が鋼鉄に変わる。

吸血鬼の牙は、アタシに突き刺さらなかった。


ありがとうメイフィールド!これで良いのかニャ!

あとはテレポートで逃げられるニャ!!


逃げるだけニャ! 逃げるだけニャ!!

逃げる?


テレポートは…


「接触テレポートは、自分と共に相手を連れて行くことも出来る。映像として記憶している所なら飛べる。私の魔力ならな。ネットで世界の映像を見まくってるから、相当飛べるところが増えたよ」


確か、メイフィールドがそう話していたニャ。

「私の魔力ならな。」

この指輪に宿っているのは、メイフィールドの魔力?


なら、なら、アタシは逃げない!戦うニャ!!



「接触テレポート!飛べ!アタシと共に、日本の裏側へ!!」

瑠香とTVで観て、稼ぎで行こうぜ行こうぜ言って騒いだ、外国の素敵な滝。

時刻は、多分14時くらいニャ。



滝を見渡せる広い遊歩道に、硬質化したアタシと、吸血鬼が降り立つ。


ぎゃあああああああああ


オトコの体はあっという間に、強い日差しを受けて燃え出した。

滝の岩陰に入ろうと燃えながら歩き出したのを見て、アタシは<メタライズ>を解く。爪を伸ばし、一気に体を真っ二つに切り裂いた。


次の瞬間、猫に変身。アタシはこの惨劇を何も知らないニャ。何も知らない無垢な茶トラニャ。


二つになった体は、2、3歩、歩いて、そして崩れて、灰になった。灰は風に乗って、河に降り注ぎ、流れて行く。


終わった…。泣きそうニャ。帰りたいニャ。この素敵な観光地、瑠香やメイフィールド達と来たかったニャ。


あー、終わってないニャ…。

「<テレポート>」


まだ、5人の可哀そうな姫が残ってたニャあ。


――――――――――


 さっきの、嫌でも記憶に染み付いた怖ろしい屋敷に飛んだニャ。

すぐに姫たちを爪で切り裂いて、終わらせるつもりだったニャ。


…でもさっきと様子が違う。

飛んだ瞬間に、囲まれた。近づいてきた。


オトコみたいに魅了しようとかしてこない。


ある者は4つんばいに、獣の様に。

ある者は生前の様にセクシーに立ち振る舞いながら。


…自分の意志、で動いてた。


支配が、終わったんだ。しまった。再びしまった、だ。

こいつらは自分で歩ける吸血鬼として生まれ変わった。


でも!かかって来るニャ!

アタシの爪は魔力の爪!!お前らぐらい、切り刻んでやる!

5対1でも…!


「<光弾><光弾><光弾><光弾><光弾>」

周囲の5人の姫は一瞬で、粉微塵になって吹き飛んだ。

吹き飛んで、白い煙になり、地下へ吸い込まれるように流れて行く。


アタシは呪文が飛んできた、上の方を見る。

窓の向こうに猫が居た。

背後の月に、猫のシルエットを浮かび上がらせ。アイツが居た。


猫は、窓を開けアタシの隣に来ると、人の姿になった。

「めいふぃーるどお~!酷いニャ!何でもっとちゃんと助けないニャ!」

「文句は、下の棺を片付けてから聞こう。」

「うにゃう…」


ジメジメした階段を下りる。

棺が並ぶ場所へ…元はワイン倉かなぁ?知らんけど。


棺が7つ。1つえらく豪華なのはきっとアイツのニャ。

7つ?もしかしてアタシ用?ぞっとするニャ。


メイフィールドは、躊躇なく、呪文を唱え、7つの棺桶、全ての真上に木の杭を呼び出した。

更に呪文で、棺を開ける。


目を見開いた姫たちが、無限の再生能力で体を作っている最中だった。


…そして、何一つ迷う素振りを見せず、容赦なく。指をただ、真下に動かした。

空の棺を含め、全ての棺に木の杭が深々と突き刺さる。


姫たちの断末魔の絶叫が響き渡り、彼女らの灰が舞う中を、横に立つ魔王は平然と振り返り階段を上がる。


アタシは少し震えた。吸血鬼とこの男、どっちが本当に怖いのかニャあ。

まぁ、おかげで罪悪感を感じる冷酷な作業をしなくて済んだけどニャ。


アタシは、付いて行く足をふと止める。

…あ、あぁ、そーいうことニャ…。わかっちゃったニャ。思ってたより、悲しいヒト。



で、上にあがったところで、アタシは、メイフィールドの背中を思いっきり引っぱたいた。

爪は立てないけど獣人の全力なので、普通の人なら死んでるかもしれない。


「いってぇえええええ」

珍しく、下品な言葉でメイフィールドが呻いている。ちょっと嬉しくなったニャ。

そして、アタシは抱き付いた。

「怖かったニャー!ちくしょ~!」

良いだろ芽唯流!抱き付くぐらい!


「何で指輪を渡すだけなんだニャ!?」

メイフィールドは少し困った顔を浮かべ、

「私にとって仲間とは、そういうものだからな…。リュカなら、気付くと思っていた。戦う女だから。お前は。」

そう言って、微笑んだ。


腹立つニャ! 腹立つニャ! この魔王!!

「メイフィールド…!」

「…何だ?」

「メイフィールド!責任とるニャ!!」

「な、何を?」

「芽唯流のことは、友人として祝福するニャ!でもアンタはアタシに責任とるべきニャ!」

「せ、責任って何だ?」


メイフィールドにとってはただの八つ当たり。逆恨み。だろうけど。

「アンタより強くてイケてる男を紹介すべきニャ!又は、浮気する時はアタシにするニャ!それか、それかそれか、この際だから国王にでもなって、アタシを第二夫人に迎えるべきニャ!!責任とるニャー!!」


呆気にとられて苦笑いしている冷血魔王に、アタシは一瞬のスキをついてキスした。

…これくらいは見逃しニャよ芽唯流。


あれ? 叫んだらスッキリしたニャ。


「じゃぁ帰るニャ。テレポート使うニャ。あとは宜しくニャ。あいつ、うちん家近くで一人、血を吸われてた女が居るニャ。そっちも頼むニャ。」


「<テレポート!>」


何か。魔王が叫んでたけどまぁ気にしないニャ。



――――――――――


…さて、後始末なんだけどニャ。


 1つ。アタシが見た最初の犠牲者については、新入りネクロマンサー、もといプリーストのダリアによれば、ただの可哀そうな死体となっていたとのこと。連中は、眷属にするかしないかを選べるのだとか。…だからヴァンパイアって美形多いのかニャ?


 2つ。アタシの居場所は、GPSと瑠香の占いで見当を付けたんだって。さすが親友だニャ。旅行、行きたいニャ。ちなみに。アタシのスマホは館にあったコートから勿論取り返したけどニャ。


 3つ。ミスリルの指輪は、後日、仲間達にも配られたのニャ。ミスリルゴーレムの素材を元にして、メイフィールドが作り上げたマジックアイテム。ちぇ、アタシだけじゃ無かったのかぁ。まーそうだよねー。



アタシは、未だにメイフィールドがアタシをギリギリまで助けに入らなかった理由が判んないんだけどニャ。まぁいいニャ。信頼って意味で捉えとく。ちょっと違うような気もするんだけど。



あー、メイフィールド? ちゃんと責任とるニャよ?

芽唯流の説得は死ぬ気で手伝うからさぁ~。



…なんて、言えるなら苦労しない。


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