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魔法使い、猫くん  作者: なぎさん
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第21話 「 猫くんのフィアンセ 」

猫くん、ついに芽唯流の両親と…!しかし、芽唯流の父親は意外な条件を突きつける。

ローファンタジーです。恋愛要素強め回です。


お時間のある方、TRPG、RPG好きな方是非…。21話です。

第21話 「 猫くんのフィアンセ 」


―――実家。


 猫くんは、世にも奇怪な怪異な魔法使いで、ゲームのチートキャラを地で行く大魔法使い。


「こんなとき」


何か大したことない大事件で猫くんが活躍してくれたら、パパの見る目も変わるのに。猫くんのかっこよさが判るのに。冷たい目の奥の暖かさが判るのに。


…でも、何も起きないものだ。


不幸を呼ぶような大事件を期待するわけではないけれども…。実に普通の日。


いや、わたしにとっては人生の大事件で、パパママにとっても大事件なんだけども。


何事も起きない。だから、針のむしろ、ってヤツ。



助けてください。


今、わたしと猫くん(人間)は並んで座っており、パパママと向かい合う。




魔術師猫どころか泥棒猫か!人を騙すようなヤツとの付き合いなんぞ認められるか!芽唯流、お前もお前だ!そんな情けない理由で寮を出たのか!


猫くんは、パパの怒りに対し、ただ、頭を下げた。


その怒りの頂点の中で、堂々とこう言った。


「卒業と共に、私の妻に迎えたいのです。どうか認めて頂きたい。」



打ち合わせにないセリフ、キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!


わたしは口を塞ぐように両手で顔を覆う。


2人では約束をしていても、心のどこかで不安だったから。涙が零れてしまう。



「ぱぱ、まま、お願い、悪い子でゴメン、酷いことしてゴメン、でも、これがわたしの一番の願いだったから。認めて…お願い…。」


「こんな、どこの馬の骨とも判らん男と…!」


「アナタ、メイフィールドさんは王族ですってよ。」


ママのサポート発動。


「お前を幸せにする働きが出来るのか?不自由ない甘えた生活をしてきたお前が、貧乏に耐えられるのか!?」


「アナタ、メイフィールドさんの貯蓄は20億ですってよ。なかなかビックリよね。今後も軍の特殊顧問として働くんですって。」


「…猫に化けて女に近づくような男がか!」


「それは芽唯流が望んだらしいわよ?」


「ママはこの男を信用するのか?芽唯流に相応しい男なのか?礼節と誠実さがある男なのか?騙しておいて!娘の部屋に転がり込んでおいて!?」


「私は…」


「今日はもういい!帰れ。帰ってくれ。もう二度と合わぬとは言わん。だが、お前の誠実とやらを見るまでは認めん。認められん!」


猫くんは立ち上がり、


「近日また、お話をさせて頂きたい。…芽唯流、電話する。」


そういって、少し寂しそうに、呪文を唱えて消えた。



「魔法使い…か。お前、本当にあの男なのか。それこそ、吸血鬼の様に魅了の呪文でも掛けられて騙されているんじゃないのか…?」


わたしが反論しようとするのを、ママが手で制した。


「…芽唯流、今日は泊っていきなさい。パパの気持ちも少しは汲んで。」



わたしは、部屋に入って、不安に泣くしかできなかった。


判ってる。パパとママには酷いことしちゃった。

いっそのこと出会わなければ…。出会わなかったら、こんなに幸せになれなかった。


ほどなくして、猫くんから電話が入る。

猫くんは、「私を信じろ。必ず理解してくれる。」何度も、そう言った。


――――――――――


 翌日、パパは早くから出かけてしまった。少々顔を合わせにくかったので、悪いけど少しほっとした自分がいる。


同時に、パパは傷ついているんだろうな、とも思う。心配にもなる。


そんな私の気持ちを察してか、ママはわたしに優しく声を掛けてくれた。


「大丈夫、パパだって認めてくれるでしょ。そのうちね。」


「そのうち、っていつ?」


「さぁ…。でもね、パパからアンタたち二人に伝言があるのよね。」



伝言?


それは、フツーの父親なら言わないような驚愕の試練だった。少なくとも、猫くんのほうは。




「かぐや姫」。昔話のお姫様。竹から生まれた月の人。


求婚を受けた貴公子たちに、無理難題を突き付けてお断りする。


よくわかんないけど、


燕の子安貝。竜の五色の珠。仏の御石の鉢。蓬莱の玉の枝。火鼠の皮衣。とかとか。



パパの伝言はこう。


まず、猫くんへ。


この5つの内、本物を一つ姫へ捧げよ。


言い回しがゲームの謎っぽくて腹立つ。要は無理難題。諦め下さいってこと!?パパひどい…。



そしてわたしへ。


5日後のグループ創業記念パーティーに久しぶりに参加しなさい。沢山のひととお話ししなさい。


…沢山の人、か。嫌だなぁ。何のためか、わかる気もするし、わからない気もする。



ママと相談の末、わたしは一度家へ帰る。勿論、大学もあるし。


猫くんとは夜に会えるだろう。あまえちゃおう…。彼は、最近ずっとホテル住まいしている。夕方まではそこにいる。夜、わたしの部屋に飛んでくる。にぃにのアドバイスに従った形。



猫くんね、それだけじゃなく最近は家を建て始めた。設計図は見たけど、外観のイメージはよくわかんない。おっきいの。そんなに大きく無くて良いんだけど、任せた。


言う間でもなく、わたしと一緒になるための家。でへへ。


イクラで建ててるのかは知らない。聞きたくない。金銭感覚だけは今一つ理解できない。やっぱ王様は違う。



なーんて。わたし達のことは進展しているのに。バラ色なのに。理解してくれたら、バラ色なのに。



わたしは、パパの伝言をしっかり伝えた。真意は図りかねるけど…。ひどい難題とは思う…けど、わたしのパパは、わたしの大好きなパパはそんなひどい人じゃない…そうも…思う。



それ以来、猫くんは、昼間忙しそうにしている。


…もしかしたら、竜と闘いに行ってるのかもしれない。


――――――――――


 湯島グループ創業記念パーティー。パパの傘下である菱川グループはここの一角なので、主賓の一人。パパとママがね。わたしとにぃには、少なくともにぃには、やがてこちらの席に着く人。で、わたしは別グループの誰かの血縁になることを望まれて「は」いる。


て「は」いる、ってのは、パパママ共にわたしを政略結婚の餌食にするつもりがあるわけではなく、縁があったらね、の程度であるとキッパリ言われている。



そんなつまらないパーティーの席。


一人になるとすかさず御曹司的な人が来るので、あまり家族から離れないようにしているけど、挨拶周りは嫌だけどしなきゃいけない。にぃにと動く。



 でもこれがまた、最悪。にぃにはにぃにで、お嬢様方、結構お話に来るのね。さすが我が兄だよ。イケメンだよ。そうしてにぃにが、わたしを気にしつつもお嬢様方と話していると、すかさず来るんだよね、ボーイズが。興味無いのに。カレ居るのに。かといって不愛想にも出来ないし。パパには沢山の人と話ししろって言われてるし。


 あちらで二人で飲みませんか、って、お酒は二十歳からだから!向こうでお話しませんかはまだしも、会場を抜け出して来ないかとか。部屋番伝えて来るとか。皆さま、さぞ普段はオモテになるんでございましょう。ハイ。


…猫くんがコッソリ来ることになっている。招待状はママの名義で出てるから来れる。無くても彼はどっからでも、来れるけど。


…早く来てよ。



―――暫くして…。


人の壁で、わたしも彼が来た瞬間は気が付かなかった。


会場の静かなクラシックを断ち切るみたいに、弦楽器の音が入り口から響き渡る。


人々の視線が集まる。



視線の中心には、一目で上質と感じる白いスーツを着こなし、弦楽器を持ち一礼する若者の姿。


彼が顔をあげると、周囲から少しため息が漏れた。


プラチナの髪、白い肌。透き通って冷たい水色の目。少しハーフっぽい美しい顔。


顔をあげ、ど真ん中を当然の様に通る。通りながら、流れるようにコートを渡し、綺麗な鞄を預け、ワインを受け取る。淀みなく、優雅…。


あぁ、なるほど。わかっちゃった。本物なんだ…。それはそうね、猫くん王様だもん。


マナー講座で身につけた仕草じゃないんだ。こちらのマナーを多少無視してようが何だろうが、彼の国では彼の振舞いこそ、正当な王族の振舞い。



「芽唯流。」


わたしを見つけ、呼ぶ。呼ばれるままに、わたしは猫くんに寄り添う。


猫くんはわたしの手を取り、中央の奥まで来ると、衆人に向かって告げる。


「皆様を楽しませる少々の時間を私に頂きたい。クラシックを一時止めてもらえるか。」




猫くんは椅子に掛け、古めかしいリュートを構えた。


そして、静かなスタートで、わたし達に驚きを与える。


詳しくない人にだって伝わるはず。彼が、超一流の奏者であることが。

…芸歴300年。


曲が進むと、彼は歌を添え始めた。


わたしだけは知っている、美しく透明な声。わたしの手を引くと、歌っている自分の後ろに立たせる。わたしは、彼の肩に手を添える。



歌詞の内容は、きっと誰も理解できない言語だけど、求婚の歌。

大切にするっていう、誓いの歌。その家族も愛しますっていう、決意の歌。


その歌を、猫くんはパパとママを見つめながら、歌った。



やがて、万雷の拍手がわたし達を包む。

わたし達は、手をつないだまま、パパとママの前に立つ。


猫くんは先ほど預けた鞄を持ってこさせると、中にあった上品な女性向けの毛皮のコートを、ママに渡した。そう、姫、に。



「父…芽唯流の父上殿、その毛皮は燃えない。」


「…火鼠の…皮衣か。」


「いや、本物ではない。私が毛皮に、<コーティング>したものだ。」


「キミの力でも無理だったか?」


「いや。」


「なに?」


「5つの内、2つは宗教的なもの。伝説上のもの。人々の心に寄り添うものに手を出してはいけない。残り3つは、生き物を殺さなければならないものだった。だから、しなかった。父上殿が、殺してでも手に入れろと申されるならば、竜かサラマンダーを<召喚>して手に入れて見せる。だが。父上殿はそうではない。」


「…そうだな。」


周囲の人々が話しかける。

この若者は何者なんだね、菱川くん。教えてくれたまえ。



パパは。


目を瞑り。暫く深く考え。



「完璧な解答。貴族の風格。思い伝わる歌。…嫌でも周囲に見せつけてくれる芽唯流の顔。…笑えるほど幸せそうな顔…。」



周囲の人々に聞こえるよう、パパは大きく言った。


「皆様にご紹介させて頂きたい。この若者は、異国の王族出身でして、現在は国軍の重要な地位についております。近々、私の息子になるレテネージ・メイフィールド君。娘のフィアンセです…。」


わたしは。パパの胸に飛び込んで泣いた。

パパ。パパ。ありがとう、パパ。


揮人にぃにが、猫くんの肩に手を置く。ママが、わたしを抱きしめる。


今日だけは。これ以上なくつまらなかった儀礼的なパーティーは、私にとって最高の思い出に変わった。空気を読んだ重役たちがこぞって猫くんに話掛けるのは気に入らなかったけど。


――――――――――


 夜の、おまけ。


 元々、傘下の素敵なリゾートホテルで催されたこのパーティーでは、参加者はそのまま宿泊する人が多い。私たち家族も最上階スイートが当たっている。流石に猫くんと一緒の部屋とはいかないけど…。素敵な夜。幸せな夜。愛する家族の夜。


でも、私は夜のラウンジで見てしまった。


猫くんと、パパと、にぃにが何か地図のようなものをテーブルに広げて…話し込んでいるのを。多分アレ、猫くんが建設中の新居だ。テーブルの横には空いたブランデー?ウィスキー?の瓶が3本も転がってる。絶対酔ってるでしょ3人とも。


何だろう、3人は、顔を突き合わせて突然ニヤリと笑ったのだ。


こわ!


ガチこわ!



「ねぇママ、男ってのは、人数揃うとバカになるの?」


「いいえ芽唯流。一人でもバカよ?」



うん、ママのアドバイスはいつも正しい。


寝よ寝よ。バカの与太話は今度きこ。



…でも、楽しそう。


お休み、猫くん。



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