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魔法使い、猫くん  作者: なぎさん
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第12話 「使い魔VS使い魔」前編

転移モノ、ローファンタジーです。

人目を忍び猫の姿で異界を彷徨っていた魔術師と、彼を猫と勘違いし拾った女子大生の物語。


たまたま目にしたニュースは、魔法の香りがする犯罪。猫くん、勝手に動く。

第12話前編です。

TRPG、RPG好きな方、お時間のある方、お暇つぶしに。

第12話 「 使い魔VS使い魔 ① 」


 新居一日目。

前より離れてしまったけど、バスで15分。

入口には常駐警備、中々のセキュリティーとの専門家パパ談。

勿論、ペット可。 

早速ご挨拶した右のお隣は老夫婦で、悠々自適な感じ。猫さん2匹。

左は3人家族で、高校生の娘さんがいる。ペット不明。


肝心の部屋は南向きの7階。703号室。

前より2部屋増えて一人暮らしには広すぎる作り。

…もちろん、実質二人暮らしなので丁度いいのかもしれない。


床にはふかふかタイプのじゅうたんを選んでみた。ソファは大きめのに変わった。

TVは前のやつ。共有じゃなくなったので、新しく洗濯機が登場。キッチンがやや充実。

ベットは前のやつ。


前と同じく、ソファの前にサイドを置き、正面にTV。この辺は前と同じレイアウト。

ここが、わたし…と猫くんの部屋。

月額は、結構お高い。動画の収入をパパママに伝え、マンションの経費は全て私が出すことにした。学費、食費、交通費にお小遣いは相変わらず振り込まれてくる。

「あって困ることもない。余裕があるなら貯めておけ。」だそうだ。


正直、引っ越しの理由が決して健全とは言えないので…。

半分騙したようなものなので…。

わたしは両親からの振り込みを使わず、2人で作った猫動画だけで生活しようと思う。



 ―――「今日から、この部屋。床暖だし猫ゴロゴロも可能なのです。」


猫くんは、ソファの上のわたし隣に来ると、人間の姿に戻った。

「部屋の色もより明るくなったような気がするな。お前の親が選んだだけあってしっかりしたつくりの建物に思えるよ。」

「…良く考えると…猫くん、お城に住んでたんじゃないの?」

「私の作った城は防衛の為にあった。主に兵士のためにある無骨なものだったのでね。自分のスペースは大したことは無かったよ。」

「ふ~ん。」多分控えめに言っているのだろうと思う。


TVでは二人ともあまり興味のないスポーツニュース。

わたしが入れた紅茶。あまいクッキー。ゆっくりした時間。

「…今日は朝からその姿なんだね?」

猫くんが、私の肩に手を回す。

「魔法を使う時に人に見られたくないからこそ猫なのであって、お前しか居ない時にはこの姿でいいな。」

「黒猫くんの可愛いのも見たいんだけど。」

「いや、今はこの方がいいな…。」

ズルいぞ。土曜日だからって。新居になったからって。

「…えっちなこと考えてるでしょ…」



―――

<……の資産家を狙ったこの強盗事件、運が悪いことに防犯カメラが機能していなかったとの警察の発表です。一斉にカメラが動かなかったのも犯人グループの仕業なのでしょうか?続報が待たれます…>


猫くんの手が止まって、そーんな感じのニュース速報の間、私は非常に微妙な姿勢と服装で放置されていた…。

「あの…脱がすの途中で止められると私非常に変な恰好なんですけど…」


こういう時に、私以上に注目するものがTVにあるのは許せないんですけど!

「すまん。理由はあとで教える…。」


このあと、かなり拗ねて見せたら面白いくらい焦ってたので、今回は許す。

ちょろい!猫くんちょろい!でも、今回だけだぞ。許さないからな。


――――――――――


 ―――「猫くん、猫くんはいつからその姿のままなの?」

「ん、あぁ、23歳の時から、私の体は不老不死になっている。」


すごくシンプルに答えが返ってきた。不老不死!どうやって!


「…お前も、なれるんだが、その決意があれば…。」

何故か、遠慮がちに猫くんは聞いてくる。

「うん、考える必要がありそうだけど普通に惹かれるかなぁ。ずっと若いなんてスゴイや。私が23になったら、そうしてもらおうかなあ。同い年で。てへ。」


どんな有り得ないことも、猫くんと居ると叶えられていく…。

どうしよう。しあわせすぎてどうしよう。


…いや、でも…まだ難問山積みなんだよね。

すっかり恋の勝利を収めた気分の私だけど、ほんとにちゃんと責任とってくれんの?

パパママ、にぃに、私達を認めてくれるかあな。


て、ここまで考えてはっと我に返る。

…私は大学生1年生で、夢に向かって勉強始めたばかりじゃなかったっけ!

…明らかにオトコに溺れて浮かれてるコだよ今のわたし!

…これじゃ夢叶えるより妊娠が先になるよぜったい!


うん。私は、しばらく言えなかった、私史上一番エロくて恥ずかしいセリフを猫くんに伝えなくちゃいけない。中世世界から来た猫くんには判らないのかも。TVや本で仕入れている情報では知らないから”今日も”なんだよね…こほん…。


「あの、あの、あのね猫くん」

あぁ、もうしぬるセリフだぁ、死にそう。恥ずかしくて死にそう


ゴム…って知ってるかなぁ…私も見たことないんだけども…


以上、わたしの本日のノロケ話はここまで!!


――――――――――


「…で、あたしを呼んだのは占いな訳ね?」

瑠香が部屋を見回しながら、わたし達に聞く。


「新居自慢なら即帰るわ。芽唯流?」

「ち、違うってば!」

「すまないな。キミの力が借りたかった。…犯罪捜査にな。」

「メイフィールドさんに頼まれてはNOとも言えないけど…。」

瑠香は胸の猫ブローチを撫でながら答える。


「魔法使いは犯罪捜査もお仕事にしているの?悪い意味じゃないんだけど?」

「端的に言えば、今朝のニュースに出ていた強盗事件は、魔法犯罪だと疑っている。」

「え、そうなの?」

「事件が起きてから2日目の発表だ。遅くはないか?また、被害者の老夫婦は怪我をしているが…さぞショックも大きいだろうが、なんのコメントも伝わらない。警察の発表ではカメラも誤作動だ。」

「…おかしい? 病院のご夫婦の回復待ちとかなだけじゃ?」


「ここからは、ただの推測に過ぎないんだが…。今回の犯行は僅か10分ほどで行われたとか?となれば、時間が短か過ぎないかと思う。次にカメラだ。芽唯流のタブレットを勝手に使ってると時々フリーズするが…。」

「勝手に使わないでよ…」

「君らのこの進んだ科学でも万能ではないのは知っている。だが、都合よくカメラが誤作動するかな。」

「ハッキング?」

「乗っ取りというやつのことだな?あり得るだろうが、もっと手っ取り早く…。犯人が、姿を消していたら簡単だ。」


「本当はカメラに写っていたが、そんな超常現象を警察が公開するとも思えない。今頃もっともな科学的理由をこじつけているだろう。だから、証人である夫婦のコメントも出せない。と、考えると辻褄が合う。」

「魔法的推理ね~メイフィールドさん。でも根拠なしだよね。」

「証拠は無いな。一番気にかかるのは、カメラに写っていなことだが。」


猫くんは、瑠香の胸のブローチに命令した。

「フィル、芽唯流を消して見せろ」

瑠香のブローチは、柔らかく光って、黒猫の姿に変わった。そして、このわたしに向かって呪文を唱える。

「透明化」


…なんで毎回、わたしを実験台にしたがるかなこの男は!?


「芽唯流、私達はどう見える?」

「どうって、ふつうだけど。」

「芽唯流、そこのクッキー1枚食べてみろ?」

なによう。もう。ぱく。

「あ、クッキーが消えた…!」

「透明化の呪文は衣服ごと消すんだ。ポケットにでも入れば現金も宝石も見えなくなる。」

「…なるほど」

「…そして、一般的な魔法効果なら透明化は30分。」

なるほど…。逃走するのに10分!いや、家に入る少し前から消えてないといけないんじゃないかなぁ。

「だとすると、犯行後に、ごく普通に近くを歩いていた人の中に犯人がいて、何食わぬ顔でどこかの車で逃走、ってわけね?」

「まぁ可能性だが。」

ちょっと!そこまでならわたしも今考えてたんですけど!!

加わりそびれたよもう。

「…で、わたしいつまで消えてるの?」

「フィルの魔力なら40分は消えているな。ただ、本人が<現れよう>と思えばすぐだ」

ポン。

「あ、ほんとだ。」


「力を貸してくれるか?瑠香?キミの占いで次の犯行場所を」

「そんな具体的なの自信ないけど、わかりまし…」

瑠香はタロットを並べる手を止めた。少し、気持ちはわかる気がする。


「危険…だよね、犯罪者に挑むんだよね…」

「私だけな。」

「待って。わたしも…!」

「ダメだ。」

「行くもん!」

「…芽唯流、予想通りならの話だが、実行犯は雇われた奴らばかり、または雑魚ばかりだ。その魔法をかけた奴が、又は、<使い魔>が近くに居るんだ。強敵の可能性がある。」


「敵は、あたなと同じ魔法使い…というわけね、メイフィールドさん?勝てるの?」

猫くんは、ちょっと笑った。でも、それに続く瑠香の言葉に、表情は硬くなった。

「殺すの?勝ったとして、その犯罪をこの世界では立証できないよね。逮捕されない。…殺すの?」

猫くんは、わたしを見て、少し悲しそうな顔をして言う。

「…今の私は、人は殺さない…。無力化するとしよう。」


「…いつか、あなたの人生を芽唯流から聞くことにするわ。いつかね。いいよね?」

瑠香はそう言いながらタロットカードを広げた。


――――――――――


 ゲームの感覚で聞いてほしい。

キャラ最強は、魔術師ではない。と猫くんはいう。

魔術師は、魔法が効かなければ終わりなのだ。魔法をかける前に剣で切られれば終わるのだ。だから、魔法使いは戦い始めた時には勝っていなければならない。と。

じゃぁ、何で魔術師を選んだの?


最強だからだよ。


矛盾しているなぁ。今の私には理解しかねる。


 ―――さて、あれから3日。

わたしは猫くんの隣に座っている。

猫くんは、目を瞑ったまま微動だにしない。

わたしが納得しないので、猫くんは「もうひとつの戦い方」を選んだ。わたしにしてみれば、選んでくれた、なんだけども。


 普通、魔術師は一体の使い魔しか持たない。持てない。常に魔力を吸われ続けるようなものなのだそうで、2、3体も呼べば本人の魔力はカスッカスであると。まして、この世界はマナという魔力の元が少なく、効果も薄いと。

で、もうすでに、猫くんの使い魔フィルちゃんは、瑠香にレンタルされている。


…その上で、猫くんはもう一体の使い魔を呼んだ。猫くんによく似た。美しく黒い雌猫だった。今度は、「サミー」と名付けた。

「私の感覚をこのサミーと共有する。しばらく目を覚まさないが心配するな。じゃぁ、行ってくる。」


複数召喚。当代最強の魔術師を自負する猫くんだからできる芸当なのか。

…わたしを心配させない為に無理をしているのか。

あぁ、私も魔法がつかえたらなぁ…。この人を支えていけたらなぁ…。


本人が行かない。安全な場所から戦う。のに…やっぱりちょっと怖い。もし本人が戦いに行くなら私はもっと怖いんだろう…。


世の中の、傭兵さんとか戦地に夫が赴くとか、漠然としか感じなかった怖さ。TVの特集を見て涙が出ても、やはり心のどこかで他人事だったんだな、わたし。



目を瞑っている猫くんの手をわたしはぎゅっと握った。

負けないでね…。


黒猫のサミーは、その背に黒い羽を生やし、ベランダから飛び立った。そしてすぐに透明化の呪文を唱え姿を消した…。




――続く。

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