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魔法使い、猫くん  作者: なぎさん
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第1話 後編

公園で出会った黒猫は、異界から来た冷酷な使い魔。その猫を連れ帰った大学生の菱川芽唯流は、同じく異界から紛れ込む魔物や怪異が行き起こす事件に巻き込まれて行きます。


投稿方法が色々間違っておりましたので、連載・修正版。

第1話後編です。

魔法使い、猫くん 第1話後編(連載・修正版)



…猫くんが隠れるように言った理由はすぐに判った。


昨日の男たちがまた来たからだ。しかも、手にボーガンを持って。

猫くんを殺す気だ。わたしはタコさんの影から叫ぶ。


「猫くん!ボーガンだよ!逃げて!!」


わたしが叫んだのと、ボーガンが飛んだのは同時だったかも知れない。


でも、猫くんの目の前で、短い鉄の矢は何かに弾かれて、地面に落ちた。

連続で何発も飛んできたけど、全て落ちた。見えない壁がある様に。


「素晴らしい文明だ。驚いたぞ。」


猫くんの言葉を聞いて、男たちは再び車に乗り込もうとした。出来なかったけど。


「Fr…z」「Fr…z」「…saa…」「…saa…」「noir….」


猫くんが唱えた呪文は、再び男たちを拘束した。


「昨日逃がしてやったにも関わらず、殺しに来る無謀な勇気に免じ…。一瞬で殺してやる。」


猫くんの頭上に巨大な火の球が現れる。直径2mはある巨大な火の玉!


「ダメ!」


私は猫くんの前に駆け出し、前に立った。

熱い!居るだけで死にそう!でも、でもダメ!!


「逆恨みを行動に移した輩だ。生かしておく価値など無い!」

「警察に捕まえてもらおうよ!ダメだよ!殺しちゃダメ!」


大きくため息をついた後、猫くんは頭上に、溜まった炎のを打ち上げた。大きな爆発が起き、周囲に叫びと悲鳴が上がる。


「聞け…呪いは、重ねられない。だから、お前たちに別の魔法をかけよう。生き直せ、その姿で。」「….po……..eta……en..」「….po……..eta……en..」


男たちの姿は、年老いた女性に変わった。自身の変化に気が付いた2人は狂気の悲鳴をあげた。


「はは…ははははは…!」


その悲鳴を聞いて、猫くんは笑った。

冷たい笑い。地の底から響くような声。


わたしは、ただ後悔した。

可愛らしかったはずの黒猫の姿は、もう化け猫にしか見えなかった。


黒猫は、わたしに一歩近づいて来た。

でもわたしは、逆に一歩下がってしまった…。


猫は、猫くんは私の心の変化を感じ取ったらしい。そこで止まった。


「…この世界は平和なのだな。私の居た世界とは大違い、羨ましい限りだ。この300年、悪人どもやら魔物やら、何百人も殺した。何千匹も殺した。」


「もう、お前の前には現れん。そんなに怖れなくていい…チキンは、旨かったぞ。感謝する。じゃあな、美しい娘。」


猫くんの背中に、美しい鳥の翼が生えた。


「ちょっと待っ…!」



緑がかった黒猫は、わたしを振り返ることなく、空に消えた。


――――――――――


 ――あの子は、人を殺したことがあるんだ…。


ゲーム資料やらネットで調べた結論は、<使い魔>。

悪魔の使いなのか、恐ろしい魔法使いの弟子なのか。


頭の中をぐるぐるぐるぐる回る、消えない映像。


助けてくれた。 殺そうとした。 止めなきゃ、きっと殺してた。


そういえば、性別確認で叩かれた時も爪を出さなかった。


おいしそうにチキン食べた。 殺そうとした。 人を傷つけた。


最後には、あの二人の人生を実質上減らしてしまった。


殺そうとした。 可愛かった。 怖かった。 楽しかった。



「お前は昨日のことを忘れている」


あの2人の男を忘れるなという意味じゃない。昨日の怖ろしい自分を忘れていると言ったんだ。



 猫くん―――。わたしは、想像する。


きっと猫くんは、使い魔として、主に命じられるまま、罪を重ねてきたんだろう。


正しい生き方を「羨ましい」と言ったあの子は、本当は優しいに違いない。


…可哀そう。


わかんないけど。

会わなきゃいけない気がする。 探さなきゃ


でももう、あそこには帰って来ないといった。


どうすれば、会える? どうすれば…いい?


会って、何を言うの?


男の子フッた後で会うより、悩む。


―――――――――――


 …それから、1週間。


わたしの学業ははかどらず。ずっと心に何かひっかかる。


いつでも、黒猫の姿を探してる。



 講義中だけど、スマホを眺める。


「…来た!」


待ってた!嫌だけど顔出した甲斐があったよ!偽情報バッカで腹立ったけど!



「すみません、早退します!」


わたし、講義を抜けて走り出す。


あぁ、パパに頼んで免許取れば良かった!18なんだからさぁ!



――――――――――


 息を切らせて、3時間かけて、祈るような気持ちで。

…いや、祈りながら。


わたしは中央区、郊外の大きな公園を走る。

走りすぎて、喉が痛い。運動不足を呪う。


冬には水の抜かれる大きな池のほとり。


木製、茶色の暖かい色をしたベンチに。



「…猫くん」


緑がかった黒猫は、寝転がりながら、一瞬キョロキョロした。


「猫くん!」


猫が跳ね起きた。


「呆れる。こいつは大した奇跡だ。どうやってここを見つけた。」


わたし、泣いてしまった。泣きながら抱きしめた。



「…私が怖くないのか?」


「ゴメンね…恩人を酷い目で見ちゃったよ…ゴメンね…」


「…良いんだ。当然の反応だ。もう泣くな」



わたしは、涙を拭いて、スマホを見せた。


「これで見つけたよ!現代科学の魔法!」


「ほお…?」


「猫くんを撮影しておいて良かったよ。緑がかった濡れ羽色で、指輪を着けた猫なんてキミしかいないでしょ。」


ホントは、偽情報ばかりでうんざりだった。中には、情報あるから会おうとかナンパまで。でもひとつだけ。そっくりの写真が来たんだ。今日!



「遠見の水晶で私の居場所を見つけたのか…?大したものだ。」


「猫くん、行こう。わたしと一緒に帰ろう。この世界の生き方を、わたし教えてあげるよ!」


猫くんは驚いた顔をした。


「お前が思っているより、私は残忍で凶悪だ。私の住んでいた世界は、闇だ。オマエとは違う。私は危険すぎる。汚すぎる。」


「あはは~、自分で自分をガチ闇とか言う子、マンガ以外で初めて見た!でも大丈夫、わたしは、人…猫を見る目は確かなんだよ!」


「猫くんは悪い子じゃないと、わたし思う!違う世界で罪を犯したなら、この世界では償って生きてよ。生き直してくれればいいよ!魔法なんて、この世界では誰にも裁けないから。自分で裁いて正しく生きてよ!」


「「生き直せ」って、この間、あなたが使った言葉でしょ…?」



「私の10分の1も生きていない小娘が、聞いた口を…。」


「でた!おじさんポイ理論!」



「…私は神速の吟遊魔術士。大陸中から怖れられた者。そんな肩書も、この未来的な文明の世界では無意味だろうが…。」


わたしは、猫だらけ王国を一瞬想像した。

ぶんぶんと首を振る。王様の膝に乗る黒猫にチェンジ。



「…我が名は…レテネージ・メイフィールド…神速の吟遊魔術師…平たく言えば、魔法使いだ。」

「ん?」

「お前の名は…?」


「芽唯流。めいるだよ。菱川芽唯流。よろしくね、猫くん!」


「お前は人の話を聞いているのか!? 今、名乗っただろう!」


「さぁ、このリュックに入って! わたし、寮生だから!ばれたら死ねるから!」


取り合えず、リュックに押し込む。虐待じゃないの。うん。


「神速の吟遊魔術士たる私になんという扱いを…!」


「黙ってなさい中二病ネコ!」



「…言葉の意味は分からないが、非常に腹立つ!」


「あはははは~!行こう!わたしと!猫くん!!」



――これが、私と猫くんの出会い。


わたしの未来を変えた出会い。



―続く―


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