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魔法使い、猫くん  作者: なぎさん
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第11話 「猫くんと呪いの指輪」前編

転移モノ、ローファンタジーです。

人目を忍び猫の姿で異界を彷徨っていた魔術師と、彼を猫と勘違いし拾った女子大生の物語。


ある闇キャラを自負する少年の拾った指輪は、本物の呪いの指輪。次々と重くなる呪いに立ち向かう芽唯流と猫くん。


第11話前編です。 TRPG、RPG好きな方、お時間のある方、お暇つぶしに。

第11話 「猫くんと呪いの指輪」前編



 俺は、闇キャラだ。だが、陰キャと言われるのは嫌だ。勿論パリピにも陽キャにも慣れない。クラスの上位メンツにはとても入れやしない。


 ハッキリ言って、半分以上には嫌われている。と言っても、ちょっと中二病セリフを時々決めるくらいだ。趣味がダークだとかで、共感してくれる奴も少ない。実際にはちょいホラゲーマニアで、ホラー映画好きで、オカルト好きって程度なんだ。世の中にはもっと変なのがいっぱいいるだろ?あ、当然、服は何であれ上下黒なんだ。漆黒さ。



 そんな俺があの人と運命の出会いをしたのは数日前。秋深く、落ち葉が舞う季節とかいう、俺には不似合いな映画っぽい場面で、登校中にその人とすれ違った。


最近うちの女子もやってるような、前髪の両端を長く伸ばし、後ろは背中まである長めの緩やかなウェーブの髪。マンガ雑誌の表紙かと思うほど綺麗で、背も俺より高い。165以上あるんじゃないの。モデルさんかな!マジやべえて!!一撃で闇キャラですら夢見てしまった。


モデルさん(勝手に推測)は、黒猫を抱えていた。珍しい色の黒猫だ、と一瞬は思ったが、猫よりこの激レアな綺麗すぎるおねーさんの方を見ていた。


知り合いでもないのに、「こ、こんにちは」と言ったら、おねーさんは俺に「こんにちは」と綺麗な声で返してくれた。綺麗な人は声まで綺麗なのかよ!ハイスペックどころじゃねえよ!


すれ違った。俺が見続けていたのと同じように。振り返って、猫が俺を見ていた。


なんか、鋭い目だった。



 朝の会が終わると俺は、小指のバンドを外し、数少ない仲間達に指輪を見せた。


どうよ、コレ。この前、川釣り親父と行ったときにさぁ、川沿いの草むらで拾ったんよ。

ボロボロで古臭くて、闇っぽくね!?


「え、それ警察届けなくて良いのかよお前?」


「高価な奴だったら普通に捕まらね?知らねえぞオレ。」


友人の評価はイマイチだが俺は気に入っちまった。闇キャラたる俺に相応しい!!大体、こんなボロ指輪に価値なんてあるもんかよ。



――おっと、チャイムだ。


指輪は、再びバンドで隠す。先生方は、ケガに対しては何一つ言わないもんさ。


ちなみに、この日、授業はまるで身に入らなかった。

おねーさんの美貌が目に焼き付いて離れない。やべ、初恋じゃね?



 6限目も。窓がわの6列目というVIP席に座る俺は、窓の外の秋の風情も何もねえ桜を見ていた。


…黒猫が、そこに居た。あのモデル姉さんの猫じゃね?色が…緑っぽい黒。


猫が、俺をじっと見ていた。


――――――――――

 さて、この日の夜は、昼の天に上るフワフワした気持ちと打って変わって最悪だった。


それは、夜中にスマホでゲームやってんのがバレたからだ。


 父さんは、いろんな所に連れてってくれるし小遣いも多めにくれるが、アウトドア好きで俺は正直ついて行けないところがある。先日は寒い中、面倒だけど着いてったおかげでこの指輪が手に入ったわけだけど。


そんなわけで、スマホの面白さに理解は乏しく、時間内でないとやらせてくれない。


母さんは、普段優しいけど、ルールにうるさい。ちょっとぐらい良いじゃん、て思うところもダメという。人生そんなカチカチでどうすんのさ、と思うよ俺は。



 そんな2人に見つかっちまったので、散々説教された上、スマホを取りあげられた。俺はむちゃくちゃ反抗した。さすがに暴力はしなかったが。悪口は言った。ちなみに、バレた原因になった姉ちゃんにもだ!


俺は、怒りに任せ、3人に対して指輪を向けたんだ。


「邪眼の主たる我が命ずる!父さんと、母さんと、姉ちゃんに、ど派手にバチを与えよ!呪いあれ!!」

階下の2人に。隣部屋の姉ちゃんに。聞こえるように、叫んだ。


――――――――――


 さて、この後の初日は実に愉快だった。


父さんは朝、痛烈なこむら返り…足がつって叫んでいた。


母さんは、タンスの角に足をぶつけ叫んでいた。


姉ちゃんは、眉を切りすぎて叫んでいた。


俺は大爆笑だ。いい気味だ。マジで呪い発動したか!?あははは!



 スマホの怒りは収まらないが、若干留飲を下げ、俺は学校へ向かう。


登校中に、またあのモデルお姉さんが居た!


昨日は自分のことで手いっぱいで気が付かなかったが、登校中の男子生徒はみんな、モデルお姉さんが気になってしょうがないようだった。


昨日、声を掛けたんだから今日だっていけるはずだ!

俺は勇気を振り絞る、という闇キャラらしからぬアクティブさを発揮した。


「こ、こんにちは!」


「こんにちは、あの、ちょっといいかなキミ…。」


「え!?はいどうぞ!!」おおおお、まさか恋の告白か!?


「キミの指輪。それが良くないものだってトモダチが言ってる。捨てたほうがいいかも。捨てられたら、だけども。」


「なぜ指輪のことを…お姉さん占い師ですか!?」


「いや違うけど、うん、まぁ…あとは猫くんが…ゴメン、変な話してごめんね!」


お姉さんはそそくさと去って行ってしまった。もうちょい話したかった。



 今日も、お姉さんに会ってしまった。朝は、学校でも噂になっていた。これはもう、ワンチャンあるんじゃね!?


―――6限目。


 桜の木に、猫が居た。あの色。お姉さんの猫。じっとこっちを見ている。俺を見ている。見透かされているような気がして不愉快だ。


俺は、父さんたちと同じように、猫に向かって呪いをかけてみた。小さな、小さな声で。

「邪眼の主たる我が命じる、あの黒猫に災いを!」


次の瞬間だが、猫の周りで光の輪のようなものが、ボっと一瞬浮き上がったように見えた。

気のせい…なのか?


猫は…猫の癖に、ニヤリと笑った気がした。無駄だ、そんな風に言われた気がした。



 どうせ帰ってもスマホが無いんじゃつまんねえ。


が、家の中はパニックだった。


姉ちゃんは、不審者に会ったって泣いてた。無事に逃げたらしいけど。

母さんは、包丁で深めに指を切った。血は止まったそうだけど。

父さんは、帰りの自転車で転び捻挫していた。平気だと笑っていたけれど。


俺は、2階の部屋に入り、少し笑った。

笑ってから、だんだん、怖くなってきた。


だって俺、一回しか呪ってないよ?え、マジ呪い?そんなわけないか、こんなボロ指輪で。


指輪を外そうとする。

何だ?取れない。食い込んでる。何故取れない?


ペンチを持ってきた。隙間に挟もうとするたびに、何故か指輪はきつくなって、血が止まるような痛みになってきた。ドライバーを差し込もうとした。もう、そんな隙間なく肉に食い込んで紫色になってきた。


バカな!そんなバカな!嘘だ!嘘だろう!!俺の拾ったこの指輪!本物!?呪いの指輪!?


「捨てられたら、だけども。」モデル姉さんはそう言ってなかったか?まさか!まさか!



俺の頭じゃ考えても考えてもわかんねえ。冷静になれ。明日の朝、病院へ行こう。指輪を外してもらおう。

母さんに頼んで、連れて行ってもらおう。そ、それしか俺にできるわけないし!



―――朝。


 俺が起きて、飯を食って母さんに話しかける前。


朝、完全に紫色になって腫れあがっていた指を見せようと思ったその少し前。母さんはゴミを出しに行った。

外で、キキィー!っという車の急停止音と、鈍い、ドン、という音が聞こえた。

俺は、父さんは、姉さんは真っ青になって飛び出した。


車に接触した母さんが、足を押さえて呻いていた。


かあさーん!!


幸い、意識はあった。足を痛そうに抑えながら呻いていた。


ゴメン!ゴメン!!俺の、俺のせいだ!!


救急車に、父さんが乗る。父さんの指示で、姉さんと俺は学校を休んだ。


姉さん、帰ったらいくらでも謝るから、家から一歩も出ないでくれ、姉さんは呪われているんだ。頼む、火も使わないで、お願いだ!


俺は泣きながら姉さんに願いを伝え、ほんの少しの決意を胸に、忠告をくれたモデルお姉さんに会いに走った。



――続く。


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