表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使い、猫くん  作者: なぎさん
12/56

第7話 「猫くんと心を読むマモノ」後編

転移モノ、ローファンタジーです。

人目を忍び猫の姿で異界を彷徨っていた魔術師と、彼を猫と勘違いし拾った女子大生の物語。


過去に思いをはせる猫くんの前に、亡くなったはずの妻の姿が。


第7話 後編です。 TRPG、RPG好きな方、お時間のある方、お暇つぶしに。

第7話 「猫くんと心を読むマモノ」後編


――――――――――


 黒猫の姿で駆けながら、私はリュカに言わなかった不安を思いめぐらせる。


 さっきの魔物は一体だけなのか。一体しか<来なかった>のか。スライム系なら増えはしないのか。


そもそも、私を襲ったのは偶然か?狙いがあるとするなら、何だ?。


魔力が欲しいか、私を知るものが操っているか。


あれだけ精密に化けられるなら、今すれ違った子どもすら疑わしくなる。


…怖ろしい。


何もかも疑わねばならないほど、怖ろしいものは無い。


芽唯流は無事なのか?



 ―――いつものタコ公園に駆けつける。

ベンチは空だ、私の方が早かったらしい。


昨日の芽唯流を思い出す。


サンドイッチ、だったな。フライドフィッシュサンドの。

私を隠し連れ歩くための不似合いに大き目のリュックを背負って。



 …ああ、来た来た。

芽唯流が小走りにやってくる。無事だったか。


だが。


私は判っていた。ニセモノだと。

マモノも、今気づいただろう、バレている、と。


走りながら、不自然に芽唯流の体が透けはじめ。緑色に変わる。そして私に向かって真っすぐに襲い掛かってきた。


「障壁」「障壁」「障壁」


スライムは私の意図を悟り隙間から逃げようとする。


「障壁」「吸引」「障壁」「障壁」「障壁」


判っていようが、読まれていようが、私の速度に勝てなければ逃げることは出来ない!

間に1つ挟んだ吸引の魔法は、科学番組で観た<ブラックホール>を知ることで新しく作った重力の呪文だ。


立方体に閉じ込められたマモノは。芽唯流っぽい姿をしたまま。壁に顔を近づけてくる。


「ソウカ、朝と、服がチガッタのだな…ヨクキガツイタモノダ魔術師」


こいつ、知能があるのか!


「フ、ハハ、怖レロ、もう、お前ニ安寧はナイ。誰ガ、人ではナクナッテイルカ。ウタガエ!怖れロ!ソシテいツか、ソレハ本当ニなル。」


芽唯流の顔をしたスライムは、ぐしゃぐしゃに表情を崩して笑った。

…芽唯流は大笑いしている時でも、もっと美しい。失敬な奴だ。


そして、私の心をまた読み取ったのか


「その女モ!」


「いつの間ニカ、我々にナッテ居るかもナ!?」


私は―。

私は、心から安心して、ホっと息をついた。


「アァ?」


ニセ芽唯流は私の心が一瞬、理解できなかったらしい。心から感じた安堵の理由を。


「お前に知識があってよかった…本能だけで動く生き物だったらと思うと怖ろしいよ」


「魔法デ周囲の悪意ヲ常に感じ取レル?ソんナ魔法ガ?」


「…魔法には随分無知なんだな」



「火炎結晶!」「次元跳躍!」


私は、笑った。心から、笑ってやった。


…伝わってから、死んでくれるといいな!


「悪意感知…永続」「魔力感知」「邪悪感知」


これらの感知魔法は、今夜、一つ位は芽唯流にも掛けてやろう。


ちなみに、全ての俗に言うバフが永続化できるわけではない。まず、高位の魔法は永続化できないし、数も限られる。魔力の効果同士が干渉してしまうためだ。だが、このような事例が起きては感知魔法を一つは永続化すべきだろう。これで、今、私にかかっているバフは3つ。


私は上空に舞い上がり、今唱えた 呪文の範囲を一気に広げた。


…さっきのマモノは…北西に、もう1匹いる。


上空から飛来する黒猫の悪意を、そいつは一体どのくらいの距離から読み取るだろう…楽しみだ。


私はハヤブサのように急降下し、少年の姿に擬態したソレに向かった。


…今度は私が狩る側だ。


――――――――――


「猫くん、はい、今日は玉子巻きです」


「………」


「…だけだと文句言われそうなので、ウインナーもあります」


素直に両方出せば良いのに、何故1クッション入れてくる?

おまけに、私はフォーク苦手なのに、わざわざ刺して寄越す。


何を企んでいるのだ?


いいや、もう、素手だ。両手持ちだ。こちとら猫だ。


「猫くん、美味しい?」


私の為に毎日食事を用意してくれているのだ。たまには謝意を伝えておこう。


「心を込めて作ってくれたものは美味しいに決まっている。」


「ぷぷ、何その無理して褒める新婚の夫っぽいセリフ!?」


…猫の顔でよかった。失敗した。恥ずかしすぎる。



それから、芽唯流は私を膝に乗せ、


「んで、ゴメン。それも安定のコンビニ。」

と言った。



こいつ、<悪意探知>で反応するんじゃないだろうか。



…何か、試されているような…気もする。



続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ