2.少年の事情と、置かれた状況。
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「……それで。ルゥは冒険者になりたいのに、どうしてここへ?」
「は、はい……」
店仕舞いを済ませてから、俺はルゥと名乗った少年の話を聞くことにした。
冒険者になりたいということだったが、それでどうして俺のもとを訪ねたのだろうか。普通であればギルドの受付に向かって、必要な書類に記入するだけのはず。どう考えても、彼の行動はチグハグになっていた。
そんな感じに俺が首を傾げていると、ルゥはうつむいて話し始める。
「見ての通り、ボクは貧困街の出身なんです。それで――」
「うん」
「…………」
俺は一つ頷いて、続きを促す。
すると本当に、彼は心の底から困った様子で言うのだった。
「実はボクにはその、自分の籍というのがなくて……」――と。
それは、想定外の事態だった。
あまりのことに驚き、俺とアリスは互いに顔を見合わせる。
「籍が、ない……?」
「それってつまり、王都に住んでるのに証明ができない、ってことか」
「……はい、そうなんです」
そして各々にそう訊くと、少年は申し訳なさそうに頷いた。
俺はそこまで聞いてようやく、ルゥの抱えている問題を理解する。たしかに冒険者登録をするには最低限、王都に住んでいるという証明が必要だった。
仮に貧困街出身であろうとも、さすがに籍がないということはあり得ないはず。
だからもし、少年にそれがないのだとすれば――。
「えっと、ルゥさん。それって、どうして――」
「アリス。それは訊いたら駄目だ」
「――え?」
「………………」
そこまで考えて、俺はアリスの問いかけを遮った。
おそらく彼女は籍がない理由、その可能性に気付いていないらしい。俺もまさかと思っていたが、ルゥの反応を見る限り間違いはなかった。
つまり、ルゥの両親は――。
「そう、か……」
かつて罪人として裁かれた、ということ。
このガリア王国では、大罪を犯した者の権利の多くが制限される。それにも程度があるのだが、子供の籍すら剥奪されているということは、かなりの重罪であったと思われた。
馬鹿げた決まりだ、とも思う。
だがしかし、不完全とはいえ制度は制度。
ルゥに罪はなくとも、いまはそれに従うしかない。
「それなら改めて訊くけど、どうして俺の店に?」
「あ、はい……!」
事情はあらかた理解できた。
だが、本題はここから。
俺が訊ねると、少年はうつむき加減の顔を上げて言った。
「実はまとまったお金があれば、冒険者登録できるって言われて……!」
「なんだ、それ……?」
必死なルゥに対して、俺はひどく怪訝な声を発してしまう。
だってそんな話、今まで一度も聞いたことがなかったのだから。金を払えば王国の制度を無視して、冒険者登録が可能になるなんてあり得るのか……?
「ちなみに、それは誰に言われたんだ?」
「え、えっとその……」
「言えない、か」
あまりに不自然な話だったので訊ねると、ルゥは口ごもってしまった。
どうやら、この話には何かしらの裏があるのだろう。
俺はその可能性を考えて、正直悩んでいた。
「あ、あの! もう力になってくれそうなのは、ここだけなんです!」
すると少年は、不安を隠せない声で叫ぶ。
そして、こちらに深々と頭を下げて懇願するのだった。
「代金は必ず、頑張ってお支払いします! だから、お願いします!!」――と。
俺は、そんな彼の姿を見て。
しばしの間を置いてから、一つ覚悟を決めて答えた。
「分かった。だけど先に少し、俺の手伝いをしてほしいんだ」
「え、お手伝い……ですか?」
それに対して、次に首を傾げたのはルゥとアリス。
二人は顔を見合わせて、不思議そうな表情を浮かべるのだった。
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