1.新しい顧客。
(*'▽')ここから第1章。
――新人冒険者がドラゴンを討伐した話は、次第に広まり始めた。
だが、その新人というのが弱冠十二歳の少女だ、ということが疑惑の種となっているらしい。件の少女ことアリスは一所懸命に、俺の作製した罠を宣伝してくれてはいた。それでもやはり、なかなか信用を得るには至っていないのが現実だ。
「うぅ、すみません……カイスさん」
「気にすんなって、アリス。そんな簡単にいくなんて、思ってないさ」
そんなわけだから、アリスにはずいぶんと難しいことをさせている。
俺の方もそれは理解しているから、謝罪にきた彼女に強く言うことはなかった。だけど問題はアリス本人が、俺の力になれないのを嘆いていることである。
どこまでも真っすぐな性格をしているのだろう。
アリスは店内の隅にある席に腰かけ、思い切りテーブルへ突っ伏していた。
時刻も夕方に差し掛かって、客足も少なくなっている。
そのため、彼女と今後について相談する良い機会ではあった。
「……ところで。その後、クエストは順調なのか?」
「あ、アタシですか?」
ひとまず、アリスの現状について確認しておこう。
そう思いながら紅茶を淹れて、少女の前に優しく置いて訊ねた。
「アタシの方は順調ですよ。……でも、ギルドの職員さんも心配して下さっているのか、あまり大きな依頼は貰えないんです」
「あー……そりゃ、易々とはいかないか」
「前回のドラゴンについては、イレギュラーな遭遇、ってことらしいです」
「……ふむ」
それについては、俺も少し気になっていたことだ。
通常アリスの行くようなダンジョンには、弱い魔物しか出現しない。それは迷宮ごとに魔素の濃さが異なるからで、強い魔物ほど多くの魔素を必要とするのだ。
だから、本来ドラゴンは生存できるはずなく……。
「まぁ、いまは考えても仕方ないか」
「あのー……」
「ん?」
などと考えていたら、ふいに他の客から声をかけられた。
アリスと一緒になって声のした方を見ると、そこにいたのは気の弱そうな少年、だろうか。ボサボサの黒い髪に隠れて、その顔立ちはハッキリとしなかった。
それでも、着ている服からしておそらくは男の子だと思う。
「どうした。キミも冒険者なのか?」
「あ、いえボクは……」
とかく新しい客だと考え、俺はそう訊ねた。
すると彼は、おっかなびっくりな声色でこう答える。
「冒険者に、なりたいんです……!」――と。
俺とアリスは顔を見合わせる。
そして、小さく首を傾げるのだった。
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