2.明と暗。
ここまで導入(*'▽')
可能なら、あとがきもお読みください。
――一方その頃。
「くそ、どうして俺たちがこんな魔物に……!?」
「あり得ない、どうして!?」
カイスがかつて所属していたパーティーは、危機に陥っていた。
それもそのはず。今まで彼らがSランクの地位に立っていた理由の大半は、カイスの仕掛けていた罠によるところが大きいからだった。
だが、周囲をマトモに見ようとしない彼らは知る由もない。
そして何故、自分たちの力が通用しないのかを理解しないまま。
ただただ無様に、敗走するしかないのだった……。
◆
「あの、カイスさん!!」
「アリス? ……あぁ、どうだったかな。俺の作った罠は」
営業初日を終えて、俺は店仕舞いを始めていた。
アリスが大きく肩で息をしながら駆けてきたのは、そんな頃合い。いったいどうしたのかと思ったが、それよりも自身の作製した罠の効果が知りたかった。
だから、そのように訊ねたのだが――。
「今日は本当にありがとうございましたっ!!」
「え?」
何やら勢いよく頭を下げられて、思い切り困惑してしまった。
そして、同時に差し出されたものに視線を落とすと、そこにあったのは……。
「な、なにこれ……?」
「ドラゴン討伐の魔素結晶で貰った報酬です!」
「……ドラゴン?」
とても大きな麻袋に入った大量の金貨。
具体的な枚数は不明だが、冒険者時代に得られる稼ぎを大幅に超えるものだった。――というか、アリスはいま『ドラゴン討伐』と口走らなかったか。
もしそれが本当なら、少なくともAランク以上……いいや、単独討伐だとすればそれ以上の偉業に違いなかった。
「ア、アタシの力じゃないんです! カイスさんの罠が、とにかく凄くて!!」
「いやいや、それはないだろ……?」
「本当ですって!?」
あまりのことに俺自身が信じられず否定すると、さらに重ねて否定される。
そしてグイっと詰め寄られ、金貨の入った麻袋を押し付けられた。
「これは感謝の気持ちなので、受け取ってください!」
「いや、それはできないって!?」
「どうしてですか!!」
アリスは何故か、少し怒ったように言う。
どうやら新人冒険者らしさが出ているようだった。なので俺は、曲がりなりにも元先輩冒険者として簡単に解説する。
「えっと、な。ギルドからの報酬の使途には取り決めがあって、曖昧な受け渡しはできないんだよ。これは隷属防止制度って言うんだけど……」
「じゃあ、どうしろって言うんですか!!」
「なんでキレてるんだよ!?」
しかし少女はプンプンと怒りながら、抗議を続けてきた。
思わずツッコみを入れつつ、仕方なしに俺は考える。
「あー……そうだ。それなら、罠を買って行ってくれよ」
「え、お買い物ですか?」
「そうそう」
そして提示した落としどころは、こんな感じ。
「俺の店の罠を使って、他の冒険者に宣伝してくれ。それだったら互いに得のある話だし、違反にはならないと思うんだ」――と。
それというのも、要するに俺の作った罠の『広告塔』になる、ということ。
彼女の言葉が本当なら、信じ難いが俺のそれはドラゴンを倒したらしい。だとすれば店としても、今後の営業を考えれば良い謳い文句になった。
そんなわけで、俺が提案するとアリスは満面の笑みを浮かべる。
そして、こう言うのだった。
「それくらいなら、お安い御用です!!」
彼女の気持ちの良い返事に、俺は頷く。
そうとなれば、問題は綺麗に解決されたはず。
そうして、俺とアリスは簡単な契約を結ぶのだった。
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