1.カイスの作製した罠。
(*'▽')そおい、更新。
そして、数週間後。
簡素ながら、俺の店【トリック&トリック】は始まった。
店名については何も考えつかなかったので、適当に決めたものである。しかし語呂も不思議と悪くはないし、なんとなくだが気に入っていた。
――で、肝心の客足はといえば。
「あの! これって、どのように使えばいいのですか!?」
「あー……それは、魔物の脚部を拘束するんだけど……」
物珍しいこともあってか少ないものの、狙い通りの顧客層は来店しているようだった。店を訪れる冒険者たちは誰も彼もみな、一様に目をキラキラと輝かせている。
いま声をかけてきた少女だって、分かりやすいほどに新人冒険者だった。
アリスという名の彼女は、まだ十二歳だという。
詳しくは知らないが家族を養う必要があるらしく、先日ギルドに申請して冒険者になったらしい。銀色の髪に青の瞳、腰にはやや頼りない短剣を携えていた。
このような少女が戦いに向かわなければならない、という環境が気にはなる。だが俺はあくまで外部の人間として、彼女にアドバイスするに留めるべきだ。
そう考えつつも、少しばかりサービスをすることにした。
「それだったら、同じように地面に設置する罠でもっと良いのがあるよ」
「もっと良いの……ですか?」
「あぁ、これなんだけど――」
◆
「えっと……これをこっちに置いて、あとは……」
――その後、ダンジョンにて。
アリスはカイスから貰い受けた罠を設置し、確認を行っていた。
彼曰く、この罠は誰でも簡単に上級魔法を行使することができる特別なもの、らしい。もっとも新人冒険者である彼女には、その凄みなど理解できようもなかった。
そのため、いまはとかく言われた通りに作業をしている。
「よし、これでスライムも狩れるかな?」
そして、意気揚々と頷いた。
その時だ。
「え、なに!? どうして、こんな階層に――ドラゴン!?」
地鳴りが響き渡り、現れるはずのない巨躯が出現したのは。
ドラゴンは咆哮を上げて、少女に向かって歩みを進めた。
「い、いや……!」
アリスは完全に腰が抜けて、そのドラゴンを見上げる形となる。
もはや、逃げ場などない。
絶体絶命。
ここまでか、と思われた瞬間だった。
「……え?」
――業、という音と共に。
ドラゴンの身をも上回るほど巨大な火柱が、その場に立ち昇った。
それは瞬く間に、彼の竜の身体を焼き尽くしていく。そしてアリスが思わず顔を覆った時にはもう、巨大ドラゴンは消し炭となっていたのだった。
残っているのは、魔物を倒した証拠として残る魔素の結晶だけ。
「す、すごい……!」
少女はそれを手にして、呆気に取られたように立ち尽くすのだった。