【本編第二部】 #4 神の試練
別サイト連載版との兼ね合いの関係で、ここから拙作
『物語はゲームオーバーから始まる ~死神と呼ばれた勇者は最強の魔女と出会い、再び魔王討伐の為立ち上がる』
(https://ncode.syosetu.com/n4992il/)
のキャラが登場してきます。
知らなくても特にストーリー上問題有りません。
気づけば、辺りの様子は変化していた。
大樹の有る丘では無い、どこか違う世界。
白を基調とした、天に浮かぶ浮遊島。
きっと、ここは神の世界――天界。
そこで、俺は神ラプリエルと対峙する。
「――『ファイアボール』『形状変化』」
俺は両の手に作り出した浄化の炎球の形を変え、身体へと纏う。
炎の鎧でその身を堅め、拳を握る。
シモン戦でも使った、最近編み出した新しい魔法の合わせ技だ。
「――この感じ、懐かしいわね。かかって来なさい」
神ラプリエルは『結晶』の魔法で槍を作り出し、構える。
その構えは、かつて見たメカクシ――神ラプラスを想起させる。
彼もまた、槍を使い戦っていた。
「はあああっ!!」
俺は炎を纏った拳を振るう。
しかし、ラプリエルはまるで俺の次の手が見えているみたいに、その全てを悉く槍で受け、躱す。
いや、実際に見えているのだろう。
「なるほど。メカクシの姉――未来を見通す、か。だが――」
だが、その対応速度が思っていたよりも遅い。
そして、槍を振るう攻撃。その動きの、パターンが少ない。
やはり、ラプリエルもまた魔女なのだ。
こうやって接近し、近接戦闘に持ち込めば勝機はある。
めちゃくちゃな『身体強化』を重ね掛け。
さらにギアを上げて、手数を増やす。
「くっ――」
少しずつ、追い付く。
未来を見る神に、追い付く。
おそらく、ラプリエルが見られる未来は数秒先、直近の物だけだ。
遠い未来まで見通せるラプラスの真実の目とは、真逆。
そして、俺はこの打ち合いの最中、ラプリエルの手の内――攻撃パターンを見続けていた。
それを全て記憶し、対応する。
ちょっとした特技も、この限界状況の戦闘で、研ぎ澄まされる。
そして、幾度かの打ち合いの末――、
カンッ――。
ついにラプリエルの槍を弾き飛ばす。
俺の炎の拳は神へ、そして未来へ、届く――。
しかし、俺の拳は空を切り、ラプリエルの身体は霧散して行く。
攻撃が不発に終わった事を悟り、咄嗟に俺は飛び退く。
そして、その散った霧が再び集まり、新たに構築された時には、別の姿を成していた。
「――あん? お前、勇者――じゃあないな。誰だ?」
背は低くほっそりとしている、銀の長髪の少女。
大きな帽子、黒と赤を基調とした胸元が大胆に開いた大人びた服装、ミニスカートに黒のストッキング、そして手には杖。
その様相は、如何にも魔女らしい装いだ。
「シータ、その子の相手をしてちょうだい」
気づけば、ラプリエルは空の上に立っていた。
「なんだよ師匠。オレの幻影を呼び出すなんて、寂しくなったのか?」
ラプリエルの事を師匠と呼ぶシータと呼ばれた少女は、師に対しても挑発的な態度をとる。
幻影――つまり、『霧』の魔法により産み出された存在。
「馬鹿言わないで」
「はいはい。――と、いう訳だ。悪いな、師匠の頼みだ、死んでもらうぜ」
シータは、杖を構える。
俺もそれを見て、臨戦態勢を取り直す。
「異世界人さん、あなたにはチャンスを――試練を与えるわ。わたしの作り出す“幻影たち”を倒して見せなさい」
「そうしたら、俺を認めてくれますか」
「さあ? でも、考えてくらいはあげるわよ」
そう言って、ラプリエルは『転移』で姿を消した。
「――『支配』の魔女、シータだ。行くぜ」
「――ただの魔法使い、アルだ」
「聞いてねえよ」
それを合図に、シータは魔法を振るう。
シータが杖を振るえば、辺りからは数匹のカラスの魔獣が現れる。
そして、その中に一際大きな、龍の体躯程もある大型のカラスにシータは飛び乗り、飛翔。
飛び上がると同時に、小型のカラスの群れが俺の方へと襲い掛かって来る。
「――はぁっ!」
俺はカラスを蹴散らそうと炎を纏う拳を振るう。
しかし――、
「鳴け! ピーコちゃん!」
シータはがそう言うと、シータを背に乗せる大型のカラスが『ピェェェェ!!』と奇声を発する。
同時に、小型のカラスの群れは『爆発』。
俺はそれに巻き込まれて吹き飛ばされ、壁に全身を打ち付け、がらがらと瓦礫が落ちる。
この戦い方、知っている。
これはかつて戦ったエルフの老人、宮廷魔導士が得意としていた『獣使い』による魔獣の操作と、『爆発』の魔法を組み合わせた自爆特攻攻撃だ。
俺はかつての戦いを思い出す。
「おいおい。師匠がわざわざオレを呼んでから期待したが、この程度かよ」
シータが挑発的な声を上げ、杖を指でくるくると回し、余裕を見せる。
俺はその隙に体勢を立て直す。
「――逃がすかよ!!」
そこに、再びシータが小型のカラスをけしかける。
しかし、それ同時に俺は指を鳴らし、『フラッシュ』の魔法を発動。
「うおっ、まぶしっ……」
シータだけでなく、全てのカラスの魔獣はその目をその眩い瞬きに焼かれ、体勢を崩す。
シータと魔獣たちに出来た、大きな隙。
そこにすかさず、辺りの瓦礫や岩に『物体浮遊』の魔法をかけて、直線軌道の指向性を与え、放つ。
『物体浮遊』の弾丸――大きな瓦礫は、もはや大砲だ。
それが、大型のカラスーーピーコちゃんを撃ち抜く。
「くそっ……」
背に乗っていたシータは落下。
辺りに跳んでいた小型のカラスも、小さな瓦礫の弾丸に撃ち抜かれ、四散。
辺りに土煙が立ち込める。
俺は『身体強化』をかけた肉体で地を蹴り、倒れ伏すシータへと接近。
「終わりだ」
俺は拳を振るう。
「へっ……なかなかやるじゃねえか」
そして、そのまま俺の拳がシータへと触れれば手ごたえも無く、その身体――幻影は霧散した。
最後に、捨て台詞を残して。
「――シータ、お疲れさま。じゃあ、次よ」
しかし、どうやら神は俺を休ませてはくれない様だ。
俺が疲弊し、限界が来るのが先か。
それとも、神の作り出す幻影を全て倒し切るのが先か。
これは、そういう勝負だ。
どこかからラプリエルの声がすると、霧散した霧は再び寄り集まり、新たな幻影を作り出す。
「――初めまして、異邦の方。『霧』の魔女、ナナ・スカーレット、参ります」
赤茶色のややパーマがかった髪で深い緑の瞳の、黒い修道服姿の女性。
そのシスターは見た目と丁寧な口調に似つかわしくない煙草を吹かし、どこか気だるげに現れた。
「よろしくね、ナナ」
「ええ、神様。お任せください」
そして、ナナはぽとりと煙草を落とし、足で踏みつける。
それ以外、何の動きも見せていない。
ただその場に、立っているだけ。
しかし、それを合図にナナの魔法が振るわれる。
辺りが霧に包まれる。
そして、その霧の合間にナナの身体が融け込み、消えて行く。
「……見失ったか」
しかし、見えなくても感じる事は出来る。
俺は『魔力感知』の魔法を辺りに張り巡らせる。
――後ろか。
位置を特定するとほぼ同時に、殺気。
振り向けば、帯状の霧の斬撃が飛んでくる。
咄嗟に腕をクロスし防御の体勢を取る。
しかし――、
「無駄ですよ」
「ぐあっ……」
帯状の霧に触れれば俺の身体に纏う炎の鎧が鎮火され、その攻撃を諸に受けてしまう。
水と炎、相性が悪い。
ズタズタになった腕はすぐに『永遠』の不死性によって再生するが、まだズキズキと痛む錯覚を覚えた。
炎は効かない。
ならば、逆の手を打つまでだ。
「――『温度変化』」
俺は正面へと手をかざし、周囲の温度を下げる命令を与えた『温度変化』の魔法を発動する。
広げた手を中心として、辺りを包む霧が急速に冷やされて行く。
気体だった水分は、すべて固体へと変化し、辺りに氷の粒がぱらぱらと落ちる。
そして、霧に包まれ姿を晦ませていたナナが、現れた。
「――お見事です」
ナナは魔法を看破されたことで敗北を悟り、静かに目を瞑る。
俺は拾い上げた氷の粒に『物体浮遊』の魔法をかけ、弾丸としてナナへと飛ばす。
やはり手ごたえも無く、氷弾丸が触れれば、ナナの幻影は霧散した。
しかし、これで終わるはずも無い。
またしても、どこかからラプリエルの声。
「――ナナもお疲れさま。でも、まだまだ行くわよ」
霧散した幻影が、再び形を成す。
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