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【完結】少し遅れた異世界転移 ~死者蘇生された俺は災厄の魔女と共に生きていく~  作者: 赤木さなぎ
第二部

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【本編第二部】 #3 永遠の魔女の一人旅


 西の大陸へと戻って来たエルが最初に訪れたのはアルヴだった。


 勇者像を横目に、本屋や魔道具屋の並ぶ街道を歩いて行き、エレナの家まで来た。

 『転移』で中へと入り、書斎へ。


「ここも、懐かしいですね……」


 一時は住ませて貰っていたエレナの家だ。

 食事を共にした思い出も、そして龍や真実の目について語り合った思い出も。

 沢山の思い出が詰まっている場所だった。


「少し、疲れましたね」


 エルはその日、エレナの家のベッドで眠った。

 と言っても、掛け布団は堅い岩の様になっていたので『空間』から出して薄い毛布を羽織って横になった。


 その日、夢を見た。

 炎。そしてその先に、愛する人の姿。

 

 朝――いや、時間は経過しない世界だから、正確には朝でも夜でも無い。

 しかし、エルは目が覚めたから今は朝だ。

 そう勝手に言い訳をして、気持ち程度に朝食として『空間』の中から最初に出て来たパンを適当に齧る。


「アルさんは、今も戦っているのですね」


 夢を見せたのは、この右目――真実の目だろう。

 自身の半身、魂の片割れのビジョンを、見せてくれた。

 神ラプリエルの妨害が有ったとしても、同じ神の権能であるこの目は時折発動してくれる。


 まだアルと繋がっている。

 彼が生きている事に安心感を覚えつつ、エルはアルヴを発った。


 龍の峡谷。

 もう主である龍の居ない乾いた峡谷。

 野営をして焚火を囲み共にポトフを食べた岩山の上を『物体浮遊』で飛んで抜けて行く。


「ここも、水が有った頃はもっと綺麗な場所だったんでしょうね」


 魔法を使えばこの峡谷にかつての姿を取り戻す事も可能かもしれない。

 全てが終わったら、また来よう。

 そう心に留め、エルは先へと進んで行く。


 ラルフ村の横に在る霊山も訪れてみた。

 しかし、時の止まった世界では少し空間のズレた場所に在る妖精の里には入る事が出来なかった。


「もしかしたら、女王ならこの止まった世界でも――と、思っていたのですが」


 以前に訪れた時にはアルは繰り返しに巻き込まれていたので、あの時妖精の里まで辿り着けたのはエルだけだった。

 そこでアリアという名の妖精女王から『転移』の魔法を授かった訳だ。

 代々女王の名はアリアと言うらしい。

 アリアなら或いはと期待していたが、残念だ。


 そういえば、と思い出す。

 あの時、繰り返しの中で何度かアルが記憶を引き継ぐ場面が有った。

 あれもアルの中にエルの魂の一部が混じり込んでいたからだろう。


 エルは自分の右目に手を添え、魔力を集中させる。


「ううん。駄目ですね」


 しかし、右目は半身のビジョンを見せてはくれない。

 自分の意志でコントロール出来る訳が無いのが、もどかしい。



 霊山を降りて、麓のラルフ村へ。

 かつてはゴーフとラルクの二つの村として分かれていたこの村も、今では間に在った林も切り開かれていて大きな村を成していた。

 その内発展して行けば、国と成る日も見られるかもしれない。


「アンナさんは、どうしてますかね。お子さんも、大きくなっている事でしょう」


 エルは偶にアルを置いて一人でアンナに会う為、このラルフ村へ遊びに来ていた。

 なので勝手知ったると言うと大げさだが、少しは土地勘のある場所だ。

 

 迷いなく進んで、アンナの家――つまりはラルフ村の村長宅へと足を運ぶ。

 ちらりと窓から中を覗けば、笑顔のアンナと、その家族の姿。

 それを見たエルは胸の奥で光る温かい物を感じ、そっとその場に背を向けた。


 また、ここへ来よう。また、会いに行こう。



 ラルフ村を抜ければ、もうすぐに王都が見えて来た。

 ずっと東の大陸で旅をしていたし、その前はアルヴに借り住まいをしていたから、ここまで戻って来るのは久しぶりの事だ。

 

 正門を潜り、王都の中へ。


 八百屋、魔道具屋。

 交流が有ったのはもう何年も前の事だ、今はどうしてるかも分からない。

 

 街道で固まる人の間を縫って抜ければ、王城前。

 メカクシ――神ラプラスとの戦いで壊された王城も再建され、以前よりも立派な物が建てられている。

 

「まあ、壊しちゃったのも半分はわたしみたいな物なんですけど」


 あはは、とエルは一人で笑う。


 そのままの足で旧王都――いや、元旧王都の方へと向かう。

 今は新区画と言うらしい。

 瘴気も払われ瓦礫も撤去された新区画には今では様々な建物が建てられていて、住宅街や学校なんかも出来ていた。


「ここは――魔法学校? みたいですね」


 そういえば、昔アルに森の中の家で文字や魔法を教えていたな、と思い出す。

 アルは物覚えが良いからあまり手がかからなかったが、自分の得意な魔法を人に教えるというのは少し楽しかったのを覚えている。

 

「ちょっと、興味あるかも……なんて」


 ああ。

 この世界が元に戻ったら、やりたい事、行きたい所、会いたい人。

 山の様に有るでは無いか。


「じゃあ、早くアルさんにも帰って来て貰わないと……ですね」

 

 エルは王都を後にして、魔女の森へと向かう。

 その右目は、真紅に色を変えていた。


 

 魔女の森はもう魔女の森では無かった。

 というのも、森の掛けられた『迷い』の魔法は既に解けていた。

 魔力の供給源だった勇者の剣が失われたのだから、直にその魔法が解けるのも当然だろう。


 奥まで進めば、二人で暮らした家が有った場所。

 何もかも過去形だ。


 かつてエルフの老人――宮廷魔導士に破壊されてしまったので、今では残骸だけがそこに在る。

 長らく放置していた為、瓦礫も苔や蔦に覆われていた。

 

「地下は、どうなっているでしょうか」


 草葉の中に埋もれていた地下への入り口を掘り出して、『光源』の灯りを頼りに地下への階段を降りて行く。

 書庫の本は全て『空間』に仕舞って回収済みなので、空の本棚と机と椅子だけが残っていた。

 誰も手入れしていないから埃っぽい空間だが、積もった埃を払って椅子に座る。


「懐かしいですね……」


 この空間で、何度もアルに魔法を教えていた。

 本が無い書庫というのも落ち着かない物だ。

 何となく、『空間から』何冊か魔導書を取り出して、机の上に並べてみた。


「あ、この本……」


 その中の一冊。

 一際目立つボロボロの魔導書が目に付いた。

 それは神ラプリエルが残した、『時』の魔導書だった。


 エルはそれを手に取り、ぱらぱらと捲る。


「あれ? 中身が、読めます」


 ずっと白紙だった魔導書が、読める。

 つまり、『隠匿』の魔法が解かれている、もしくは閲覧が許可されている。

 どちらにせよ、ここでは無いどこかの世界に居るアルと神ラプリエルの方に、何か変化が有ったのだろう。


 時の止まった世界。

 そして、『時』の魔法。


「もしかして、これなら――」


 エルは急いで書庫を出る。

 そして、あの場所へ向かう。

 ――勇者の剣の有った、あの場所へ。



 森の最奥部。

 もうそこには勇者の剣も刺さってはいない。

 何も無い、ただの空間。


 そんな場所で、エルは願う。

 薬指で鈍く光る、形の歪な銀の指輪に。


(“わたしの”素敵な勇者様に、出会えます様に――)


 ――辺りが、魔法の光に包まれる。

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