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【完結】少し遅れた異世界転移 ~死者蘇生された俺は災厄の魔女と共に生きていく~  作者: 赤木さなぎ
第四章 神の世界侵略編

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神の世界侵略⑦ 過去のビジョン②

「ありがとうございます、おかげで何とかなりそうです」


 俺は魔道具屋の店主に向き直り、礼を述べた。

 彼女の鼻が犬の様に利くおかげで、魔導書の内容を解読出来た、大手柄だ。


 当然ながら、鼻を利かせた当の本人は事情がさっぱり分かっていない。

 思わぬ収穫に盛り上がりを見せる俺たちに対して、


「お、おう……。よく分からんのじゃが……」


 と、つまらなさそうにぼやいていた。


「まあとにかく、わしは店で事が落ち着くまで大人しくしているよ。あんなのに襲われるのはもう懲り懲りじゃ。――あんたらが、何とかしてくれるんじゃろう?」


「ええ、任せてください。これは、わたしの戦いですから」


 わたしの戦い。

 かつて大災厄を引き起こしてしまったエルは、このメカクシの引き起こした“大災厄の再演”に人一倍責任を感じているのだろう。


 災厄の魔女が、今度は大災厄を止める為に宇立ち上がる。

 世界を救う為の戦い。


 だけど、忘れてもらっては困る。


「いいや、俺も居る。――俺たちの戦いだ」


「ふふっ。そうでしたね」


 そう、これは俺たちの戦いだ。

 新時代の勇者と魔女――アルとエルが世界を救う、そういう物語。


 きっと、その物語の登場人物である俺たちは、『魔女エル』の掌の上なのだろう。

 かつての勇者と魔女の名を受け継いだ俺たち。

 正に名は体を表す、だ。

 今度は俺たちが世界を救う役回りという訳だ。


 かつて世界を救った『魔女エル』は、どこまで未来を視ていたのだろうか。

 知っていたのだろうか。


 過去の人物、故人の意図した通りに、まるで操り人形の様に動くのは少し癪だ。

 しかし、それでも俺たちの目的と合致している最適解なのもまた事実なのだ。


 癪に障ろうがなんだろうが、関係ない。

 俺は、この後もあのビジョンの最後に見たメッセージの通りに、『魔女エル』の掌の上で踊る事になる。



・・・



 ――旧王都。

 いや、正確には“旧王都跡地”だ。


 この地は宮廷魔導士との戦いの中、俺の放った隕石の様に巨大な『ファイアボール』によって焼き払われ、更地と化した。


 今はそこらに建物だったであろう何かの瓦礫が僅かに有る程度で、見渡す限りの無限の荒野が広がっている。


 恐らく王城が有ったであろう場所。

 倒壊した塔の一部だったはずの瓦礫の上に腰を下ろす、一つの影。


「やあ、よく来たね」


 月光を背に、悠然と佇む少年。

 短めのパーマがかった金髪、そして目には包帯。

 メカクシだ。


「この地もいつの間にか殺風景になったね。折角いい雰囲気にしておいたのに、残念だよ」


「――どういう意味だ」


 いい雰囲気に“しておいた”?

 あの瘴気に包まれた旧王都の事を指して言っているのだろうか、だとすれば趣味が悪い。


 それに、あれは大災厄によって溢れ出た濃い魔力によって発生した瘴気のはずで、謂わば副次的な事故の様な物だ。


 しかし、その言い方ではまるで――。


「そうさ。“大災厄”――いい演目だっただろう?」


 奴はもう俺の事を認識出来ているらしい。

 言わんとする事を察した俺を見て、メカクシが声を上げる。


 魔法の天才であるエルが、名と記憶の全てを賭して行った大魔法。

 国の全ての民の幸福を願った大魔法。


 そんな魔法が、失敗するはずが無かった。

 大災厄が起こるだなんて、あり得るはずが無かった。


 あの大災厄すら、このメカクシの干渉によって起こった物だった。


 身体が熱くなるのを感じる。

 奥底から、沸々と熱が沸き上がる。

 お前が、お前が――!


「あなたが、わたしの魔法を、邪魔したんですか。あなたが、王都をあんな風に……」


 俺が沸き上がる熱を噴き上げるより前に、エルが声を上げた。

 静かに、ゆっくりと。

 俺とは真逆に、冷え切った言葉を紡ぐ。


「邪魔? ああ、『永遠』の魔法だっけ? ――そうだね、そうさ。人の分際で『永遠』を望むだなんて――」


 メカクシは飄々とした態度のまま言葉を並べる。

 そして――、


「――分を弁えろよ、人間」


 一呼吸、その間で周囲に纏う空気が豹変する。

 先程までとは打って変わり、威圧感を感じる空気感。

 その圧が、目の前の少年――メカクシは“神”なのだと理解させる。


「お前……!」


「アルさん、わたしが。――わたしが、やります。あなたは、あなたのやるべき事を」


 臨戦態勢を取ろうと構える俺を、エルが静止する。

 沸き上がる熱に呑まれそうになる俺とは真逆に、エルは怖い程に冷たく、そして冷静だ。


 俺は一度深呼吸して、噴き出しかけていた熱を嚥下する。


 そう、やるべき事だ。

 エルと互角の魔法戦闘をしたこのメカクシに対して、俺が熱に浮かされるまま戦っても、はっきり言って勝ち目は無い。


 それに、エルだって――いや、俺の怒りなんかよりも、当事者であるエルの方が、よりその感情は強いだろう。


 目の前のこの神を名乗る金髪の少年こそが、エルが森の中で独り過ごした、あの二〇〇年の元凶なのだから。


「――ああ、分かった。こいつは任せた」


 俺は大人しく、この場をエルに委ねた。

 それはエルの実力を信じての事だし、俺の“やるべき事”を果たす為でもある。


「はい、任されました!」


 エルは努めて明るく、心配させまいと、今までに何度か見たのと同じ様に、小さくガッツポーズを取って見せた。


「愛してるよ、エル」


 俺は去り際に、ゴーフへと単独で向かったエルが別れ際にしたのと同じ様に。

 不意打ちを置き土産にして、『転移』の波に乗った。


 俺のやるべき事。

 俺は『魔女エル』の最後のメッセージに従い、魔導書の魔法を行使する。

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