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【完結】少し遅れた異世界転移 ~死者蘇生された俺は災厄の魔女と共に生きていく~  作者: 赤木さなぎ
第四章 神の世界侵略編

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神の世界侵略② アルヴ再訪②

 久方ぶりのアルヴの街並みは、数年経った今でも然程変わる事は無かった。


 大通りの左右を見ると、数件の本屋が並ぶのはアルヴ特有の光景。

 上を見上げると、空を飛ぶ箒の光の軌跡が弧を描き、道路の様に敷かれている。


 街灯なんかにも贅沢に魔石を用いた魔道具が使われているのも、魔法の発展したアルヴならではだ。


「あ、このお店、前来た時には無かったです! 寄ってもいいですか?」


 新しく、本屋とカフェが併設されたお店が出来ていた。


「後でいくらでも時間はあるから。先にエレナさんのとこ行こうか」


 エルが新しく出来たお店に吸い寄せられて行くのを静止する。


 予定ではこのアルヴで新しい家を持つのだから、いくらでも来る機会は有るだろう。

 まずはエレナに挨拶を済ますのが先だ。


「むぅ~」


 エルは頬を膨らませて不服の意を示すも、とてとてと先導する俺の後を付いて来て、隣に並ぶ。


「でも、この国で家を持つってなると、一体幾らかかるんだ……」


 ぱっと見の街並みでも華やかで、裕福な国だというのが分かる。


 ここまで来たのは良いが、冷静に考えると俺たちの懐事情は然程潤ってはいない。

 森の中の小屋くらいの規模の家を持つにしても、かなり厳しいかもしれない。


「うーん。お金に困ったら、錬金術でも覚えましょうか」


「なにそれ、初耳……」


 旅をして周ったと言っても、まだ世界の半分も周り切れていないだろう。

 まだまだこの異世界は俺の知らない事柄で溢れていそうだ。



 そんなこんなで、俺たちはエレナの家を訪れた。


「やあ、よく来たね。元気そうでよかった。君らがまた来るのを待ち侘びていたよ」


 呼び金を鳴らすと、すぐにエレナが玄関の扉を開けて出迎えてくれた。


「久しぶり」


「あの、エレナさん、それ……」


 エレナの以前会った時との容姿の変化に、エルが声を上げる。


「ん? ああ、そうだね。ちょっとイメチェンせざるを得ない状態になってしまってね。まあ、それが君らに会いたかった理由な訳だけど」


 エレナのはそう言って、“眼帯”を上から摩る。


 エレナは数年前に会った時にはしていなかった眼帯を、左目にしていた。

 それが意味する物のは、つまり。


「――真実の左目が、奪われた」


 エレナは淡々と、その事実を告げる。


 再会を喜ぶ暇も無く、衝撃の事実が付きつけられた。

 これでは引っ越しどころの騒ぎでは無い。


 俺たちは以前に訪れた時にもそうした様に、エレナの書斎で集まり話を聞く事にした。


「事の発端は、君らがアルヴを去った一年くらい後の事だよ」


 そんな前置きから、エレナが事の経緯を説明してくれた。



 ――ある日エレナの左目が突然熱を帯び、頭の中にビジョンが流れ込んで来た。


 それは過去のビジョン。

 エレナの祖父が龍に出会う場面。

 そして、エレナの祖父がエレナに左目を継承する場面だった。


 エルの時と同じ、真実の目の覚醒によるビジョンの幻視だ。

 自分の中にあの真実の目が有るという事に、エレナは心底興奮した。


 しかし、その左目の覚醒から数日後の事だ。

 エレナの元に、一人の少年が現れた。


 “訪ねてきた”のではなく“現れた”のだ。

 その少年はどこからともなく、突然現れた。


「――やっと見つけた。僕の目、返してもらうよ」


 その少年は短いパーマがかった金髪で、自分の両の目を包帯で覆っていた。


 そんな目隠し状態だと言うのに、まるで見えているかのように、エレナの方を真っ直ぐと見据える少年。


 エレナはこの突然現れた目隠しの少年がただ者では無いと悟り、すぐに逃げようとした。


 しかし、気付けば少年の掌の上には、一つの球体が有った。

 エレナが自分の世界の左半分が失われた事に気付いたのは、その球体を認識した数秒後の事だ。


「がああああああああ……!!」


 それを認識すると、左目があったはずの場所から、熱がじわりじわりと沁み出して来るのを感じ始める。

 そして、激痛が走る。


「右目の方にも伝えといてよ。――次はお前だ」


 そして、目隠しの少年の姿は消えた。

 その言葉と、痛みと、虚無感だけを残して――。



「――って訳で、残念ながら真実の目はもう私の手元には無いんだ」


「教えてもらえれば、すぐに駆け付けたのに」


「勿論君らにもすぐに知らせたかったんだけど、今どこに居るのかすら分からなかったからね。こうしてまた訪ねて来てくれるのを、首を長くして待っていた、という訳だ」


 確かに、この世界には携帯電話の様な連絡手段は無い。

 そして、手紙を出そうにも、俺たちは旅をしていたし、そもそも魔女の森に手紙は届かない。

 教えろと言っても無理な話だ。

 

「ああ、それは申し訳ない……」


「いいや、構わないよ。こうして来てくれたんだからね。でもその様子だと、あのメカクシは右目を狙ってそっちには来なかったみたいだね」


 エレナはそう言って、エルの方へと視線を向けた。


「きっと、このローブのおかげだと思います」


 そう言って、エルはローブの裾を触る。


「ああ、『認識阻害』か」


 エルのローブには『認識阻害』の魔法が掛かっている。

 その副次効果として、真実の目の反応がそのメカクシの『魔力感知』に引っ掛からなかったのだろう。


「でも、エルも偶にローブ脱いでる時有るよね」


「そうですね。もしそのメカクシがわたしたちのすぐ近くに居たのなら、それで見つかってしまうかもしれません。でも、きっとすごく遠くに居るんだと思います」


「私は魔法にあまり詳しくないのだが、遠ければ感知されない物なのか?」


「そうですね。仮にこの世界全体に『魔力感知』を張り巡らせられたとしても、それは薄く弱い包囲網にしかならないでしょうから」


「常に強い反応を発している様な相手じゃなければ、見つけられないって事か」


 エルが外に出るときは大体『認識阻害』のローブを羽織っているし、脱いだとしても短時間の事。

 長時間ローブを羽織らないのだってあの魔女の森の中くらいの物なので、簡単に見つかる訳も無い。


 逆に言えば、その『認識阻害』を持たないエレナの左目は、常に強い反応を示してしまっていたのだろう。

 それ故に、すぐにメカクシの『魔力感知』に引っ掛かってしまったのだ。


「ふぅん。まあ何にせよ、そのローブが役に立っていたみたいで良かったよ」


 今エルの纏うローブは、以前アルヴを訪れた時にエレナから貰った物だ。

 なんだかんだでそれに思い入れがあるのだろう。

 エルは今日まで、ずっと同じ物を使い続けていた。


「とりあえず、左目は取り戻さないといけないけど……。でも、そのメカクシってのは今どこに居るんだろう」


「分からない。なんせ突然現れて、突然消えたからね」


「エルの推理では、遠くに居るはずなんだよね?」


「そうですね。今もそうかは分かりませんが、拠点はここよりもずっと遠くに構えていると思います」


 となると、こちらから探して見つけ出すのは難しいかもしれない。


「――次はお前だ、か。待ってたら向こうから来てくれるのかな」


「本人がそう言っていたんだ、間違いなくメカクシはエルさんの持つ右目も狙っているだろうな」


「――じゃあ、会いに来てもらいましょうか」


 エルは名案だとでも言うように、手を合わせてそんな事を言う。

 やはり、そうなるか。

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