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【完結】少し遅れた異世界転移 ~死者蘇生された俺は災厄の魔女と共に生きていく~  作者: 赤木さなぎ
第三章 宮廷魔導士編

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宮廷魔導士⑦ 『相殺』

「誰だ、貴様は。私が用が有るのは――」


「災厄の魔女の旦那様だ、覚えておけ」


 老人が言葉を紡ぎ終える前に、俺はそう言い放つ。


 初めてエルと森で出会った時からの俺の肩書。

 そして、その肩書は今や本物だ。


 俺は名乗りを上げると同時に、十八番である『物体浮遊』の魔法を瓦礫の破片にかける。

 そして、瓦礫の弾丸を加速させ、その憎たらしい髭面に叩き込む。


 かつて鳥型魔獣を撃ち落としたのと同じ攻撃方法。

 『獣使い』で魔獣を使役する老人に、その記憶のイメージが重なり、無意識で選択した魔法攻撃だ。


 だが、しかし――、


「――『相殺』、『物体浮遊』」


 老人はそう呟くと同時に、持っていた杖を一振りした。


 俺の放った瓦礫の弾丸は、老人の杖の一振りによって途中でその勢いを減速させ、地に落ちた。


「なん、だと……」


 老人は魔法の立ち消えを確認すると、「ふん」と一笑する。


 俺は、この老人の使った魔法を知っている。

 これは『相殺』の魔法だ。


 そして、それは誰にでも使える類の魔法ではない。

 これは災厄の魔女の魔導書にしか記されていない様な、特殊な魔法だ。


 『相殺』は相手の発動した魔法式に干渉し、反対の命令を割り込ませる事でその魔法を無力化する魔法だ。


 干渉する対象の魔法を完璧に理解していなければ、そこに命令を割り込ませる事なんて出来ない。

 つまり、基本的には魔法を極めた者にしか扱えない類の高等魔法だ。


 しかし、実際に目の前で『相殺』を使って見せた様に、この老人はそれ程に卓越した魔法を操る。

 地下の書庫から盗み出した災厄の魔女の魔導書の内容を完全に理解し、有効に利用できるだけの能力を有しているのだ。


 この老人と同じく、俺の使う魔法のほぼ全てはエルの書いた魔導書から覚えた物。

 エルの魔法の猿真似、ただの劣化版だ。


 つまり、老人はこちらの使う魔法の手の内を知っている。

 そして、その上で理論上はその“災厄の魔女の魔法”の全てを『相殺』する事が出来るのだ。


 これは、まずい事になった。

 相手はおそらく『永遠』の魔法の影響で不死性を有している。

 更に、その上でこちらの攻撃魔法の殆どを『相殺』してくるのだ。


 しかし、先程も感じた僅かな違和感。

 目の前で対峙するこいつの容姿は“老人”なのだ。


 その違和感の正体、そしてその不死性を確認をする為に、まずは老人に一度攻撃を通す必要がある。


 『物体浮遊』の弾丸は届く前に『相殺』されてしまう。

 ならば――と、俺は間髪入れずに『身体強化』を自分の肉体に全力で行使する。


「はああっ――!」


 本来であれば、そんな事をすれば身体が負担に耐えられず崩壊を起こすだろう。

 しかし、俺の不老不死の肉体はすぐに限界を超えた分のダメージを修正し、無かった事にしていく。


 一度は全身に激痛が走るが、その痛みは気合で無視すればいい。

 そんな無茶な魔法で強化された身体を活かし、俺は全力で地を蹴り、風よりも早く、老人との距離を詰めた。


「なっ……」


 驚き、目を見開く老人。


 目論見は成功だ。

 距離さえ詰めてしまえば、相手がこちらの魔法の発動を見て『相殺』をする暇さえ与えずに攻撃を通すことが出来る。


 距離を詰めた俺は、老人の懐に拳を叩き込む。

 『身体強化』の乗った身体から放たれる、重い一撃だ。


 しかし、勿論こんなパンチ一つで倒せるなんて思ってはいない。

 なので、俺は更に魔法での追撃を加える。


「ばーん――ってね」


 俺はかつてのエルを思い出しながら、その真似をして『温度変化』の魔法を行使した。


 老人の肉体は沸騰した様にぶくぶくと膨れ上がり、肉塊と血飛沫を飛び散らせながら弾け飛ぶ。

 鮮明に記憶に残る光景と同じ様に、赤黒い血の雨が降り注ぐ。


 魔獣相手ならともかく、本来こんな方法を人間に対して使うなんて論外だろう。

 しかし――、


「なるほど。『相殺』の隙を与えない――いい案だ」


 耳障りな、こちらを挑発する様な老人の声が聞こえてくる。


「そりゃどうも」


 一拍の間を置き、一息つけるかと思ったのも束の間。


 周囲に散ったはずの肉塊と血溜まりは、まるで逆再生される映像の様にするすると集まって行った。

 そして、ほんの僅かな間で、元有った空間に老人の身体は再び存在していた。


 やはり、この老人は『永遠』の魔法の影響で不死性を得ているのだ。


「――しかし、それでは私を殺すことは出来んぞ」


 再生したかと思うと、すぐさま老人が反撃の魔法を放つ。


 鳥型魔獣と同じ『爆発』の魔法だ。

 老人と俺との間の空間に魔法が展開され、爆発が巻き起こる。


 俺はその爆風に飛ばされ後退し、受け身を取って、再び老人との距離を取った。


 違和感の正体。

 年老いた姿、そして先程の肉体の再生の挙動。

 老人の不死性は、おそらく不完全な物だ。


 俺やエルと同じ様に『永遠』の魔法によって得た不老不死ならば、まず外見が老いる事は無い。


 そして、再生の挙動も違う。

 完全な『永遠』ならば、どんなに肉体が損傷しようとも、その損傷するという事象自体がまるで無かった事になるかの様な、修正の挙動をするのだ。


 しかし、この老人の肉体は明らかに老い衰えている。

 そして、肉体の再生は僅かな間であれど、時間をかけて逆再生の様に再生する。


 しかし、いくら不完全の不死性と言っても、不死は不死だ。

 脅威には変わりない。


 不老ではないのなら、理論上はこの老人の寿命が尽きるまで、何十年、何百年もの間殺し続けるという方法も有るだろう。


 しかし、常識的に考えればそれは不可能だ。

 そんな事をしていれば、先にこちらの気力も体力も尽きてしまうだろう。

 現実的な手段ではない。


 しかし、この老人を放置してはおけない。

 こいつは生きている限り災厄の魔女を――エルを狙い続けるだろう。


 俺は愛する人を守る為に、この世界で生きる意味を守るために、この魔法の力を振るおう。

 俺とエルの永遠は、奪わせはしない。


「それはどうか――なっ!」


 不完全な不死性、ならば――。


 攻撃自体のダメージは通らず、無駄だとは分かっている。

 それでも奴の隙を作る為に、もう一度攻撃を浴びせようと、悲鳴を上げ続ける肉体に鞭を打ち、地を蹴る足に力を込める。

 しかし――、


 突如黒い触手が地を割き、地面の中から這い出して来た。


「変異種――!」


 地を蹴ろうと力を込めた足が黒い触手に絡め捕られ、がくん膝から倒れ込む。


「私の使い魔たちを忘れてもらっては困るな」


「くっ……」


 地を蹴る勢いが行き場を失い、『身体強化』の反動となって激痛が身体に返って来る。


 老人のお得意の魔法『獣使い』だ。

 本来は動物を使役する為の魔法も、与える命令を少し変えれば魔獣や異形すらも使役出来てしまう。


 『爆発』の魔法を使う鳥型魔獣、そして異形の変異種。

 おそらく、異形が変異種となったのもこいつの使役の効果によるものだろう。


「所詮は、その程度か」

 

 老人は余裕の表情で勝ち誇っている。

 そのままもう一度杖で地を突き、新たな鳥型魔獣を召喚した。


 ――俺の狙い通りに。

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