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【完結】少し遅れた異世界転移 ~死者蘇生された俺は災厄の魔女と共に生きていく~  作者: 赤木さなぎ
第三章 宮廷魔導士編

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宮廷魔導士② 再会

「とりあえず、王都へ向かいましょう。情報収集です」


 魔女の森へ侵入し、森の中の家を破壊し、書庫の本に手を付けたであろう『爆発』の鳥型魔獣の使役者。

 そいつを“捕まえてとっちめる”のだ。


 しかし、手がかりは残された『爆発』の痕跡と魔獣の気配。

 そして、魔女に恨みの有る者、または書庫の知識を目的とした者の犯行、という推理からの不確かな情報のみ。


 如何せん、まだ手札が足りていない。

 まずは情報を集め、手札を増やす事、それからだ。


 エルの言葉に則り、俺たちは情報収集の為に動き始めた。

 まずは手近であり、そして人の多く集まる場所、つまりは王都へと向かった。



・・・



 約十年ぶりに訪れた王都は、以前よりも更に栄えている様に感じた。


 活気のある人の波もそうだが、俺の記憶の中の街並みよりも、大きな建造物がいくつも増えている。


 その建造物一つをとっても材質や細かな装飾の意匠から、きっと初めて訪れる旅人が見ても、ここが豊かな国なのだと思わせるだろう。


 旧王都の王――俺がこの手で葬った異形となった王。

 その望みであった“永遠の繁栄”。


 それは当人の思惑とは違った形で、こうやって後世の者たちの手によって紡がれ、成されていくのだろう。


 そんな歳月を経た街並みに想いを馳せていても、犯人の情報が向こうから歩いてくる訳も無く。


 情報収集と言っても、俺たち二人はこの国にそういう事情に詳しい知り合いが居るという訳でも無い。

 なので、ひとまずは顔見知りの店を周って、話を聞いてみる事にした。


 最初に訪れる事にしたのは、頻繁に通っていたあの八百屋だ。


 世話になっていた店主への挨拶もしたかったので、情報収集というよりはそちらがメインという側面も有り、最初に訪れる事にした。


 ――の、だが。


 以前に出店の有った場所には、もう八百屋は無かった。

 というか、十年前には大通りに並んでいた出店、ぞの殆どが今では見られなくなっていた。


「お店、畳んでしまったんでしょうか……」


 と、エルの残念そうな声がローブのフード越しに聞こえてきた。


 災厄の魔女の伝説が色濃く残るこの国では、流石にエルも素顔を晒したまま歩く事は気が引けたのだろう。

 今のエルは、旅の終盤にはもう殆ど見る事が無くなっていた、久しぶりのフードを被った姿だ。


「ちょっと、その辺の人に聞いてみようか」


 店主に何かあったのかもしれないし、大通りの出店が殆ど無くなっている事にも関係があるのかもしれない。


 そう思って、俺は近くの人に適当に声をかけて、話を聞いてみた。


 すると、早速情報を得る事が出来た。

 こういうのは意外と誰か知ってるもんだ。


 どうやら、ここに出店を出していた人々の多くは新たに店を構えたらしい。

 親切な人が「それなら多分あっちの方ですよ」と、八百屋への道を教えてくれた。


 それは、元々出店の有った場所から歩いて、少し離れた所に有った。


 最近出来たであろう建物の内の一つ。

 大きな建物に、見覚えのある八百屋の看板が有った。


 見覚えのある看板と言っても、デザインが同じなだけだ。

 新しく作り直したのだろう。

 それは以前よりも大きく、遠くからでもはっきりと存在が分かる様になっていた。


 それを見たエルが、隣で「おおー」と目を輝かせている。


 それも納得だ。

 あの簡素な出店が、今ではこんなに大きな店を構えるほど繁盛したのかと思うと、なんだか感慨深い物が有る。


 俺たちはそのまま、店へと入る。


「ごめんくださーい」


「はーい。いらっしゃいー」


 店の奥から声が返って来た。

 しかし、その声は俺たちのよく知る店主の物ではなく、若い女性の物だった。

 新しい従業員の人だろうか。


「あの、店主さんは居ますか?」


「ああ、母のお知り合いですか? ちょっと待っていてくださいね」


 と言って店の裏へ引っ込んでいった。


 会った事は無かったが、どうやらあの店主には娘さんが居たらしい。

 時を経て大きく成長して、今では店の手伝いをしているのだろう。


 言われてみると、髪色も同じだし、どこか面影を感じる。

 あのふくよかな店主も、もう少し若い頃はこんな感じの活発な女性だったのかもしれない。


 少し待つと、店の奥から店主を連れた娘さんが戻って来た。


 店主は記憶の中の姿よりも少し瘦せていて、顔には皺も目立ってきていた。


 時間の流れが違う俺たちは意識していないと忘れそうになるが、十年という時間は人を変えてしまうのには十分な時間なのだ。


 店主も老いて行くし、娘さんは成長して大人になって行く。

 自分たちは理外の者なのだと改めて感じさせられた気がした。


「ご無沙汰してます。遅くなりましたが、妻と一緒に来るという約束を、果たしに来ました」


 俺は店主に頭を下げて、挨拶をした。


 店主は驚いた様な表情を浮かべた後、俺とエルの顔を交互に見て、それから、


「ああ、待っていたよ。覚えていてくれて、ありがとねえ」


 と笑顔で迎えてくれた。

 そして、店には他にも客が居たため気を使ってくれたのか、そのまま店の裏へと案内してくれた。


 店の裏の住所スペース。


「お久しぶり……なんですけど、ちゃんとお会いするのは、初めましてです」


 茶を出され、三人が着席したタイミングでエルはそう切り出した。


 被っていたフードを取り、長く美しい黒髪、そして細く伸びたエルフ耳が露わになる。


 店主はその少し照れ臭そうな表情を浮かべている“黒髪のエルフ”の姿を見ても驚く事なく、穏やかに微笑んでいた。


「ええ、ずっとお会いしたかったですよ、魔女様」


 それから。

 積もる話というやつで、店主とエルはいつからエルの正体に気付いていたかなんて昔話や、俺たちの旅での思い出話なんかをしていた。


 俺も店主に「あんたも昔とちっとも見た目が変わってないねえ」と言われて、なんと言えばいいものかと説明に苦労した。


 勿論、今日の目的を忘れた訳では無い。

 犯人の手がかり探し、情報収集もきちんと行った。


 八百屋の母娘にも、森の中での一件と、その犯人を捜しているという旨を伝えて聞いてみた。

 しかし、


「ごめんね、わからないねえ」


「そうですか。ありがとうございます」


「何か他に、王都で変わった事は無かったですか?」


「――ああ、そういや少し前に、新しい宮廷魔導士が着任したそうだよ」


「宮廷魔導士ですか。それって、どんな人なんですか?」


 宮廷魔導士というと、旧王都でエルが就いていたと以前に言っていた役職だ。


 という事は、それ程に魔法に長けた人物であるというのは想像に難くない。

 旅の中でもエルや俺に匹敵する様な魔法の使い手というのは、殆ど会う事は無かった。

 なので、その新しい宮廷魔導士には少し興味が湧いた。


「あたしは魔法には詳しくないからねえ、そういうのはよく分からないよ。でも、噂じゃエルフの爺さんって話だよ」


 新しい人が入ったと聞くと、俺の中の新人の固定観念からある程度若い人を思い浮かべてしまうが、どうやらその宮廷魔導士は結構な高齢らしい。


 いや、もしかすると若くして宮廷魔導士の地位に就いていたというエルのイメージに、俺が勝手に引っ張られているだけで、普通は長年の研鑽の末にやっとなれる地位なのかもしれない。


 ただ、エルに以前その話をしたら「そういうのは人それぞれです」と言っていたし、年齢は関係ないのかもしれない。

 それでも、若くしてその地位に就いた災厄の魔女が規格外というのも、間違ってはいないだろう。


 その日、俺たちは八百屋の親子の計らいで、一晩世話になる事にした。

 家に帰っても瓦礫の山しか無く、寝る場所に困っていたから非常に助かった。


 娘さんも店主から話を聞いていたらしく、エルの姿を見て少し驚いた様子だったものの、すぐに打ち解けていた。

 エルも妹が出来たみたいで、嬉しそうだった。

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