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【完結】少し遅れた異世界転移 ~死者蘇生された俺は災厄の魔女と共に生きていく~  作者: 赤木さなぎ
第二章 導入

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聖地巡礼

この後時系列としては『霧の村』へと繋がります。

 そして、俺たちは二人で森を出て新婚旅行へ行く事を決めたものの、行く先の指針が有る訳でも無く、明確な目的が有る訳でも無かった。

 ただ新鮮で溢れたこの広い世界を見て、知って、感じて、二人の思い出を作っていこうというだけなのだ。


「アルさんアルさん。わたし、この本の場所へ行ってみたいです」


 そんな訳で、取り敢えずどうしようかと思っていた所でのエルからの提案だった。


 “この本”というのはエルが今両手で持って、こちらへ表紙を見せている『勇者アルの冒険』だ。


 この本はエルにとっても、そして俺にとっても、二人にとって思い出深い本だ。

 エルが幼い頃から愛読していた絵本で、件の“不死殺しの魔剣”が登場する絵本。


 そして、俺たち二人が登場人物の勇者と魔女から新たな名前『エル』と『アル』を貰った、そういう思い出の絵本だ。


「本の場所って言うと、二人が旅で行った場所に?」


「はい。折角このお二人から名前を頂いたんですから、わたしも同じ景色を見てみたいです」


 『勇者アルの冒険』は勇者アルと魔女エルの二人が不死の魔王を討伐する為に旅をする物語だ。

 最後は“不死殺しの魔剣”で魔王を討伐するのだが、それは最終盤のシーンであり、この絵本の前半は二人の旅路が描かれている。


 その旅路で勇者と魔女は様々な場所を訪れていた、魅力的な絵でその二人が訪れる場所が描かれているのもこの絵本の魅力の一つだ。


 彼女はそんな絵本に登場する魅力的な名所を巡ってみたいと言う。

 つまるところが、作品の聖地巡礼というやつだ。


「でも、この本の場所って、実在するの?」


 あの“不死殺しの魔剣”だって元からこの世に実在していた訳では無い。

 あれは彼女がこの絵本から着想を得て、剣にかける『不死殺し』の魔法を研究し、実用化した物だ。


 つまりこの絵本自体はおそらく創作のはずで、作品内で二人が訪れた場所なんてのも実在するのか疑問なところだ。


 しかし、そんな俺の疑問対しての彼女からの回答は、


「知りませんよ、そんな事」


 だった。


「本当に有るのか無いのか、それをわたしたちの目で確かめに行きましょう。ね?」


 彼女の目的は作品の聖地へ実際に行く事ではなく、作品の聖地を探すという俺との旅の時間そのものだ。

 と、俺は都合よくそう理解した。


 かくして、エルの提案通りに、俺たちの新婚旅行は“『勇者アルの冒険』の聖地巡礼”に決まった。



 と言っても、まず俺たちは遠出に適した衣服をほとんど持っていなかった。


 俺はこの世界へ転移してきた際に履いていたスニーカーはまだ履けるのだが、着ていた服は結構汚れて傷んでしまったいる。

 旅の行き先がどんな所になるか分からないので、防寒着なんかの備えも欲しいところだ。


 エルも森の外へ出る機会自体が食材の買い出しくらいだったので、いつもの白いワンピースドレスの柄や装飾が違うものが数着と、後は彼女にとっての必需品『認識阻害』のローブくらいしか持っていない。


 以前の初デートの時に、エルがいつもよりお洒落して着ていたのも、ちょっと装飾の多いタイプのワンピースドレスだった。

 エルには何かしらその服装に拘りがあるのかもしれないが、もう少し動きやすい服装も必要だろう。


 そんな訳で、俺たち二人は旅支度の為に王都まで買い物へ行く事にした。

 ショッピングデートである。



「そうだ、エル。折角だし、ついでにあの八百屋に寄ってみない?」


 王都での買い物の途中。

 俺は小休憩として広場の噴水の縁に腰を掛けて、大通りの屋台で買った甘味に舌鼓を打っているエルにそう提案してみた。


 あの八百屋というのは以前エルの『認識阻害』の魔法を鋭い洞察力で看破したあの店主の居る八百屋だ。


 最近は俺一人で来店していて、店主には「妻をまた連れてくる」と約束してしまっているので、エルさえ良ければ是非顔を見せに行きたいところなのだが。


「今はまだ、心の準備が。それに、今度はこのフードを脱いでお会いしたいですから」


 エルはフードの縁を手で沿ってそっと撫でる仕草をして穏やかに微笑んで見せた。

 以前ならばきっと検討もしなかったであろう提案にも、彼女は前向きだ。


 俺の見立てではあの店主はエルが災厄の魔女である事も察しているだろうし、いつ会いに行ってもエルの事を笑顔で迎えて受け入れてくれるだろうと踏んでいる。


 しかし、エルの過ごした二〇〇年を考えると心の準備が必要というのも理解出来る。

 店主には悪いが、エルの心の準備が出来るその時まで、可愛い俺の嫁の顔見世はお預けだ。


 小休憩を終え立ち上がったエルの手を握り直し、俺たちは再び賑やかな王都の街の波に身を任せた。


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