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【完結】少し遅れた異世界転移 ~死者蘇生された俺は災厄の魔女と共に生きていく~  作者: 赤木さなぎ
第二章 導入

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#ルートB もう一つの終わり

※本編とは関係の無いIFストーリーです※

 #8の途中からの分岐です。主人公が雑談を続行して魔女様のメンヘラスイッチを踏まなかったのがTRUEENDルートで、このルートBはその判断が一瞬遅れて魔女様がメンヘラスイッチをオンにしちゃったBADENDルートです。

 ルートBの主人公は#9以降で行っていた魔法の鍛錬をほとんどしていないので、魔法を使った物事の解決は出来ません。

 また、雑談フェイズを挟まなかった事によって大魔法の触媒についての話も聞けていないので、『永遠の魔法』で彼女と同じ土俵に立つというプロポーズ手段も思いつけません。

 魔女様が“ずっと一緒”に居られない主人公のプロポーズを受け入れて、未来へ目を向ける事は無いのです。

―――↓ルートB



「そして、私の傷を治したのは『不老不死の呪い』――二〇〇年前の大災厄の古傷です。元は『永遠の魔法』という大魔法だったんですけど」



 ――死なない人間か。

 そして三つ目の指を折った彼女の口から出た『永遠の魔法』、その単語はあの書庫で読んだ本に書かれていた内容に合致する。



「その大魔法が失敗して、逆流した魔力が『呪い』と、なりました……」



 彼女は確かに、その端正な顔を悲しげに歪めて、その口で“失敗した”と言った。

 つまり、二〇〇年前の大災厄は魔女様が故意に国と王を裏切り行った大虐殺などでは無く、魔法が失敗した事故により魔力が逆流した結果なのだ。

 やはりあの本は俺の期待通り、被害者視点で脚色された物だったという訳だ。

 しかし事故であれ故意であれ、結果として人が大勢死んだという事実には変わりない。仮に二〇〇年越しの誤解を解いたとしても、それで世界が魔女様を許すかどうかはまた別の話だろう。


 俺は彼女のデリケートな部分に触れてしまった罪悪感と、彼女の事を少し深く知れた嬉しさとで複雑な気分だった。

 しかしまあ、この件を掘り下げても良い物か。

 俺は少し逡巡して会話の行方を探ったが、先に口を開いたのは魔女様だった。



「この呪いはきっと、私への罰なんです……。でも、ずっと私はこの呪いを解く為の魔法を研究していました」



 たった独りで終わりのない一生を生きる。世界征服を企む魔王が欲しがりそうな不老不死の能力もこの魔女様の孤独な状況が合わさればそれは究極の終身刑になるだろう。

 だが、その呪いを解きたいという事、それはつまり――



「魔女様は、呪いを解いて……」



「そうですね、死にたい、と思っていました。この永遠を終わらせるために、何度も死のうとしました。けれど、この呪いはそれを許してはくれませんでした」



 彼女は悲しげに、自嘲するように笑ってそう言った。

 それは、彼女が二〇〇年の間溜め込んだ心情の吐露だった。



「でも、あなたが来てからはこの森での生活も楽しかったです。一緒に食べる食事は美味しかったです、一緒に眠る布団は温かかったです、これが幸せなんだなって思えました」



 二〇〇年の間誰にも吐き出せず塞き止めていた思いが決壊した彼女は、思いの丈をぶちまける。



「わたしはあなたがずっと一緒に居てくれるなら、この呪いが解けなくたって構いません。わたしはあなたの為なら何だってしてあげます。わたしはあなたを愛しています。ですから――」



 ――あなたもずっと、私を愛してください、ね?



「……ああ、俺も愛しているよ。魔女様」



 薄っぺらい台詞だが、俺はそう答える事しか出来なかった。



「ふふ、ありがとうございます。……でも、あなたは先に死んでしまう」



 そう、俺は彼女と本当の意味で“ずっと一緒”に居る事は出来ない。

 何故なら俺はただの人間で、魔女様の過ごす永遠の時の前では俺の寿命なんて一瞬だ。そんな事は彼女自身も分かっている訳で。



「ですから、わたしはこの呪いを解く為の研究は続けて行こうと思っています」



 彼女は「ずっと一緒に居てくれるなら、この呪いが解けなくたって構いません」と言っていた、しかしその“ずっと一緒”が叶う事は無い、物理的に不可能だ。ならば――



「この呪いを解いて、一緒に死んでください。それでわたしたちの“ずっと一緒”は叶います」



 彼女はそれが名案だとでも言わんばかりに、笑顔でそう言うのだ。魔女様は心中をご所望だ。

 でも、俺はまだ、これからもずっと、魔女様と一緒に居たい。

 最初はこの世界で生きる為とか、彼女の容姿が良かったからとかそんな理由で、彼女の寂しさに付け込んで、共に居る事を選んだ。

 でも、一緒に暮らして、魔女様の優しさに触れて、こんな素敵な女性を好きにならない訳が無いだろう。


 俺は魔女様が好きだ。だから、俺は――



「でも、もう少し前向きな未来が有るんじゃないか。例えば呪いを解いて、二人でおじいちゃんおばあちゃんになって寿命を全うするまでの“ずっと一緒”の時間を過ごす、とか」



 俺の平凡な幸せという人生設計に、魔女様は首を振った。



「それは、出来ないんです」



「どうして……!」



「……そうですね。では、呪いを解く方法をお教えしますね」



 そう言って魔女様は立ち上がり、地下の書庫の方へと歩いていった。

 俺は慌ててその後を追った。



・・・



「これです」



 そう言って魔女様が手に取って見せたのは俺が最初に文字を覚える為に使った『勇者■■の冒険』だ。



「この本の最後の場面、不死の魔王を倒した魔法の剣、これがわたしの見つけた呪いを解く方法です」



「これはただの絵本で、おとぎ話じゃ……?」



「いいえ。この“不死殺しの魔剣”は実在します。……実はもう、殆ど形になっているんです」



 魔女様の呪いを解く手段は魔法の剣で魔女様自身を貫く。

 つまり、“一緒に生きる”と“呪いを解く”は同時に成立しないのだ。



「他に、方法は……」

 


 魔女様は目を伏せ、大きく首を振る。



「そっ、か……」



 それ以上俺は何も言えなかった。



・・・



 翌日、俺は何となく魔女様と目を合わせ辛かった。昨日の件が尾を引いていて、俺自身どう接して良いのか分からなかったのだ。

 彼女は死ぬつもりだ、でも、俺は彼女との時間をまだ続けていたい。

 その為の手段を持ち合わせていない自分の無力さに、歯がゆさともどかしさで頭の中がぐちゃぐちゃでどうにかなりそうだ。



「少し出かけてきますね。いい子で待っていてくださいね?」



 魔女様はいつもの様に昼になるとどこかへ出かけて行った。

 俺は手を振るだけの見送りを済ませた後、いつもならば魔法の勉強でもするのだが、まとまらない思考ともやもやとした胸の痞えで、今日はそんな気にもならなかった。


 魔女様は今、どこへ出かけているんだろうか。もしかすると森の外に出ているのかもしれない。

 俺は森の外へ出たことが無いので想像でしかないが、本の知識では危険な場所だと認識している。

 だが、もしかすると森の外になら俺の欲している答えが有るのではないだろうか。


 魔女様の持つ知識でどうにかなるならもう既に彼女自身が自分でどうにかしているだろうし、どうにかならないからこその心中という選択なのだろう。故に森の中で他の選択肢を探すという案は無しだ、不可能だ。

 ならば残された選択肢は森の外にしか無い。“魔女様の呪いを解いて心中する”以外の未来が、森の外になら、もしかすると――。


 懸念点が有るとすれば、やはり魔獣だ、魔女様が腕から大量の血を流すあの光景が俺の脳内に鮮明に刻み込まれていて、その恐怖が俺の森の外に出たいという気を削いでくる。

 今度奴らに出会ってしまえば俺はまた命を落とす事になるかもしれない。だが、ここで尻込みをしていては何も始まらないどころか心中という終わりを迎えてしまうのだ。

 魔女様が居れば止められてしまい森の外へは出られないだろう、彼女が出掛けている今がチャンスだ。俺は魔女様の「いい子で待っていてください」という言いつけを破り、森の外へ足を踏み出す事にした。



・・・



 俺は自分が初めてこの森で倒れていた場所の方角へ向かって歩いていた。

 どういう原理か分からないが、幸いな事に感覚で森の外への道はこっちの方だと認識できたので、迷いの魔法がかかったこの森を、俺は迷わずに抜ける事が出来そうだ。


 体感10分も歩かなかったと思う。思っていたよりも早く森の出口へ辿り着けた様で、木々の隙間から明るい外の光が漏れ出てくるのが見えてきた。



「ここが、森の外……」



 この世界に来てから初めて浴びる陽の光の眩しさに、俺は目を細めた。

 冷たくひんやりとした森の中に居ては決して感じる事が出来ない類の暖かさが俺を包み、俺はついに森の外へ出てきたのだと実感する。


 想像していた魔獣や瘴気なんて物は無く、空は快晴で、明るい陽射しが照り付けていて、深呼吸すると澄んだ空気が身体を通り抜けて行く。そして眼前には自然豊かな大地が広がっていた。

 遠方には城壁の様な物が見えていて、そこにはおそらく国が有るのだろう。


 森の外に危険なんてどこにも有りはしないではないか。魔女様はどうして俺を外へ出すことを嫌ったのだろうか。



 しばらく付近を散策していると、聞き慣れないガタガタと地を揺する重厚な音が聞こえてきたので、その方向へ目を向けると、一台の荷馬車がこちらの方へ走ってきていた。

 第一村人発見だ、俺は話を聞こうと思い「こんにちは」となるべく明るい声で挨拶をした。


 声をかけた俺に気付いた荷馬車は目の前で止まってくれた。手綱を握っていたのは大柄の気の良さそうな男性だった。




「――――、――――?」



 ――え?

 今、なんと言ったのだろうか。俺の聞き間違いだろうか。

 目の前で荷馬車に乗る彼の口は、今まで聞いたことのない音を発していた。


 喋っている内容が一つも理解出来ない。外国の言葉だろうか?外国?いいや、ここは異世界だ、ならば異世界語だろうか。

 でも、俺は魔女様の言葉は理解できる、間違いなく魔女様は日本語を喋っていた。

 なら、この目の前の人は何故――



 そんな思考を巡らせていた矢先、目の前に衝撃が走った。

 俺は衝撃に対して反射的に目を伏せ、顔を腕で覆った。

 


 ――ぼとり、びしゃり

 

 異様な音がする、何の音だろうか。いや、今までの人生一度だけこれに似た音を聞いた事が有る気がする。


 目を開けると、眼前の光景は“赤”に染まっていた。

 そこにはもはや原型を残していない“人間だったモノ”が転がっていた。


 ああ、俺は先程の音の正体にようやく合点がいった。

 あの音の正体は、俺が前世で死の瞬間に聞いた音だ。大きな衝撃を肉体が受け、肉が割け、骨が砕け、血が溢れる、人体の奏でる音だ。



「――だめですよ、勝手に居なくなっちゃ」



 振り返ると、気づけばいつの間にか後ろに魔女様が立っていた。黙って森を出た俺に気付いて、後を追いかけてきたのだろう。

 彼女は片方の腕を伸ばし、それは俺の目の前の元々第一村人の男性が居た空間へと向けられていた。


 ――その手は何ですか、魔女様。それではまるで“あなたが魔法であの男性を殺したみたい”じゃないですか。



 「もう、ばれちゃいましたか、ね?」



 ばれる?何が? 分からない。

 分からない?そんな馬鹿な、俺はもう気づいて――いや、最初から気づいていたはずだ。

 気づかない様にしていた、目を逸らしていた。こうなるならば、気づかない方が幸せだった。


 ――何故、彼女は最初からすぐに俺が異世界人だと気づいたのか。

 二〇〇年前の出来事だ、事件は次第に風化し、災厄の魔女に対して悪感情を持たない人が居たっておかしくはないはずだ。何よりだからといって言うに事欠いて、それがイコールで異世界人であるなんて突飛な結論にはならないだろう。

 彼女は最初から俺が何者であるのかを知っていたのではないか。


 ――何故、俺は何故自分の名前が分からないのか、記憶が無いのか。

 事故の後遺症と自分を納得させかけていたが、それにしては違和感が残る。

 無くしている記憶も、まるで俺の“帰る場所”にだけぽっかりと穴が空いているかの様だ。

 俺の記憶は故意的に奪われていたのではないだろうか。


 ――何故、森の外では一切見る事のない魔獣が森の中に居て、襲われたのか。

 魔女様は森の外は危険だと言っていた、魔獣が居るからと。

 だが実際にはどうだ、魔獣なんて一匹も居ない、瘴気なんて無く空気は綺麗なもんだ。

 では、森の中に居た魔獣はどこから来たのか。あの魔獣は誰かが連れて来たのではないだろうか。


 ――何故、既に目の前で肉塊となってもう喋ることのない第一村人が喋る言葉を俺は理解できなかったのか。魔女様とは会話出来ていたというのに。

 簡単だ。そもそもここは異世界だ、日本語で普通に会話出来ている事の方が不自然だったのだ。

 だってそうじゃないか、俺は元々本の文字を一文字も読めやしなかったじゃないか。

 世界が違えば喋る言語も使用する文字も違う、当然だ。言葉は伝わって文字は読めないだなんてちぐはぐ、有るはずがない。

 どうして魔女様は俺にこの世界の言語を教えてくれなかったのか。



 ――全て計算尽くだったのだ、俺は魔女様の掌の上だった。


 魔女様は俺に取り入る為に、魔法で俺の頭の記憶を覗いていた。


 魔女様は俺の帰る場所を失わせる為に、俺の名前と記憶を奪った。


 魔女様は俺に恐怖を植え付ける為に、俺を魔獣に襲わせた。


 魔女様は俺が外へ出ても何もできない様に、俺にこの世界の言語を教えなかった。

 そして俺の記憶を覗いて覚えた日本語を話す事で、それを疑問にすら思わない様にカモフラージュしていた。


 思えば初めから距離の詰め方が急すぎた。初めから魔女様は俺を自分の都合の良い同居人として飼い慣らす為に拾ってきたのだ。

 そして森の中へ監禁する為に、俺の頭の中を覗き、全てを掌握し、自分の都合の良い展開へと誘導していた。


 『独りは寂しかった』初めて出会った時に魔女様の語ったその言葉だけは真実だったのかもしれない、でも――



 ――魔女様は、嘘つきだった。



「……どうして、殺したんだ」



「どうして、約束を破って外へ出てきたんですか?どうして、それと話をしていたんですか?」



 そうじゃない、そういう話じゃない。

 でも、息が詰まった様な、頭がぐちゃぐちゃでまとまらず、口から次の言葉が出てこなかった。



「私が怖いですか?嫌いですか?“汚い”ですか?」



 ああ、どうやら魔女様の言いつけを破り、真実を知ってしまった俺は彼女にとっての“汚いもの”に足を突っ込んでしまったらしい。



「……まだその気があるのなら、帰りましょう?」



 彼女は振り返り、森の方へと、ゆっくりと、歩いて行く。

 “その気”とはどういう気だろうか、“魔女様の同居人として飼われる気”だろうか。

 

 しかし、俺に選択肢は、無い。


 少しでも延命をする為か、それともまだ何かの勘違いだと、魔女様には何か考えがあるのだと、そう信じたいのか。

 自分でも自分がどうしたいのか、どうするのが正解なのか分からない。でも――。


 振り返ると“人間だったモノ”はその場に染みを残し、跡形もなく消えていた。



 俺は昨日までは肌が触れ合うほど近かったはずの魔女様との距離を置いたまま、その後ろをついて森の中へと戻って行った。

 森の冷たい空気を感じ一度落ち着くと、自分がもう先程の一件の事なんて何一つ考えていない事に気づいた。もうあの男性の声も、顔も、何一つ思い出せない。


 ああ、俺も魔女様と何も変わらないのかもな――。

 ここでの生活で変わってしまったのか、それとも今全てを諦めてしまったからなのか、自分は元々そういう人間だったのか、過去の記憶も持たない俺には分かりようも無かった。



・・・



 気付けば俺たちは家の前まで戻って来ていた。

 道中二人の間に交わす言葉は無く、今までの様な温もりはそこには無かった。



「どう、しましょうか」



 魔女様は問うて来る。どうすると言っても無力な俺に選択肢など無い。



「魔女様の好きにすればいいじゃないか。また俺の記憶を奪うのか?それとも、俺を殺すのか?」



「記憶を奪ってもう一度やり直す、それも良いかもしれませんね。でも、完全に根元から記憶を消す事は出来ません。やり直したあなたはきっと、もうわたしを愛してはくれないでしょう」



「じゃあ――」



 ――殺すのか。

 そう問う前に、彼女は首を横に振った。

 そして、魔法を使ったのか何もない空間から、どこからともなく一本の剣を取り出した。



「“不死殺しの魔剣”……」



「ええ。触媒を与えて、この剣は完成します」



 触媒とは一体なんだろうか。いや、もうそんな事はどうでもいい。この剣が有れば“魔女様を殺せる”のだ。



「言ったでしょう?“呪いを解いて一緒に死ぬ。それがわたしたちのずっと一緒”だって。ちょっと予定とは違いますが、今終われば、わたしたちはまだ、幸せな思い出と一緒に“綺麗”に終われます。ですから――」


 ――“ずっと一緒”に居ましょうね?



 そう言って心中を図ろうとする魔女様の手から、俺はその剣を奪い取った。

 魔女様は一瞬驚いた様な反応を見せたが、すぐに穏やかな表情で目を閉じた。

 俺の意図を察しての事なのか、何か勘違いをしたのかは分からないが、俺にとっては好都合だった。


 ――俺はその剣を、魔女様の胸に深く突き立てた。

 彼女の細く柔らかい身体には簡単に刃が通って行き、すぐに肉を割く嫌な感触が手に伝わって来て、俺は顔をしかめた。


 剣は魔法の光を放ち、その光によって剣が“不死殺しの魔剣”として完成した事を俺は理解した。

 魔法の光に照らされた魔女様の白い肌と黒い髪が暗い森の中で一際浮き出た様に見えた。その魔女様の顔は美しく、穏やかなままだった。

 程なくして不死性を失った魔女様の身体はその形を保てなくなり、少しずつ崩れ、塵となり、風に舞った。



「今までありがとう。そして、さようなら……」



 不思議と悲しみは無かった、涙一つ流れなかった。しかし残ったのは胸にぽっかりと空いた大きな穴。

 俺は手にした剣を投げ捨て、かつて彼女と共に暮らした家を背に、一度も振り返る事無く、森の外へと歩を進めて行った。


 ――これが俺の選んだ道。


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