怒って殴ったら好かれちゃいました
この日は王国中から第一王子と歳の近い貴族の子息と子女が王宮のガーディンパーティーに招待されていた。
婚約者選びと側近選びの為に。
そんな会場では早速トラブルが発生していた。
「お前、自分が可愛いと思ってるのか?ブス!」
綺麗な顔の第一王子はそう言い放つと、女の子の頭からカップの中身をぶちまけた。
「うわぁーん。
お母様から頂いたドレスが……うわぁん」
紅茶を掛けられ女の子は泣いていた。
「なんだよ。その目は。文句あるのか?」
目と目が合った近くに居た令息を突き飛ばした。
「痛っ!」
その場に居た子供達は、顔だけは綺麗な王子の事を恐怖で遠巻きに立ち尽くすしか出来なかった。たった1人を除いて。
「ふっざけんなぁ!!!」
バコーン!!
グーで殴りつけたら王太子は吹っ飛んだ。
「倒れてる暇ないわよ!さっさと皆に謝りなさい!」
倒れた王太子の襟首を持ち上げ立たせて謝罪を求めた。
「な、なんで王子の俺が謝らないといけないんだ!?」
「王子だからなんだって言うのよ!1番偉いのは王様でしょう?
どの子も王室からの呼び出しでこの場に来たのよ!時間もお金も掛かってるのよ!それなのに高位の立場のくせに、皆を見下して!王族に生まれたから偉いんだって思ってるのなら勘違いよ!
独裁者は引きずり下ろされて断罪されるだけ!良い王様は家臣や国民の事を思える方よ!アンタ死にたいの!?」
「ご、ごめんなさい……」
不貞腐れて小さな小さな声で呟く。
バコーン!
セシリーは再び殴りつけた。
「声が小さい!
それに謝るなら本心で謝りなさいよ!納得できないなら謝るな!」
「ごめんなさいっ!!」
王子は泣きながら皆に土下座して謝った。
騒ぎを聞きつけ国王夫妻と親達が庭に雪崩れ込んで来た。
大人達が見たものは土下座する王子とその横で睨む少女と真っ青な顔の子供達と侍女達だった。
「セシリー、お前まさか?」
少女の父親が少女に声を掛けた。顔は真っ青だった。父の名はエリオット・リボーン公爵。娘はセシリー・リボーン。
「余りにも傍若無人だったので、私が殴り、皆に謝らせました」
「お前は殿下になんて事を!」
父様の顔色は茄子みたいだった。
「悪い事をすれば誰だろうと謝るのは当たり前の事です!」
セシリーは自分が間違ってないと言い切った。
「それはそうだが、お前は臣下だぞ…」
「公爵、セシリー嬢を怒るでない。悪いのはゼロサムだ。セシリー嬢、皆の者、ゼロサムが迷惑を掛けた。責任は親である私にある。後日詫びをさせて貰うが、今日はこれで解散にさせて頂く」
国王の言葉通りガーデンパーティーはお開きになり、皆親に連れられ、帰って行った。
私は屋敷に着くと、言葉で諌めるのではなく手を出した事を父から怒られ、母からはもっと女の子らしくしてくれと泣かれた。
レイモンド兄様は話を聞いて大笑いしている。私らしいって。
2日後、国王夫妻とゼロサム王子からお詫びの手紙とお詫びの品、それから王宮料理人手作りのアップルパイが届いた。
このアップルパイが絶品だった。
手紙にはお詫びともう一度王宮に来て欲しいと書いてあった。私は面倒くさくて行かないって言ったけど、父様と母様が頼むから言ってくれと懇願するから行くことにした。兄様は面白そうな予感がするから行くと言って一家で王宮に行く事になった。
「僕の婚約者になって下さい!」
ゼロサムはセシリーの前に膝をついてお願いした。
「えー、お断りします」
セシリーはあっさりお断り。
返事を聞いた国王夫妻はビックリし
両親は真っ青に
兄はお腹を抱えて笑っていた。
「え?なんで?僕が嫌いなの?」
「嫌いじゃないけど、王子様の婚約者って自由もないし、妃教育もあるし、面倒くさいじゃない。自由な時間も無くなりそうだし……」
「じゃ僕が王子じゃなかったら婚約者になってくれるの?」
「今の貴方じゃ魅力ないから無理。魅力的な人になったら考えてみるわ」
兄はまたもや笑いを堪えていた。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
10年が経ちゼロサムもセシリーも17歳になっていた。
ゼロサムは相変わらずセシリーが大好きで時間があるとそばに居た。社交パーティーでは必ずセシリーをパートナーを頼んだ。
今日もゼロサムとパーティーに参加していたセシリーはピンク巻毛の少女に絡まれていた。
「私の方がゼロサム様をお慕いしています!
私の方が絶対婚約者に相応しいです!
だからゼロサム様を振り回さないで下さい!!」
「振り回したつもりもないし、貴方の気持ちは分かりましたわ。でもゼロサムの気持ちは?」
「ゼロサム様だってガサツな貴方より私の方が良いに決まってるわ」
「そうなの?ゼロサム?」
「僕はセシリー以外は要らない。だいたいその子の事知らないし」
ゼロサムの言葉に、このパーティにたまたま参加していた兄はまたもお腹を抱えて笑っていた。
「ゼロサム最高!セシリー以外目に入らないんだな。ははっ!」
「そんな!? 先日お祖父様と王宮でご挨拶させて頂きました!私はずっとゼロサム様の為にお妃教育だって頑張ってきました!」
「じゃ僕が王子じゃなくなったら?それでも僕が好きなの?」
「ゼロサム様が王子じゃなくなるなんて……。そんな事考えた事ありません。だってゼロサム様は王子じゃないですか!?」
「貴方って失礼なのね!
ゼロサムが王子だろうが市民だろうが、ゼロサムはゼロサムじゃない。
ゼロサムが辞めたかったら王子なんて辞めたらいいのよ。
働けない時は私が稼いで養うわよ!」
「セシリー!僕と結婚して下さい!」
「良いわよ。ゼロサムの事を思ってない女に渡すくらいなら私が結婚して貴方を守るわ!
ゼロサムの事…す、好きだし…」
最後の言葉が恥ずかしくてセシリーは赤面していた。
「セシリー可愛い!僕も愛してる!絶対に幸せにするよ!」
ゼロサムはセシリーの言葉に喜び、抱きしめた。
ゼロサムの耳元で兄が囁いていた。
「おめでとうゼロサム。妹を頼んだよ」
「もちろん世界一幸せにする!」
新しい年が始まりました。
今年もどうぞよろしくお願い致します!
今年初めての作品です
読んで頂きありがとうございます!
評価頂けるとまたパワー頂けるのでお願い致します!