表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臆病者と王子様  作者: stella
2/5

真奈美は、自分から誘っただけあって、そこからの行動はとても早かった。真奈美(いわ)く、「冬花がやると言うことは、もうないかもしれないから」なのだそうだ。自分はそんなに意志のない人間と思われていたのだろうか。


「はい!アカウント作成できたよ。アカウント名は後で設定しといてね。じゃ、プロフィール画像撮るから着替えた、着替えた!」

「え?今撮るの?待って、まだ心の準備が…」

「心の準備なんていらないでしょ!私も手伝ってあげるから」


そんな無茶苦茶な、と思った冬花だったが、真奈美のメイクの腕前はプロ並みで、一度はしてもらいたいと思っていた冬花はこくんと首を縦に振った。


すると、ちょっと怒ったようだった真奈美の顔が、満面の笑みに変わった。それにつられて笑っていると


「じゃあ、メイクしてあげるからここに座って」


と、クッションに座るように促してきた。


「わかった!よろしくね」


素直にそう言って座ると、彼女の手が私の化粧ポーチにのびて行く。その中からファンデーションを選び取ると、慣れた手付きでそれを冬花の顔に塗っていく。


その後、ネットをかぶりテーピングでエマの顔の形になるように整えてゆく。彼女の手は、アイシャドウを迷うことなく選び、アイメイクを完成させ、アイライナーを使って眉をかいていった。


これだけで、もうエマにみえるのだが、今度は自分のポーチの中からハイライト出して、鼻のラインとおでこのT字ラインに塗り、エラの部分をシェービングしていく。


後は、ウィッグをかぶり、衣装を着るだけになった。


「はい、完成!」

「ありがとう。エマそっくり!やっぱり真奈美ってすごいね」


そう言うと真奈美は、顔をほころばせた。


「さっさと着替えて撮影するよ!」

「はーい」


真奈美が撮影の準備をしている間に冬花は、衣装に着替えた。こんなにバッチリとメイクをしてコスチュームを着るのは、初めてですごく緊張した。


そこから撮影が始まり、部屋の一角の何もかかっていない壁のところで色んなポーズをとっていく。


最初は動きがぎこちなかったものの、だんだん慣れてくるとエマになりきることが出来た。


「最初のほうは表情硬いけど、だんだん柔らかくなってきてるね。どれにする?」

「真奈美がいいと思うのを選んでほしい」


彼女に任せれば、間違いはないだろう。それよりもアカウント名を考えなくてはならない。冬と花でとうか…。冬をふゆと読んでふゆか、。いいんじゃないだろうか。


「ふゆか…、。でどうかな?アカウント名、考えてみたんだけど」

「いいと思うよ!」

「そうかな?へへっ」


早速プロフィールを変更する。


『ふゆか』

『初心者レイヤー  18⤵  アルディラランド好き』


最初の内はこの程度の自己紹介文でいい、と真奈美に言われ、ここまでで終わらせた。


そこから文章を考え、そこにさっき真奈美に選んでもらった写真を添付し、初投稿なるものを行った。


『一番好きなキャラ  #アルディラランド#ディラ#エマ#初投稿#初心者レイヤー』


どれくらいの人に見てもらえるか、いいねはもらえるかなど色々なことをぐるぐると考えたが、いくら考えたところで、結果が変わるはずもない。冬花は、大人しく待っていることにした。


「ねー、ねー、折角アカウント作ったんだし、繋がろうよ!」

「いいよー」


真奈美をフォロバして、彼女の投稿を見ていた。やはり、ほとんどが男の子のキャラで、女の子のキャラを探すほうが難しい。


真奈美も真奈美で、「次は一緒に撮るからちょっと待ってて」と言うと、急いでメイクをし始めた。出している衣装からして、どうやら“エマ”と“ブラット”で撮影をしようとしているらしい。


ブラットとは、ゲーム内でエマと同じバンドメンバーであるドラキュラだ。この2人のカップルは、人気があり、真奈美もその例にもれずよく2人の絵を描いていた。


「さっ、撮ろ!撮ろ!」


いつの間にか着替え終わった真奈美が、カメラをセットしている。


「どんな感じでポーズとったらいい?」

「なんでもいいよ。もしわかんなかったら、適当に私に合わせてくれればいいから」


さっきまでなら1人だったため、マシだったが、今度は2人だ。動きがぎこちなくなり、顔も引きつっているはずだ。『私なんかが真奈美と一緒に撮るなんて無理だ』と自暴自棄になっていると、


「そんなに固くならなくても、楽しめばいいんだよ」

「え?」

「コスプレは、楽しむためにするんだからさ」


その言葉は、冬花の心にストンと落ちた。そうだ、嫌なことをわざわざする必要はない。楽しまなければ損なのだ。


「ありがとう、真奈美」


心から笑顔でそう言った瞬間にタイマーでセットされていたカメラのシャッターがきられた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ