4/7
練習
6月の某日、その日は快晴であった。雨が降り続いていた中での貴重な日本晴れだ。剣郷高校のグラウンドからは威勢の良い声が飛びかっていた。各運動部員が声を出す中、とりわけ活気が付いていたのは野球部の面々である。
「次、セカンドいくぞ!」
ホームベース上からノッカーである監督がボールを打ち出す。
「よしっ!来い!」
構えるのは坂本悠人。彼はセカンドのレギュラーメンバーであった。監督から容赦なく放たれた打球は外野まで抜けるかと思われた。しかし、ギリギリでボールに追いついた坂本は何とかその打球を捌くことができた。
「次、ショート!」
「はい!」
声を返したのは斎藤武蔵だ。ショートのレギュラーメンバーは武蔵であった。彼への打球は痛烈なライナー性で直接、武蔵を目がけて襲いかかってきた。武蔵は咄嗟に反応して、ほとんど顔の正面でボールをグローブに収めることができた。
「よし、次!サード!」
ホームベースに立つ監督は平然とその後もノック練習を続けていった。日がほとんど沈んだ頃合いでその日の練習は終了した。