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チームメイト
武蔵と謙弥のやりとりを終始、気にしている者がいた。剣郷野球部2年の坂本悠人である。武蔵のチームメイトだ。坂本は2人が話を終え、謙弥が自陣に戻っていくのを見届けると武蔵に詰め寄った。
「また嫌味でもいいに来たのか?あの大将は、」
坂本はおおよその会話の内容を察しているようだった。既になぜかイラついている。
「あいかわらずの自信だったよ。でも逆転された2点目はあいつのホームランだからな。」
武蔵は落ち着いた様子で返事をした。坂本は武蔵の異様とも思える落ち着き振りに半ばあきれながらも、夏では俺たちが勝つ!と意気込みを言い放った。
今日の逆転負けに武蔵も内心は穏やかではない。坂本の言葉に大きく武蔵はうなずいた。季節は春を過ぎかけた5月。また明日から剣郷高校野球の猛練習が始まる。