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青年期 二一歳の冬 二五

 最大戦力を温存させ、全力を保ったまま、最重要局面(クライマックス)にて投射する。


 それがまぁ、いわゆる最適解ってヤツなんだけども……剣友会という氏族を作った理由でもあるのだけれど。


 「邪魔っ、だぁぁぁぁ!!」


 「無礼もの共がぁぁ! 一歩も通すかぁぁ!!」


 前で配下が本気出しているのに、私が参加できないっていうのは、もにょもにょするなぁ。


 「エーリヒ、駄目でしてよ」


 「……バレた?」


 現在、目の前で三人の会員が五人のヘイルトゥエンの手勢と戦っている。


 そして、私、ジークフリート、マルギットにカーヤ嬢という剣友会主力は、露払いを会員達に任せて傍観中(シーン不参加)だ。


 「焦れると、指まで動かないでも、組んだ腕の筋肉が微動してますわよ」


 「……君には勝てないなぁ、ほんと」


 お前が出てって一気に揉み散らせよ、と思われるやもしれないが、配下なり冒険者としての本懐を抱えて戦い、そして敵は敵なりの忠義を示しているので横槍を出せぬのだ。


 理想としては、ハルパ・ヨクゥルトソン・ヘイルトゥエンの前に私を無傷で、息も上がらせず立たせることだと頭で理解していても、体が動きたがる。


 どうしたって、私は冒険者。心根は自分でも戦う前線指揮官止まり。


 こうやって、配下が戦っているのを眺める余裕がない。


 それに、家の子達はみんな良い子で、良い腕なのだ。一山幾らの端役(トループモブ)と違って、余力のために蕩尽していい戦力じゃない。


 ……ああ、だからこそ、こうやって本気で殺し合いをし、彼等にも熟練度を稼ぐ機会を与えねばと理解はしているんだ。


 ただ、やっぱり剣が届く下であれば、動きたいと体が騒いで仕方がないのがね。


 あと、折角良質な敵がいるのに、なんで抜いてくれぬのだとキャンキャン五月蠅い狂犬が一匹いるし、更に自制心が求められた。


 「死兵しかいねーぞ、この館。どうなってんだ」


 私と同じでうずうずしながら、細い廊下の十歩ほど先で戦っている味方を見守っていたジークフリートが、吐き捨てるように言った。


 「そうだね。私もよもや、降伏したと装った侍女から刺されそうになるとは思わなかったよ」


 「まだ外の状況、把握してねぇんだろ? 普通持久に入るか、逃げるだろ……お、マチューのヤツ、悪い癖が直って来てんな」


 「ああ、足運びが狩人から剣士のそれになった……しかし、何故死ぬまで戦う? 遮蔽も組まず、名乗りを上げて斬りかかってくるなんて。まるで斬り死にしたいかのようじゃないか」


 帝国とは様式が異なっても、城館というのは大体どこか構造が似ている。同じ人類が生活しやすいよう、文化や風俗の違いはあろうと利便を考えて作っているからだ。


 だから、背後に人を置きながら、少々の分散させながら捜索しつつも、大雑把ながらアタリを付けて進んでいる。


 とりあえずの第一目標は、謁見の間や会議室よりも一門や騎士が住まう居住区だ。夜間強襲で不意を打てていたこともあるので、可能性としては高かろう。


 ただ、奇妙なのは、出会う者が揃って覚悟ガンギマリで襲いかかってくること。


 何ともまぁ、始末が悪いことに女子供まで本気で掛かってくる。


 それこそ〝手加減〟するのが無礼に感じるような殺意を以て。


 無力化しようにも、それくらいなら自害を選ばれるような決意で突っかかってこられると、本当に始末が悪い。


 城外の兵の士気を挫くため、ここは〝焼く〟ことが決まっているから、気絶させて放置って訳にもいかんしなぁ。逃がそうとしても、向かってこられるとどうしようもない。


 それこそ、GMが「交渉は一切通じません」と自らの権限で主張しているかの如く。


 「マジで分かんねぇな……聞いて回る暇もねぇし……」


 「後味が悪いぞ。初っ端も初っ端なのに……おや、カーステン、いつの間にか剣を短くしたな。指一本分くらいか」


 「よく、あんな半端な長さの見つけてきたな。長剣と短刀の間くらいだぞ」


 あ、とかいっている間にカーステンが一人斬った。


 小鬼の彼は上背が私の腰元くらいまでしかないので、閉所であっても転がるように動き回れると本当に狙いづらいのだ。切り倒そうとしても、突き倒そうとしても加減を誤ると剣や槍の先が地面を打ち付ける。


 しかも、本人がそれを自覚して、誘うように動く巧者となったのが凄まじい。


 ヨルゴスと同じく、身丈に合った最適解を弾き出した会員達は、正しく私の誉れだ。


 「だが、閉所では最適だ。軽く短い分、動きも機敏になった」


 「大手柄だ。後で褒めてやんねぇと。今のヤツ、名乗り上げてたろ、ヘイルトゥエンの血族だって」


 「年嵩的に兄弟か従兄弟かね。血族の一門衆なら死兵になるのも分かるが……」


 今し方、カーステンが転がる勢いを借って膝を斬り伏せ、体が崩れた隙に首を斬られて死んだ少壮の男性は、死ぬまで戦うことへの理解を示そう。


 然れど、彼と一緒に戦い、今正に死のうとしている兵士達は?


 一瞬でも我々の足を遅れさせればいいと、命を捨てて向かってくる下男や侍女は?


 髭も生えていない子供から、女まで死に駆り立てるのは何だろう。


 「時間稼ぎかな? 城に外への抜け道があるのはお約束だけど」


 「だからって、女子供まで死兵にゃならんだろ。俺らも一度は、得物を捨てて落ち延びろって警告してるんだぜ?」


 「……こっちの人達って、そういう気質なのか? 君、地元勢だろ?」


 まぁ、帝国領域だったとはいえ、土豪はその意地で古い風習を保った地域だから、のんびりした荘園と帝都、そしてマルスハイムが主な人生地図たる私には分からぬこともあろうかと、地元生まれに聞いてみた。


 「馬鹿言うな。イルフュートは田舎だが帝国の荘だぞ。この辺は、もう殆ど外国みたいな扱いだし、土豪地域とじゃ気風も違わぁ」


 「ええ。ディーくんの言うとおりですけど……別に、ここまで血の気が多い人達とは聞いたことはないんですよね……」


 が、返ってきた答えは、益々私を困惑させるばかり。いや、それもそうか。あれだものな、大阪といったって市内と河内の辺りじゃ全然違ったし、一概に同じとは言えんものね。


 それにしても、本当になぜここまで粘る?


 私達の進撃を遅れさせよう、という意図は分かるとも。非戦闘員やヘイルトゥエンの血族が隠し通路から逃がすため、どこの城館を襲っても似たようなことになろう。


 けれど、肝心の逃げるべき非戦闘員やら、ヘイルトゥエンの血族が出張ってくるのは、本末転倒では?


 それこそヘイルトゥエンが自分だけ逃げようと、全員に足止めを命じるような小物だったら、ここまでの士気はなかったろう。


 そういえば、城壁の兵士達も覚悟ガンギマリな連中ばっかりだったし――誰一人、得物を捨てて降伏しようとしなかった――ほんと、ここで何が起こっているのやら。


 「旦那、掃討しやした! 向こうの廊下までは、綺麗にしときやしたぜ!!」


 「ああ、ご苦労。怪我は?」


 「大したことねぇですよ!!」


 本当に危なくなったら割って入るつもりではいるけど、軽い手傷を負った配下を見ると、やっぱり自分が前に出た方が、なんて考えてしまう私は頭目に向いてないのかもしれん。


 彼等も冒険者として立ったのだ。修羅場の経験は、喉から手が出るほど欲しかろう。


 それを自分の安心のため、摘みたがる上司を持つなんて、ちょっと可哀想だと思った。


 まぁ、アグリッピナ氏みたいに、生きてたら生きてたで面白いし、死んだら死んだでその時、と丸投げされるのもモヤッとしそうだけど。


 「クソ、どいつもこいつも今際の際でも口を割らねぇ……」


 「旦那、立派な扉の部屋がありましたよ! 順当にいきゃ、そこがヘイルトゥエンの寝間では?」


 配下の一人が通してくれた場所は、確かに構造的に護りが厚い部屋で、扉も豪奢だ。


 「はいはい、私の出番でしてね」


 野伏だけではなく、室内斥候としての腕も磨いたマルギットが扉を調べるも、そこには鍵もなく、罠も、人の気配もないという。


 外れかな? 妾かどこかの部屋だったかな? と思いつつ、念の為に覗いている見ると、中々に驚くべき物が私を待っていた。


 書き置きだ。


 流麗な筆致の宮廷語にて「謁見の間にて待つ」とだけ書かれた…………。




【Tips】主従の絆とは、時に女子供であっても命を投げ出しての奉公を示させるものだ。




 具足を着込み、伝来の剣を抱え、僅かな供回りを連れてハルパ・ヨクゥルトソン・ヘイルトゥエンは謁見の間にて主人の椅子に座り待っていた。


 かつての偉大な上王が健在だった頃は玉座であったが、帝国の版図に入って以後、それは玉座ではなかった。然れども不本意に再び玉座と呼ぶこととなった、小王の座に座る男性が初老の域にあるとは、一目見ただけでは分からぬだろう。


 頬骨が秀で顎が細い顔付きは、豊かな眉毛も相まって笑っていれば優しげであるが、眉根を引き締めて菫色の瞳を戦意に輝かせれば見事な戦士の顔付きに変じる。


 帝国の文化に合わせて、いっそ清々しく剃り落とした髭――ヒト種は髭を短く綺麗に整えるか、剃り落とすのが帝国風――と、髪油で真ん中から分けた白髪の少ない黒髪と相まって、土豪と呼ぶより帝国騎士といった称号がよく似合う男。


 彼は覚悟を決めていた。終わりを迎える覚悟を。


 どうあろうとヘイルトゥエンは終わる。土豪として、帝国へと完全に寝返りを打てなかった半端な家は、今宵燃えて落ちると腹を括っていた。


 愚者は真っ先に死に、勇者も倒れた。半端に賢かった自分達も、そろそろ幕引きの頃合いだろう。


 「しかし、強情だなお前も」


 「父上、今更でしょうに」


 終い仕度は、もう済ませていた。三人の孫は密かに遠く、全く関係のない帝国領内深くへ逃がしたし、素性に気を払って匿ってくれるアテもあった。また、妻一筋だった彼には隠すべき庶子も愛妾もおらぬ。


 ただ、密かに懇意にしていた商家と繋ぎを取り、買いたたかれても構わぬと貨幣に出来る物は全て貨幣に代え、やってくるであろう滅びを待っていたが、それは予想よりも大分早かった。


 こんなことであれば、もっと配下に褒美を配り、さっさと帰れと言ってやるべきだったかと老翁は溜息を吐いた。


 どいつもこいつも強情だ。供回りもなく、身繕いをする者もなく、伽藍とした館で最期を迎えさせる気はないなんて、頭の悪いことを抜かして憚らぬ。


 或いは、阿呆ばかりが残ったのは、自分が阿呆だったからか。


 そう考えると虚しくて、口元が寂しくなる。螺鈿の高価な煙管と、揃いの煙管盆を手放したことが今更になって惜しくなっていた。いつかお家再興の力になってくれ、とお抱えの魔法使い達を孫達に付き添わせたせいで、葉など疾うに切れているが、咥えるだけでもマシだっただろう。


 何よりも、最も強情なのが息子だったが故にか。魔法薬の紫煙――帝国かぶれが、と周りからは嫌われていたが――が恋しくなったのは。


 「アロイス、今からでも遅くない。お前だけでも……」


 「諄うございますよ、父上」


 祖父の遺恨を拭い去ることを祈って、態々帝国語の名前まで付けてやった息子は、逃げようと思えば秘密の抜け道から、まだ逃げる余裕はあったろうに。


 その入り口は、他ならぬハルパが尻に敷いているのだから。


 「後継者に指名されている俺が残れば、帝国は追跡の手を緩めますまい。我が子、そして貴方の孫だけでも残れば、ヘイルトゥエンのお家が再興する目もでてきましょう」


 息子は、父親と歳がかなり離れていた。辺境伯との交渉、周辺への宣撫工作に苦労しており、中々子を作る機会に恵まれなかったが、漸く授かった一粒種。その顔は、今は累代を奉る墓所に眠る、細面の母親によく似ていた。


 「こうなる前に、嫁へ離縁を言い渡せていてよかった。肩身の狭い思いをさせることにはなりますが、俺が介錯するのも……まぁ、嫌でしたし」


 あまりハルパには似ていない。父に倣って帝国風に髭を剃った顔は、辺境伯の傍系貴族が母だったこともあり、上手くやれば帝国人に紛れることも叶ったろうに。


 「まだ二三であろうよ……歳遅くできた子だから可愛がりすぎたか。我が儘放題いいおって」


 しかし、息子は逃げないことを選んだ。


 ここでヘイルトゥエンが斃れたと周辺に、何より帝国に報せるには両名の首が必要なのだ。


 そして、彼はできるのであれば、下って首を吊される(刑死を賜る)より、武名を遺すことを尊んだ。


 公に家名を名乗ることは、百年はできまい。だが、末裔達が隠し名としてでも語り継いだヘイルトゥエンの家名がしょぼくれた終わり方であれば、きっと恥に思うであろう。


 彼等は決して、怯懦や打算で親帝国を打ち出したのではない。


 趨勢を読めたからこそ、賢しらに動いた。然れども元は上王に仕えた誉れ高き武名の家。万難尽きて終わるのであれば、それは戦によって運ばれねばならぬと堅く信じているがため。


 「父の言うことに背くような、温い育て方をするのではなかったわ」


 ふぅ、と溜息を再び吐いて、肘置きに頬杖を着いた王を僅かに乗った四人の供回りが笑った。


 「それはご当主様譲りでは?」


 三人は騎士で具足も纏っているが、一人は家宰で夜着に短杖だけを帯びている。騎士達は時間稼ぎをしている配下達の献身もあって、完全武装する時間があったが、ハルパと同い年の家宰だけは、密かに処分しておかねばならぬ書類を暖炉にくべるのに忙しく、戦装束に着替える時間がなかった。


 「ぬかしおる。この期に及べば放言もやり放題だと思いおって」


 「神々の下へ向かう先導をするのです。駄賃と思って許してくだされ」


 「ああ、よいよい、特に許す」


 もう、こいつらはどうしようもないと力なく笑い、ハルパは静かに時を待つことにした。


 心残りはないよう準備したが、後悔ばかりだ。


 もう少し上手くやっていれば。味方が今より少し多ければ、激発を諫められたやもしれぬ。


 ユストゥス・デ・ア・ダインの末裔を名乗る胡散臭い娘を密かに始末できれいれば、馬鹿げた大会戦など起こらなかったやもしれぬ。


 せめてナイトゥーア湖畔にて一撃の下に継戦能力を粉砕されるのではなく、遊撃戦に持ち込んで、自分達が投降する旨みを残せておければ。


 出目が一つ二つ違っただけで、また変わった未来もあったはずなのにと、悔いが湧いて止まらなかった。


 「しかし……戦ではなく、賊が如く押し込んでくる奴儕の手にかかるとはなぁ」


 それができなかった末が今だとしても、誉れある戦陣にて果てられぬのが口惜しい。


 「ナイトゥーアで退くのではなかったわ。あの時のワシは、まだ楽観しておったかな。寝返りを打つだけの余裕はある、などと。よもや額冠すら交渉札にならんとは」


 「結末を知っている者は、誰であれ賢者のように振る舞えるといいますぞ、父上。そこれこそ、死に損でしょうに。ゴロゴロ転がる阿呆な親類と並んで、十把一絡げの扱いになった。まぁ……何とか退いて大勢連れ帰ったからこそ、詩の一編くらいは地場の者達が語り継いでくれましょう」


 「だとしてものぅ、これは、これはちと寂しくはないか? まるで、熾火が人知れず消えるような最期ではないか」


 息子を眇めに見やった瞬間、扉が符丁の音の後に開かれ、一人の騎士と数名の歩卒がやってきた。


 時間は稼いだと判断したのか、主君の側を死に場所に選んだ者達だ。


 戦況の報告ではなかろう。城壁が墜ちたやもしれぬと聞いた時、最早報告は無用、死に場所は各々〝好いたように〟選べ(逃げろ)と邸内の全員に告げていたから。


 第一、空堀と城壁を無視して城館を落としに掛かる輩が相手だ。この僅かな城兵では、そもそも状況が好転のしようもない。門が開かねば、城外の味方も助けに来たくとも来れまいて。


 「ご報告! 敵は〝金の髪〟です」


 「何っ!?」


 思わずハルパは剣を投げ出しそうになる勢いで立ち上がった。


 この異様な城攻めだ。近衛猟兵あたりが奇策を用いて始末に来たか、また珍妙な魔法を作る魔導院の物狂い共が何かしでかしたかと考えたが、よもや冒険者とは。


 「モッテンハイムの守詩のか!?」


 「はい! 確かに見ました! 戦の中にあって、兜も被らず、配下を鼓舞するように晒された長い金の髪を!」


 「館内に押し入った者共は、一様に剣を食む狼の紋章を抱いております!!」


 「そうか……そうか!!」


 萎えかけた気骨に芯が入り、熾火が燃え上がった。


 華々しい戦の中ではないし、冒険者風情が最期の相手かと思わないでもない。


 しかしだ。


 「父上、あの金の髪ですか!!」


 「そうだ! お前が詩人を招いてまで詠わせた、あの金の髪だ!! 敵性詩だと喧しかった中、無茶までして!!」


 「聞きたくもなります! あの怪しげな襤褸纏(魔導師)共、屍を玩弄する者共を引き込むのに、最後まで強硬に反対し、柄に手までかけて否を叫んだのは父上でしょう!!」


 戦詩にはなるまい。


 だが、煌びやかに詠われる詩に、冒険詩であっても名を遺す機会が現れようとは。


 「しかし! ああ、嬉しや! 名もなき雑兵ではなく、彼が来るのか! あの悍ましき動く亡骸を祓った、剣に呪われながらも、呪いを飼い慣らした怪物が!!」


 これも天の采配か。


 冒険者相手であれば、詩が遺る公算は高い。


 なにせ彼等は、寝ても覚めてもそれを考えているような奇人だ。


 剣友会ともなれば、一等イカレの集団だと聞く。功名と詩、そして冒険にしか興味がない酔狂者共の群れ。


 「神は、最期に粋なことをなされる!」


 「ははは! 全力で向かいましょうぞ、父上! 金の髪に痛手の一つも与えれば、より名は香しく残るでしょう!!」


 「これは、よい手向けを授かった物だ! ここに残るようなことを選んだひねくれ者共! 頭が悪い生き方を選んだなら、死に物狂いで戦うがいい!!」


 「「「応!!」」」


 そして、イカレが攻め込んだのは、また別の狂気に取り付かれた者達だ。


 家名、誉れ、忠義。そして、今までとこれからの歴史。


 普通の人間(地下の生まれ)には分からぬ価値観のためなら死ねる、既に腹を括っていた死兵共の帯が、一際きつく結び直された…………。




【Tips】時に神は盤上に会話は可能でも交渉は不能、という前提の敵を配することがある。どんな交渉系技能を持っていようが、GMが一言「会話は成立しません」と添えれば、サイコロを振ることはできないのだ。  

ゴールデンルール的にGMが「〈交渉〉は振れません」といえば、たとえ技能80越えの専門家でもどうにもならないのだ。貴族やお武家様が持っている、傾き欠けた家への執着、あるいは諦念は、一時的狂気とか潜在的狂気とは異なる、根源的狂気、みたいな感じでしょうか。

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― 新着の感想 ―
喜べ、これから後世に長く語り継がれる英雄譚その第一幕《ミドル戦闘》として語られるかもだぞ
[良い点] こんな気風だから、何百年も面従腹背してきたんだなぁ、とよくわかりました♪
[一言] もはや剣友会の扱いが薩摩兵子
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