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WANTED MAN  作者: 青鷺 長閑
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Page 07:Lucky 7

 そんな、完全に裕福な日々を送っていたある休日のことだった。


 朝起きたら、両親がいなくなっていた。


 いつになっても帰ってこない。携帯もつながらない。親のタンスから、通帳と保険証、パスポートが消えていた。財布もない。


 玄関にいつも掛かっている父さんのカシミアのコートも、母さんのヴィトンのバッグも、何もかもが消え失せていた。

 よく見ると、家のすみには、今まで無かったホコリやカビが随所に見受けられた。


 翌日心配になって警察に捜索願を出したが、手がかりかなければどうにもならないと一蹴された。


 夜逃げだろう。


 警察からも、やがては近所からもそう囁かれ始めた。

 どうして良いか分からなくなった俺はまともにご飯も食べられず、ただただ増築された自室にこもることしかできなかった。

 玄関前のポストには光熱費未納の知らせが溜まり、いつしかガスも電気も、水道も止められていた。

 ただいたずらに、時間は過ぎていった。


 どうする?

 俺は足りない脳みそで必至に考えを搾り出そうと試みた。

 持ち合わせている金は残りごくわずか。三食に換算したらコンビニ弁当でも五日もたないだろうというくらいになっていた。

 とりあえずそれだけを持って、俺は家をとび出した。そうだ、親戚だ!

 親戚は事情を知っているのだろうか?

 すがる思いで都市圏に住んでる実家に電話をかける。……出ない、繋がらない。


 俺は我を忘れて町を駆け回った。どこか、どこかないのか!

 正則だ。しばらくは事情を説明して正則の家に居候させてもらおう。いやそもそも学校に言えば何とかなるハズだ。


 正則に電話をかける、繋がらない。

 学校は? ……やっぱり繋がらない。

 どうなっている?

 俺は焦って携帯の画面を見る。

 圏外だった! 携帯電話は既に契約金未納で解約されてたのか!


 どうする、落ち着け、いや落ち着けない、呼んで字のごとく死活問題。生きるか死ぬかの瀬戸際なんだから。


 目の前に立ち並ぶ店の数々。

 いつもならなんてことはない、が、今はどうにもそこにいる客たちが憎くてならない。


 そんな憎悪を抱いた瞬間。



 俺は手近なスーパーに入り、どの商品が盗みやすそうか吟味していた。


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