Page 06:離愛
二ヶ月経った。
俺はあれから激動だった。
その日の話。
俺とともにいつもより早めに帰宅した両親は、心ここにあらずと言った感じだった。
受け取った三千万はすでに銀行へ預けてしまったのか、手元にはない。あるのは、母親が仕事を辞めるという話題だけだった。
翌日から俺は学校を「家庭内事情」という名目でしばらく欠席した。さぞ正則が不思議がっていることだろうが、それで何をしていたかというと、まず手始めに生まれてはじめての海外旅行に行った。
ハワイ、グアム、サイパンといったリゾート施設はもちろんのこと、アメリカ、イタリア、イギリス、フランス、日本から東に一周して中国まで行った。家族水入らずの、楽しい旅行だった。正直、生きてて今が一番楽しい時間だと思った。
家も広く増築、リフォームした。ちょうど住宅街の内側に入り込んだ空き地が数十坪あり、これまた幸運なことに格安な地価で全坪購入することが出来た。
それに乗じて新しく液晶テレビやHDDブルーレイ、アンプを含めたオーディオセットまで一式そろえた。
家は一気に豪華絢爛になった。
それからも家族旅行は、国内でもする機会が増えたし、外食にも今まで以上に行った。
今が面白くて楽しくて、幸せで。
求めるものはもう何もなかった。
あとは、失うことばかりだった。




