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第七話 ゾンビは気づく
どうしてあんなやつのことがこんなに気にかかるんだ。
……どうせあいつだって、口うるさいばっかりで、僕よりも先に死んでしまうのに。
自分が恋をしているということに気がつかなかった幼い僕は、ある日夢を見た。ヨーコが死んでしまって、ベッドや私物が全て片付けられ、がらんと広くなった病室で泣きじゃくる自分の夢を。
見渡しても探しても喚いても、そこにあるのはただ、からっぽの骨組みになり畳まれたベッドと、荷物も何もなくなった白い病室。
人がいない病室は、ただの箱だ。
「僕はどうしてたったの一度も、“きみはそう思うんだね”って言ってあげなかったんだろう。かんたんなことだったのに」
夢の中でそう呟いた直後に、僕は目を覚ました。
「僕は…意気地なしだ」
一人が寂しいだとか、大切な人たちに置いて行かれただとか。そんなことが、今を生きている大好きな人をないがしろにしていい理由になんか、なるはずがなかったのに。
夜明けの光に目が眩みながらも、僕は、自分の寝ぐらの扉を開けた。




