表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

第五話 次から次へと問題が……。



 形勢逆転。

 先ほど俺を食おうと追いかけていた食人木が、今や川に流されまいと踏ん張っている。

 俺はゆっくりとした歩みで近付き、食人木に微笑んだ。


「大変そうだな」


「ギョギョ、ギュオーーン」


 川の真ん中で、流されないように耐えてる姿はなんとも滑稽だ。

 俺は、ざまぁないと笑った。

 このまま流されたとしても、俺は食人木のために、日本人を代表して合掌ぐらいはしてやるつもりだ。

 二度と追いかけてこないことを祈り、俺は慈愛の満ち溢れる笑みを浮かべた。


「早く、楽にしてやるな」


 そして、安らかに眠れ。


「ギョギョ……オオオ、オ、オネガイ、ダ。タス、ケテ、クレ」


「…………ん?」


「タ、スケ、テ」


「………ハッ? オマエ話せるのかよっ」


 これは衝撃の事実だ。

 なんと目の前の食人木、話せるようだ。遭難してから話せる相手に会ったのは初めてだ。


 でも、素直に喜べない初めてだ。

 その相手は敵だし、内容が命乞い。

 感動する以前に、複雑な気持ちになった。


「ク、ワナイ、カラ」


 食わないと言われて、信じると思ってるのだろうか。

 俺を食おうとして、追いかけいた奴がだぞ?

 普通は信じない。


「オレノ、ミ、タベレル。アゲル、カラ」


 食人木は、さっきまで三角型だった目を丸型にした。

 ウルウルと潤ませ、上目遣いを決め込む。

 美人さんがやったら気持ちが揺らいだろうが、コイツのは気持ち悪いだけだ。


「ふーん、お前の実食べられるんだ。いいこと聞いた」


「ダ、カラ、タスケテ」


 別に食べたいとか思えないんだけど、目の前の奴から、助けて欲しいと言う意思がバシバシと伝わってくる。

 さて、どうしたものだろうか。

 ここで、この食人木を虐めて川に叩き落としたら、俺は悪者となるのだろうか?

が、よく考えてみろ?

 俺を食おうとしたのだぞコイツは。助けてやる義理なんか無い。

 それに、助けた途端平気で襲ってきそうだ。


「ちっ…………ほら、その根っこでこの木の棒に捕まれや」


「グオッ?」


 助けてくれるのか? みたいな顔をされた。

 はぁ? 助けるわけないだろう。


「なにを期待してるんだ? ほーらよっと」


「ギィヤァァアアーーッ!!」


「極楽浄土に行けたらいいな」


 根っこを絡ませた木の棒を、川に投げ込む。

 体重を支えていた木の棒を投げられ、食人木はバランスを崩す。

 そして、水の流れに耐えられなくなり、横に倒れて流されて行った。

 南無……。


「敵には手加減なんてしない。俺のモットーだ」


 助けるとか思ったようだけど、俺を食おうとした奴は、許さないから。

 でも、一度は言葉を交わした仲だ。

 ほっといても流されただろうから、一人では死ねない食人木の後押しをしてあげたよ。


 テレレ テッテレ~♪ 


 お決まりの電子音。

 でもいつもより若干豪華な音になっていた。ほんの若干だが。


「この電子音には意図があるのか? 携帯の電子音っぽくないんだよなぁ」


 流石の俺も、携帯から鳴る音じゃないと気付く。

 いい加減に鳴らすのではなく、俺が何かしらの行動した時に、反応して鳴ってる。

 携帯の音とは、無関係のようだった。


「そうなると、この音はなんなんだ? レベルアップの効果音として有名だけど、まさかな」


 冒険もののゲームとかで、テッテレ~♪ と鳴ったら、レベルアップの合図だ。

 もしや俺の知らぬところで、レベルというものか存在し、アップしてるのではないだろうか?


「それなら、レベルとかステータスを見たいんだけど。呪文唱えたら出てくるのか?」


 それで、チートとかだったらどうしよう。

 異世界に転生したり、召喚された人間は、大抵チートと言うお決まりがある。

 俺もその一員かもしれない。

 なんだが、楽しみになって来た。

 俺は昔見た小説の呪文を思い出し、口にした。


「ステータスオープンっ!」


 ……………………寒っ。


 何も出ないんですけど、不具合ですかね?

 チートじゃなくていいから、反応はして欲しい。切実にそう思う。

 穴があるなら入りたい。


「はぁ…………魚釣りにでも行こ」


 今の傷ついた俺に必要なのは、無心になる事。

 しばらく調子に乗らないで、静かに過ごそう。



* * * * * * *



 魚が一匹、魚が二匹、魚が三匹、魚が四匹、魚が…………。


 森の中で叫んで何もなかった人こと俺は、魚釣りを無心で続けている。

 食べれる分だけ釣ってるから、罰は当たらないはずだ、アハ、アハハハハーー。


「何匹今日は食べるかなー、楽しみだなー」


 下処理を済ませた魚を大きな葉っぱの上に置いていく。

 先に内臓等を処理をしておくと、味が良くなる。

 釣りをしながら、今日の献立でも考えよう。

 今日は醤油垂らして食べてみようかね。

 塩焼きも良いけど、醤油垂らして食べても美味しい決まってる。

 塩焼きと醤油で半々くらいにして食べよう。食べ比べしてみたい。


「ヨッと、八匹目~♪ このぐらいあれば満腹だ」


 リズムよく釣れる魚たち。

 今日は追いかけっこしたので、八匹の魚くらい余裕で食べれる。


「ふぅ~、テントでも建てる、か…………は?」


 伸びた釣竿を、元のペン型サイズに戻してる途中、俺は異変に気付いた。

 異変が起きてるのは、魚を置いていた葉っぱの上。


「おかしい。おかしいぞ。魚が三匹(、、)しかいないっ?!」


 どうやら誰かが俺の魚をくすねたようだ。許さん。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ