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第二話 初心者の魚釣り



 ではでは、お待たせしました。

 秘密兵器こと、このペン型釣竿について今から説明しよう。


 これは、随分前にネットで買ったものの、使う機会がなく、存在自体を忘れてた携帯釣竿だ。


 リュックの中に入れておいたのを、今思い出したよ。


「確かここを回すと……おっ、伸びた」


 ペン型と豪語しているが、ポールペンよりも少し長い。

 だが、突っ張り棒のように五十センチ程まで伸びる構造だ。普通の釣竿で言うならば、竿(サオ)の部分がこれにあたる。

 それとは別途で、釣り糸が巻いてある電動式リールがあるのだが、これがまた凄いのだ。

 魚が食いついたらボタンをポチッ、電動で糸を巻き上げ、魚が上手に釣れましたー! みたいな流れになるそうだ。

 俺がリールを回して釣るわけではない。今のご時世、手動よりも自動の時代だ。


 ちなみに木や枝などの自然物で、釣竿を作るという選択肢が無かったわけではない。

 無ければ作っていただろうが、やはり既存のものには性能愚か強度も負ける。

 ものづくり日本の技術は、伊達ではない。


「この疑似餌(ぎじえ)とか、精緻な作りすぎて怖いくらいだもんな。虫っていわれたら頷く」


 針と同化してる疑似餌を見ると本当にそう思う。

 魚が釣れたわけでもないのに、今から結果が楽しみで仕方ない。

 俺は、疑似餌と重りがついた糸を、ポイッと川に投げた。

 テレビに出る釣り人がやるのを真似て、生き物が動いているように、疑似餌を動かす。

 死んだ餌よりも生きてる新鮮な餌の方が魚も好きなのだと聞く。

 所詮、初心者なのでそんな簡単に釣れるはずがないって分かってるけど動かし……って、かかった!?

 入れた瞬間、竿にビビッと当たりが。

 何がなんだがわからないが、魚が食い付いたようだ。

 あの嘘っぽい動きで釣れるとか、間抜けというか、(あわ)れというか……。日本の魚とかだったら、絶対に釣れない動きだな。


「異世界の魚釣り、難易度easyだわ。では早速、ポチッと」


 ヴヴヴィーンと言う音を奏でて、糸が巻かれる。

 抵抗もなく巻かれてく糸に興奮を覚える。

 リールからカチッと音がし、動きが止まった。

 ドキドキしながら糸の先を見ると、やはり魚がいる。

 見た目は、(あゆ)っぽい。


 異世界だから、ピラニアみたいな凶暴な魚が出てきたらどうしようと思っていた。

 普通ってだけで、これ程嬉しいとは……。

 生は危ないかもしれないが、焼けば食べれそうだし、これは貴重な食料源になる。

 それに簡単に釣れるものだから、魚釣りも案外楽しいというもの。


 だが、遊びで釣って命を無駄にしたりしたら罰当たって、取れなくなったりとかはないよな? こ、怖いぞ。

 よし、食べる分だけにしておこう。


 てことで、二匹だけ釣ることに決定した。


「もう一匹くらい釣っておくか。ん?」


 釣り糸を投げようとした時、テッテレ~♪ という電子音が耳に入った。


 テッテレ~♪ アホみたいな効果音? 失敬な。俺の携帯の着信音だぞ。


「おかしいな。昨日無能宣告したはずなんだけどなあ」


 昨日確認してみたが、携帯は圏外と表示されるばかりで全く使い物にならなかった。

 その時点で、携帯はただのお荷物だ。

 それでも俺が長年愛用してきた携帯だ。少なからず愛着がある。

 捨てたら後悔しそうで、リュックに入れたままにしていたが、もしや奇跡が起きて電波繋がったのか?

 そうだったら、助けを呼べるぞ。

 ゴクリ。無意識に喉が鳴る。


「ま、まさかな……」


 はやる気持ちを抑えつつ、携帯を開いた。


 その結果……。

 はい、分かってました。変わらぬ圏外マーク、ありがとうございます。


 ポケットから出した携帯の上画面に表示される言葉は、やはり圏外。


 人をこんなにも期待させておきながら……。


「…そろそろ寿命だったし、故障でもしてんのかな」


 期待して損した気分だ。

 奇跡が起きて、ドラマのような展開はやはりないか。

 あれはごく稀のケースで、俺のような一般人間にとってはそれこそ奇跡なんだろう。


「はあ、無駄に体力使ったわ。さっさと魚釣って終わろっと」


 再び糸を川に投げ入れ、魚がかかるのを待つ。

 次も嬉しいことに、一瞬で魚がとれた。

 やはり俺には眠っていた才能があるのかもしれない。

 天は二物を与えずと言うが、天才は五物でも数十物でも才能を持っているのが世の中だ。

 意外な分野に才能を見つけられて、俺の気分は絶好調です。


テッテレ~♪


 ……いや、たった今、絶不調になった。

 せっかく人が良い気分になっていたのに、その雰囲気をぶち壊すような電子音が鳴ったからだ。

 俺の心が捻くれているのかもしれないが、なんだが馬鹿にされているような気分になったのはいうまでもない。



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