・・・・・、召喚される
何故か歓声が聞こえて、うっすらと目を開けてみると知らない天井が、あっ、違うわ。青空だった。
外? と思い首を捻ると人、人、人、沢山いる。ガバッと起き上がると立ち眩みがした。なんだこれ!?
気分も悪いけどそれだけじゃない。圧迫感というかなんといったらいいのか、コンサート会場の中心にいるみたいだ。みんな自分に熱狂している。いや、自分達か。
「ぐっ」「うーん」「…………」「うっぅ」
近くに同じ様に寝転んでいた四人が呻き声を漏らしながら上半身を上げていた。すると自分達の覚醒を待っていたかのように声が響きわたった。
「勇者召喚の儀、成功である!!! 皆、よくやった! そして導かれし勇者よ、よくぞ我等の願いに応えてくれた!! まずは感謝の意を示そう!!」
そう言って、とても豪華な鎧に身を包んだ韋丈夫が膝を折り自分達に跪いく、それに倣ってか自分達を囲むように立っていた人達、兵士かな? も跪いていく。
「えっ、何コレ?」
「えっ!?」
「やっ?」
「勇者?」
「…………?」
お互いに顔を見合わせるけど答えは出るはずもなく仕方なく、未だに跪いたままの人達に声を掛ける。古久東君が。
「あのー、すみません。えーと、取り敢えず立って頂けませんか?」
すると韋丈夫が立ち上がり、兵士達も後に続いた。辺りを見回しながら古久東は質問した。
「何でしょうか? これは?」
「何、と申されても、勇者様方は我等の願いに応えてくれたのでは無いのですか?」
「勇者? ね、願い…………? それに応える?」
そこで確かめる様に再び顔を見合わせるけどそんなのは無かった。皆も首を振る。
「僕達はいきなり光に吸い込まれたんですけど?」
「うむ。我等の召喚魔法陣が勇者様を選び下さったのだろう」
と、一人納得する韋丈夫。こちらの都合はスルーらしい。
「待ってよ! そんなのいいからドコなのよココは! 勝手に連れてきて!!」
その態度にキレたのか、声を荒げる女Bこと加藤英里座
「勝手? はて? 言い伝えでは勇者の素養を持つ者が自ら応え、我等の下に召喚されるとあったのだが……」
「ハア? 私が望むわけないじゃん! 何言ってんの!?」
「待って英里座、落ち着こう。ここは何か違う。」
古久東君が加藤さんを落ち着かせる様に言った。確かに違う。そもそも日本人じゃないし、鎧も作り物臭がしない。って。
…………アレ? コレってアレか!? アレだろ! いっ、異世界転生ってやつか!!! チートか! チーレムか!! イヤ、イヤ、イヤ、違う、死んでないから転移だ。 あっ、何か冴えてきた。さっきまでのクラクラ感が吹っ飛んだ。
いやー、勇者かー、参ったなー、地球に家族も残したままなのに、いやー、参った参った。でもしょうがないよね、勇者だし。求められちゃったし。
ニヤニヤを抑えるのが大変だ。見つかったら加藤さん当たりに怒鳴られそうだ。マジか。あるんだなこんなこと。やっぱ魔法陣なんだな召喚は、あの時忘れ物をを取りに教室に戻って良かった。なんてったって四人を中心に魔法陣が広がって、自分の所ま……で……って…………。
四人を……中心に? 勇者を中心に……? 自分は端っこ。巻き込まれ系……。勇者じゃない? そっち系のテンプレ? マ……ジ……か。無能でも大事に扱ってくれるかな?
血の気が引き、青ざめた顔をしている自分にも古久東君が心配してくれた。
「松本君、大丈夫か? ヤバい顔してるよ。気を強く持とう」
「う、うん。ありがとう。大丈夫だよ」
こっちがコソコソしていると思案顔をしていた韋丈夫が咳払いし注目を集める。
「うむ、どうやら食い違いがあったようだ。腰を落ち着かせて先ずは話し合おうでわないか。如何かな勇者様方」
「そう、ですね。いいよな皆も?」
自分達は頷くしか出来ない選択肢を選ぶしかなかった。