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黄泉路案内人さやか  作者: 柳原史弥
1/1

案内一 深夜の住宅街にて

 超タイプの女の子に告白でもされねえかな――


 俺こと吉沢拓人は不毛な妄想を抱きながら、深夜の住宅街を歩いていた。

 こんな妄想をするくらいだから、当然彼女もいない。「独り身を貫く孤高な存在」なんて言うかっこいい感じではなく、単にモテないだけだったりする。

 イケメンではなく、安月給だからモテないのか――たぶん違う。そのことは一因ではあっても、根本的な原因ではない。俺がモテないのは、モテるための努力をしていないからだと思う。

 俺の知っているモテ男Aは、特別顔が良いわけでも、超金持ちでもないのにモテる。それはモテるための努力――積極的に出会いを求めたり、マメに連絡したり、服装に気を使ったり、などをきちんと行っているからだ。俺もAを見習えば良いのだろうが、どうにもそういう気になれない。

 つらつらとそんなことを考えている間に、そこを曲がれば自宅アパートが見える、という所まで帰り着いていた。そしてその曲がり角にある電柱に――

「おや?」

 ――女の子が寄り添うように立っていた。

 想像してみて欲しい。人通りなんて全くない深夜の住宅街に、まだ高校生くらいの女の子が、何をするでもなく突っ立っているという状況を。そこはかとなく怖い感じがしないだろうか。幽霊的なことも頭にはよぎったが、現実的に考えれば家出少女の類だと思う。そうじゃないとしても、何か関わるとめんどくさい事情がありそうだ。気にしない素振りでさっさとこの場を通り過ぎてしまえば良いのだが、俺にはその少女から目を離せない事情があった。その事情とは――

(すっげえ可愛い!)

 とまあ、そういうことだ。めちゃくちゃ可愛いんだよ。タイプなんだよ!

 まずその体型だ。E、いや、Fはありそうな豊かな胸。むしゃぶりつきたくなるようなふともも。かと言って、首筋やお腹周りは太すぎない。モデルのようにスタイル抜群というわけではないが、全体的にほどよい肉付きのボディは、思わず生唾を飲み込んでしまうほどだ。

 次に顔立ちは、例えるなら「近所に住む優しいお姉ちゃん」という素朴なものだ。けれど、外灯の光で艶やかに光る黒髪が、少女を一歩だけ大人にしている。胸にかかるぐらいの長さ、というのもドンピシャで俺好みだ。

 そんな超タイプの女の子に告白されれば、不毛な妄想が不毛でなくなる。まじで告白してこねえかな?

(なんてな。そんなことあるわけ――)

 うお! め、目が合ってしまった……

 少し潤んでいて、陳腐な表現だが、吸い込まれてしまいそうな瞳だった。

「あの? もしかして見えてますか?」

 うわああ! 話しかけられたあ! おいおい声もすっげえ可愛いぞ。ん? でも待てよ、質問の意味が分からないぞ。なんだって? 見えてますかって言ったか?

(ああ、そうか)

 そう、これは幻覚だ。日々不毛な妄想を繰り返している上に、今日はしたくもない残業をしたせいで普段よりも疲れている。その疲れが手助けをして幻覚を見ているのだ。そうに違いない。幻覚だからこそ超タイプの容姿で、さらに声までかけてきたのだ。そうと分かれば怖いものはない。自分が見ている幻覚だもんな。何でも思い通りにいくはずなんだ。だから、この瞬間を楽しむしかない。ビバ! 幻覚! 

 よし! そうと決まれば、一度言ってみたかったあのセリフを言うしかない!

 俺は精一杯のキメ顔を作り、奥義(?)壁ドンを繰り出して、

「ああ見えているとも。だって、俺の瞳は君を見つめるためにあるのだからさ」

 と囁いてやった。

 完璧だ。声も渋めにしたし、これで幻覚ちゃんもメロメロだあ!

「気持ち悪いです」

 あれ? ドン引きしてらっしゃる? 厳しい幻覚ちゃんだなあ。それならばもう一つのとっておきを繰り出すしかないな。

 壁ドンの姿勢は崩さず、嫌悪の表情を浮かべる幻覚ちゃんの顎をくいっと持ち上げてやる。そしてキメ顔を作り直して言い放った。

「さあ行こうか。愛の夜行列車に乗って、二人だけの桃源郷へ!」

「見えるだけじゃなくて触れるんですか! ビックリです! というかやっぱり気持ち悪いです!」

 おおう……本当に手厳しい幻覚だな。

 あれ? でも、幻覚なのにしっかりと指先に肌の温もりを感じるぞ……。それに、幻覚ちゃんの吐息が顔をくすぐる感触まである。ああ、何か甘い匂いがする。ずっと嗅いでいたいぜ。じゃなくて! これが幻覚か? よくよく考えてみれば、残業で疲れたと言っても、「ああ、今日はいつもより疲れたなあ」程度のことなのだ。酒を飲んでいるわけでもない。変なクスリでもキメてない限り、こんなにはっきりとした幻覚を見るわけないよな。

 よし、確認してみよう。

 俺は彼女から一歩下がって聞いてみた。あ、もちろん顔は普通に戻してである。

「ええと、君は俺が見ている幻覚じゃないよね?」

 我ながらアホな質問だ。また気持ち悪いですって言われそう。

「幻覚? 何言ってるんですか気持ち悪いです」

 ほらね。予想的中! しかし女の子に「気持ち悪い」って言われるのはショックだなあ。何だか泣けてきた。でもここで泣いてしまったらかっこ悪すぎる。ここはグッとこらえるんだ、俺!

「じゃあ君は家出少女かな?」

 涙を奥に引っ込めて、俺は彼女をみかけて最初に思ったことを口にした。

 彼女は首を横に振ると、少し考える素振りをしてから言った。

「私は――ええと、まあ、幽霊みたいなものですね」

「幽霊?」

 こんなはっきり見えて会話までできる幽霊だと? それならまだ幻覚の方が信憑性あるぞ。そりゃ、霊感ある人だったらはっきりと幽霊が見えることもあるんだろうけど、俺は霊感なんてものは持ち合わせてないしさ。となると彼女はやっぱり家出少女なのだろう。警察に通報されたくないばっかりに嘘を言ったのだ。まあ、可愛い嘘じゃないか。ここは大人の余裕を見せつけてやろう。

「コンビニのおにぎり二個までなら許す! いや、さらに惣菜も一品までなら!」

 さすがにこの時間帯だと近所のスーパーはもう閉店している。だが、最近のコンビニは揚げ物やらサラダやらが充実しているから、きっと満足してくれるだろう。

 だが、彼女は再び首を横に振った。

「うーん、まあ信じられませんよね。普通は。じゃあ、ちょっと見てて下さいね」

 と言って、彼女はおもむろに側のコンクリート塀に手をついた。

 一体何をする気だ、と訝しんだ瞬間だった。彼女の手がスッと塀に吸い込まれた。まるで水の中に手を入れたような、そんな容易さでだ。そしてあっと言う間に彼女の全身が塀の中に吸い込まれていった。

「え? な、なんじゃこりゃあ!」

「まあこういうことなんです」

 背後からの声に振り向くと、上半身だけを塀から出した彼女が居た。また塀の中に消えたと思ったら、すぐさま元居た場所に塀をすり抜けて戻ってきていた。

「家出少女はこんなことできませんよ?」

 確かに! こんなことは家出少女にはできない芸当だ。ってか家出少女じゃなくても、普通の人間にはできませんけどね!

「君は一体?」

「私はさやか。黄泉路案内人のさやかです」

「は?」

 よみじ――なんだって? 彼女は何か怪電波でも受信しているんだろうか……

「ああそっか。分かるわけないか。あ! 丁度良い! ちょっと付いて来て下さい!」

 言うなり俺の腕を掴んで彼女――さやかは走り出した。意外と力強くて、俺は抵抗する間もなく引きずられていった。


 数分後、俺は大きな通りに連れられてきていた。

「ほら、あそこを見て下さい」

 さやかが指指した先にはあったものは――なんと! 電柱に激突してクシャクシャになった自動車だった。今気づいたが、野次馬や警察、救急隊員が居て、怒号とサイレンとで辺りはものすごい喧噪に包まれている。ここは今しがた起きたばかりであろう事故現場ということのようだ。

「おい、こんな事故現場見せてどうしようって言うんだ? 俺には野次馬をする趣味はないぞ」

「ああ、違いますよ。車の上を見て下さい。私が見えるんなら、見えるはずですよ」

「車の上だあ?」

 そんなところに何かあるはず――

「あ!?」

 そこには男がぷかぷかと浮いていた。まじか? 今度こそ幻覚だろこれ!

 俺はさやかとぷかぷか浮いている男を交互に見る。さやかは頷いて、

「あれは死者の魂です。きっと即死だったんでしょうね」

 言い終わるとさやかはふわっと浮かび上がって、車の上まで飛んでいった。そして男の腕を掴んでこちらまで連れてきた。周りにいる人は誰一人として気づいていないようだ。見えているのは俺だけってことか。

「あ、う……」

 男は意識がはっきりしないようで、どこだか分からない場所をボーっと見つめながら呻いていた。

「しっかりして下さい! あなたは死んだんですよ!」

「う、うう……あれ? 君は誰だ? 僕は一体ここで何をしているんだ? というか僕は誰だ?」

 意識がはっきりしても、状況を呑み込めないでいる男。というか、俺も状況が呑み込めていない。これは本当に現実なのか? やっぱり幻覚なんじゃないか? だって現実の人間はぷかぷか浮いたりしないからね!

 そんなことを考えていると、さやかが俺の方を向いて言った。

「まだ幻覚だと思ってるんですか? これは現実ですよ。この方は今事故にあって、死を認識しないまま死んでしまったんです。そういう時の魂は、自分が死んだことに気付いていないんです。記憶は混濁するし、場合によっては全くなくなることもあります」

 心を見透かされた? いや、たぶん顔に書いてあるってやつだな。しかし、死んだことに気付かない、か。何だか悲しいな。

 さやかは再び男に向き直って優しい口調で語りかけ始めた。

「良いですか、あなたはあの車に乗っていて電柱に激突するという事故に遭ったんです。ほら、救急車に運び込まれているのはあなたですよね? あなたは残念ながら死んでしまって魂があの体から抜けだしたんです」

「死んだ? 僕が? そんな……」

「悲しいですけど、事実なんです。このままだとあなたはずっとここで彷徨うことになります。だから、私がきちんと行くべき場所まで案内します」

 言い終わるとさやかは、何も無い空間に右手を翳して、「開け!」と叫んだ。すると空間に穴が開いて、みるみるうちに人が通れるほどのサイズになった。

「さ、行きましょう」

「はい」

 やけに素直に付いていくな。もし俺が男の立場だったら、自分の死を受け入れられずに醜く騒ぐと思う。そういえばさやかが左手を男のおでこ付近に翳しているな。何か落ち着けるような魔法でもかけたのだろうか。

「あ、たっくんは少し待ってて下さいね」

「あ、ああ」

 さやかと男は穴の中に消えていった。ほどなく穴も消え、そこには元の空間が広がっていた。

 というか、「たっくん」ってなんだよ! 出会って数分しか経ってないのにこの呼び方って! 確かに幼い頃はそう呼ばれていたけど、今じゃ親戚のおばさん専用の呼び方だ。そもそも俺、さやかに自分の名前名乗ったかな?

 疑問は尽きないが、さやかが戻ってくるまで待つしかない。


 で、待つこと数分。

 突然先ほどと同じような穴が開いて、そこからさやかが現れた。男の姿は無かった。

「お待たせしました。これで分かりました?」

「何が?」

 全く分からん。何かよく分からないことが起こった、ということしか分からん。むしろ「なんでたっくんなんだ?」という新たな疑問が生じたくらいだ。

「だからこれが黄泉路案内人ですよ。黄泉はあの世。死者の魂が迷わないように、あの世までの路を案内するお仕事です」

「お仕事ですって……そういうのって死神の仕事じゃないのか? あの骸骨で鎌を持ったさ」

「それは西洋の死神さんですね。まあ間違ってはないですよ。彼らも日本で活動してますから。あ、続きは歩きながらしませんか? 勤務時間中なんで、現場が終わったら待機場所、あの電柱にすぐ戻らないとなんです」

「勤務時間? 何だか会社みたいだな」

「ええ、会社ですよ。私はしがないOLさんです。さ、行きますよ!」

 言いながらさやかが歩き出したので、俺は慌てて後に続いた。


「で、さやかは死神じゃあないのか?」

 横に並んで歩く俺とさやか。

 悪くない。可愛い女の子と並んで歩くのは悪くない。それにちらっと横目で見ると、胸が僅か揺れている。眼福、眼福。あ! でもいきなり呼び捨てはやりすぎたかな? うーん、でもあっちも「たっくん」呼ばわりしてきた訳だし、呼び捨てくらい良いよな。

「あ、今エッチな目で見ましたね? 最低です! というか、いきなり呼び捨てなんて慣れ慣れしいですよ!」

「み、見てねえし! 揺れてる胸なんて見てねえし!」

 ぐあああああ! 分かりやすい! これは否定が肯定になっちゃってるよ! は、話を逸らすんだ!

「そ、そっちだって、たっくんなんていきなり慣れ慣れしいじゃないか!」

 いやまあ、別に「たっくん」と呼ばれるのは嫌じゃないんだけどね。今は俺がさやかの胸をいやらしい目で見ていた、ということから彼女の意識を逸らさないといけないわけですよ。

「へ? 私、あなたのことそう呼んでました?」

「ああ、呼んでたよ。確かに小さい頃そう呼ばれてたけど、そもそも俺、自己紹介した記憶ないんだけどな」

「うーん、変ですねえ……」

 よっしゃ! 俺のいやらしい目のことからは完全に意識が逸れたな。

「お主の生前に関わる人物かもしれんぞ? さやか」

「「!?」」

 突然降り注いだ第三者の声。一体どこから?

「せ、先輩!」

 さやかが言った。

 さやかの目線を追うと、そこには着物に身を包んだ幼女が居た。よくよく見ればそこは、さやかと最初に出逢った電柱だった。話に夢中で気づかなかったが、帰り着いていたようだ。

「お主、生前のさやかを知っているのかえ?」

 幼女が俺に向けて言った。

「い、いえ。知りませんであります!」

 な、なんて貫禄のある幼女なんだ。見た目はどうみても幼女――七、八歳くらいだというのに、何歳も年上のような感じがする。気圧されてしまって思わず変な返答をしてしまった。何か恥ずかしい!

「本当に知らないのかえ?」

 もう一度聞かれ、改めてさやかの顔を見てみる。

 うん! すっごく可愛いね! こんな可愛い女の子を知っていたとしたら、絶対に忘れるわけがない。だから俺が生前のさやかを知っていたなんてことはありえないはずだ。

 俺は首を横に振った。

「そうかのう。よーく思い出してみよ。生まれてから今日までをよーく振り返ってみよ」

「生まれてからなんて大げさな。精々覚えてるのは幼稚園くらいから――」

 ん? 待てよ……幼稚園の頃の俺と言えば、近所に同じ年頃の子供がいなくて誰かに遊んでもらっていたはずだ。その人にたっくんとも呼ばれてような気がする。しかし、どのくらいの年頃の人だったのか、男だったのか女だったのかさえも覚えていない。何とも頼りない記憶だ。

「幼稚園くらいから何ですか?」

 さやかが聞いてくる。

「ああ。それは――」

 俺は頼りない記憶の話をした。

 話し終えて疑問に思ったのだが、俺が覚えていなくても逆にさやかが覚えているんじゃないか?

 俺は二人に向けてそのことを聞いてみた。

「私、名前以外の生前の記憶が一切ないんです」

 さやかは寂しげな表情を浮かべながら答えた。

「記憶がない?」

「はい。自分がどうやって死んだのかさえ覚えてないんです。意識がはっきりした時には、街中を浮遊していました」

 なるほど。確かにさっき見た事故後の魂も最初はボーっとしてたし、意識がはっきりしても「僕は誰?」とか言ってたもんな。

 それにしても、結局のところ生前のさやかと俺は関係あったのか分からず仕舞いだ。もやもやするなあ。いくら思い出してみようとしても、これ以上は思い出せそうにない。実家にいる親にでも聞いてみれば分かるかもしれんな。電話してみるか? ああでも、こんな時間だったらもう寝てるな。

「ま、ともかくじゃ。お主と生前のさやかは関係があったかもしれぬ。これが今のところの結論じゃ」

 幼女がまとめるように言った。いつの間にか手にしていた扇子で自分を扇ぎながら、「じゃ、解散」と続けた。

「いやいや、解散って! 結局あんたは一体何者なんだ?」

「あ、この方はお鶴さんです。ベテランの黄泉路案内人なんですよ」

 さやかが幼女の変わりに答えてくれた。

「ベテラン? この幼女が?」

「幼女言うな! わしはこう見えても幽霊歴四百年じゃ」

「四百年!?」

 そうか幽霊だし歳は取らないってことか。四百年前ならこの妙な言葉遣いも頷けるというものだ。

「しかし、その歳で死んじまったのか。可哀想に」

「たわけ!」

 痛ッ! 扇子がデコに直撃したよ! て言うか、さっきさやかに腕を掴まれたし、幽霊って普通に生者に触れるのかよ。

「わしは百歳まで生きて、天寿を全うしたわい」

「じゃあ、何で?」

「ふん! そんなことも分からんのか? 全くこれだから最近の若者は。おい、さやか説明してやれ」

 もうすぐ三十路に差し掛かるオッサンで、若者ではないと俺自身は思っているんだがな。百歳まで生きて、さらに幽霊として四百年も存在しているの彼女にとっては、生きている者は全員若者ってことになるのだろう。

 なんて一人で納得しているところへさやかの声が聞こえてきた。

「ええと、私達幽霊は容姿や服装、つまり外見を変化させることができるんです。私は最近ようやく服を変化させれるようになったんですが、お鶴さんはベテランですからね。容姿も思いのままです」

「なるほど。しかし何でまたそんな幼女の姿に?」

「幼女言うな! なあに単に前の姿に飽きたからじゃよ。去年までは二十歳頃の姿だったんじゃ。ボンキュボンじゃぞ!」

 ボンキュボン! それはぜひ一度拝見したかったが、今の幼女の姿からは想像もできないなあ。でも整った顔立ちをしているから、きっと美人であるには違いない。美人でグラマラスとは最高だな。去年のうちに出会いたかった! あ、待てよ。いくらグラマラスでも着物だったらあんまり分からないんじゃないか? いやでも、今が着物姿だから去年も着物姿だったとは限らないのかな。姿だけじゃなく服装も自由に変えられるみたいだし。 よーし、その変を掘り下げてみよう。って、あれ? 二人が何か話し込んでらっしゃる。

「今のところ三件魂を送りました。問題は拓人さんと出会ったことくらいで、他は特に緊急案件もありません」

「ふむ分かった」

 ううん? 何か俺が職場で次のシフトの人へ引き継ぎをするシーンに酷似しているぞ。まさかね、幽霊がシフト制だなんて……

「さて、小僧」

 幼女の扇子が真っ直ぐに俺を捉える。

「は、はい。なんでしょう……」

「お主はさやかの生前に関わりのある可能性が高い。だからの、これからさやかと一緒に暮らせ」

「「ええ!?」」

 俺とさやかは同時に声を上げた。


  

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