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ディファレントワールド  作者: へたれしし
8/13

第一章:現状把握

ちょっと暗い


なんだかんだとやっている間に全員回復が終わったのでこれからの動きについて話し合う。

俺は玉座に座り、他の二人は直立不動である。

一見疲れそうだがその姿勢が待機姿勢らしく体に力を入れなくてよいのでこれでいいと二人は語る。

俺は多少やりにくさを感じたが話を始める。


俺「とりあえずここだけでも閉鎖しないか?いくら3人で戦えるからと言ってなぁ・・・」

健吾「そうだな、さすがに毎回これは体は大丈夫でも精神がいかれそうだ・・・」


大樹は頷きながら何か手元をいじっているおそらくインベントリ整理だろう。

俺はそれを無視して話を続ける。


俺「ここの閉鎖の仕方はどうだっけ?」

健吾「確か・・・・ダンジョンのギルドマスターがギルド情報を選んで・・・・」

俺「・・・・あ、あった!よしこれで・・・・」


俺はギルド用メニューからダンジョン改装のアイコンを見つけ選ぶ、するとアイコンは第4階層閉鎖中に代わる。


俺「・・・・特に何も起きてないようだが・・・」

健吾「そうだな・・・俺が入口見てくるからちょっと待ってろ」


そういうが早いか健吾は黒檀の扉に近づき扉を色々調べ開くことを確認した後外へ出て行った。

それを見届けた大樹は再びメニュー画面を確認する作業に戻る。

俺もギルドメニュー画面で何かないか探してみることにする。

するとダンジョン構造増築ボタンが出てきたがその上に薄灰色がかかっていて押せないようになっていた。

どうやら一部機能が使用不能のようだ・・・・出来ればこのダンジョンをもう少し何とかしたかいのだが4階層だけでどうにかするしかなさそうだ。

そんなことをしていると健吾が帰って来た。

それもいきなり先ほどまで待機位置であった場所にである。

俺と大樹はいきなりの健吾の登場に驚き全身をビクンとさせてしまった。

健吾はそれを見ずに目を閉じ体全体を脱力させ、ふぅ~・・・と長く息を吐き出した。


健吾「よかった、転移は出来るみたいだな・・・・これでここを閉めてもダンジョンの入口に転移して外に出れそうだな

   そ・・・れに隠し通路を押してもうんともすんとも言わないからおそらく誰も入ってこないだろうさ」


俺は先ほど驚いたのを紛らわすように憮然として考える態度をとり答える。


俺「そうか・・・・これで安心して調べられるな・・・・」

健吾「ああ、まずはここを調べて次は通路と隠し扉、で、それが終わってから上の階層だな」


俺の言葉に調べる場所の順番を簡単に決める健吾。

するとそこで異変が起こる。


??『そうだな・・・・それにしても転移はビビったな』

俺・健吾「!?」


突然頭の中に誰か低い男の声が響き渡った。

耳で聞こえたわけではないが内容がしっかりと伝わってくる。

発信者は誰か周辺を警戒し、健吾も軽く屈み、いつでも動ける体勢で周辺を見渡している。

それに対して大樹は何もせずボーっとしている。

その危険に対しての無対応に俺は多少いらだちを感じ警告の棘を指す。


俺「おい、お前も探せよ」


そう言いながら大樹の後ろから敵が襲ってきても対応できるように大樹の後ろをちらちら確認する。

そうしているとまた声が頭に響く。


??『何言ってるんだ?今のは俺が言ったんだよ』


声は多少軽い響きがあり如何にも親しい友人に語りかけるような印象を受ける。

そしてそれを聞いてもこちらを見続けている大樹を見て理解する。


俺「・・・お前か?」


大樹は大きく頷きまた頭に響く声で語る。


大樹『ああ、そうだ』


健吾が訝しみながら大樹の口元を確認しつつ質問を投げかける。


健吾「お前どうやって・・・」

大樹『いや、何も発言できなくて暇だったからさ、何かないか探してたんだがよ、そしたらパーティチャットを見つけてな、試しに使ってみたらこうなったんだよ』


 そう言われて俺は思い出した。

 俺たちは購入したヘッドセットに最初からついているマイクでゲーム外の音声チャットをつなげてゲームを楽しんでいたのでパーティチャット機能を使用する機会がほぼ無く、頭から消えていて調べるのを忘れていたのだ。

 盲点だったと自分の頭を軽くたたきあ~・・・と納得の声を上げると

 頭から以前より低くて渋い大樹の機嫌の良さそうな声が響く。


大樹『試しにお前らも使ってみろよ、パーティ確認から行けるから』

俺「よし・・・・いくぞ、ぽちっとな」


 俺は古臭いセリフを合図にパーティチャットのボタンを押した、

 するとパーティチャットのボタンの文字がONになる、そして喋りかけてみる。


俺「聞こえてるか?」

大樹『それ口で喋ってるだけだろ?頭で考えて喋るんだ・・・考えるな感じろ・・・ってやつだ』


 上機嫌に語る大樹。おそらく喋れるのがうれしいのだろう。

 俺も大樹のアドバイスを参考にして頭で話そうとしてみる。


俺『懐かしいなそれ・・・と、こんな感じか?』


 大樹は大様に頷く。


大樹『ああ、感度良好だしかしやけにクリアに聞こえるなこれ』

俺『ああ、耳をふさいでも聞こえるから耳をつぶされても・・・』


 それを聞いて大樹はげんなりし手肩を落とす仕草をする。


大樹『・・・そんな嫌な想像膨らませんなよ・・・』

俺『いや、でも戦国時代なら耳は首の代わりに・・・』

健吾『やめんかバカ』


 俺が戦国の血みどろ知識の講釈をしようとすると健吾のバリトンボイスが止める。


健吾『全く・・・・あ~、あ~・・・こんな感じか?』

俺『お~聞こえる聞こえる・・・しっかしすごい状況だな』


 実際に3人は全くしゃべっていないので部屋中にしんとした空気が流れているのだが

 頭ではにぎやかに漫才をしているという何とも変な状況だ。


健吾『確かに、実際の俺たちは喋ってないのに声は聞こえる・・・変な感じだな』

俺『ああ・・・・・ん、声を出そうとしても出てこないなこれ』


 試しに「あいうえお」と言おうとしたが声は出ず口の形が「あいうえお」に代わっただけであった。


俺『話しながら口が動かせるってことは戦闘中にポーション飲みながら話せるわけか』

大樹『まぁ普通に話すよりは安全性が高くていいかもしれないな』

健吾『とは言っても男3人が黙ったまんま見つめ合ってるのは・・・ちょっとシュールだな・・・』


 健吾の発言にははっと軽く大樹が笑う。


大樹『俺はもともと喋れないから問題ない』

俺『そういうもんか?』

大樹『そういうもんだ』


 テストがてら取り留めもない話を続けていると健吾が思いついた。


健吾『もしかしてフレンドチャットもつかえるのか?』


 俺も大樹もはっとしてチャット欄を見る。

 パーティチャットの隣に「F」と書かれたボタンがあるおそらくフレンドチャットだろう。

 これは連絡をとれるチャンスなのではないかと3人は色めき立つ。


大樹『あ、でも俺そこまで仲良いフレンドいねーわ・・・』

俺『あ~・・・俺もそこまでのやつはな・・・・』


 理由としては基本いつも3人パーティでやっており、偶に高レベル地帯に行く時に別の人間を入れてやることはあるが大概相手はマイクなしなのでこちらが喋り、相手がチャットで答えるという

 言葉を交わすのが日常になっている3人からすると中々味気ないやり取りであまり気乗りしないから

 最低限の人数しかフレンドにしないからである。

 少々気落ちする二人だが健吾は違った。


健吾『俺リア友で住所も知ってるやつもいるからもしかしたら・・・』


 健吾はゲーム外の友人やメイド好きのサイトでリアルでも仲良くなった人をこのゲームに誘ったりしているのでフレンド人数がかなり多い、それこそ残り二人を足した数と同じくらいだ。


大樹『まじか!やったぜ!』

俺『俺はいつもお前がやる奴だと思っていたぜ!』


 興奮して健吾をほめる二人、それを気にせずフレンドリストを見る健吾。


健吾『それじゃあ連絡するからちょっと待ってろ』


 俺と大樹は表面上は憮然とした表情だがな脳内で喜びの声を上げいったらっしゃいと送った。

 そしてパーティチャットボタンをもう一度押し、解除すると健吾は黙りこくってしまった。

 俺と大樹は邪魔しないように静かにメニュー画面を開いたり二人で話したりしていた。

 数十分ぐらい経っただろうか何かに驚いたのだろうか目を見開いた後に数十秒目を閉じパーティチャットに帰って来た。


健吾『・・・・ちょっとお前ら、落ち着いて聞けよ』

大樹『あ、ああ・・・・』

俺『わかったけど一体何が・・・?』


 さっきの反応で内心ビクビクだがいろんなことに想像を膨らますが大体外れてそうなので何も考えないことにする。

 そして健吾が話すのを待つ。


健吾『俺は今5人に連絡をつけて見たら4人は留守らしく返事が返ってこなかった、でも5人目に話しかけたら通じた、それで少し世間話をしてな俺たちがどうなってるか電話で聞いたみてくれるように頼んだんだよ・・・・』


 健吾が一旦息を整える、何を言われるのかわからなくて戸惑う俺と大樹。


健吾『・・・・んで、頼んだら訝しげながらもこのゲームしながら俺の家に電話を入れてくれたんだ・・・それで俺の親に話を聞くと急に話をする態度が変わってな・・・』



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


友『お前誰だ?何でおれの友達のID乗っ取って俺に話しかけてんの?ふざけんなよ!』

健吾『なんのことだ?俺は斉藤健吾本人だぞ?』

友『どこまで知ってんだよ・・・これ個人情報保護法に抵触してプライバシーの侵害だぞ!?わかってんのかてめぇ!!』

健吾『お前こそ落ち着け!わけわかんないことを言っているのはお前だ!・・・よし!お前が俺である事を認められないなら俺たちだけしか知らないことを質問してくれ!それを聞いて判断すればいい』

友『てめぇがストーカーだったら情報がもっと洩れるだろうが頭沸いてんのか!?』

健吾『お願いだ!俺は本人だ!本当なんだ!気が狂ったストーカーとかじゃない!お願いだ!』

友『・・・・・それじゃあ中学校の頃俺と一緒に何が原因で喧嘩したか覚えているか?』

健吾『えっ~と・・・・確か・・・・・お前が俺に貸してたゲームが帰ってきたらデータ消えてた・・・・ってのが表向きの理由で本当はお前の好きな子が俺を好きだって噂してるのを聞いたんだろう?』

友『・・・・・本人に聞いたんだよ・・・・・』

健吾『・・・・・・それは何とも・・・・でもまぁ懐かしい思い出として・・・・』

友『・・・・それは今だから言えることだけどな・・・・それにしてもそこまで細かく知ってるってことは・・・・とするとこれは何かのドッキリか?TV番組でもからんでんのか?やり方が悪趣味だが・・・』

健吾『・・・なぁ、俺の親がお前に何を言ったんだ?良ければ教えてくれないか?』

友『・・・それじゃあ言うけどな・・・その・・・俺がかけたらな、お前の親が涙声で出てお前が・・・・・』



・・・・・・落雷で感電して死んでしまったっていうんだよ・・・・・・・




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



俺『・・・・・・・・・・・・・・』

大樹『・・・・・・・・・・・・・・・』

健吾『・・・・・・・・・・・・・』


 俺たちは何も喋れなかった、それはこの世界に来た時の状況と「落雷」でなんとなくわかったような気がしたからだ。


俺『・・・・それでその後はどうしたんだ?』

健吾『今もうちょっと詳しい話を聞いてもらっているところだ・・・・』

俺『・・・・そうか・・・・・・』


 空気が重い、何を言っていいのかわからない。

 何か俺たちの勘違いであってほしい、願わくばそうであるように。

 そんな空気の中、大樹がポツリとつぶやく。


大樹『・・・・落雷・・・・・か・・・・そういやぁ外でゴロゴロ鳴ってたな・・・・』

健吾『・・・・俺も覚えてる・・・・結構近くで鳴ってたよな・・・』

俺『・・・・それじゃあ目の前が真っ白になったのは・・・・雷が落ちたってこと・・・・だったのか?』


 流れで口が滑った、でも言わざるを得なかった。2人も俺が言わなければ言っていただろう。

 もしかして自分の体はもう・・・そう考えると気分が重い。


大樹『・・・・とにかく今は休憩しよう・・・・疲れては無いだろうけどな・・・・』

俺『ああ・・・・それじゃあ連絡が来たら教えてくれ・・・』

健吾『・・・・・わかった・・・・』


 そう言って俺たちはまた黙りこくった。

 紳士は他のリア友に連絡を入れている、大樹は何もしない時間に耐えられないのかインベントリの整理をしているようだ。

 俺はその間じっと考え事をしていた。

 俺は少し前フリーターだった。

 しかも次の職を見つけられない・・・いや、あるだろうがきちんとした仕事に就く元同級生の姿を見て小さなプライドが邪魔して妥協できなかった。

 自分は社会の底辺に近い存在だと思っていた。

 だから何度も「自分はいらない存在なんだ」「死んでも誰も悲しまないし惜しまない」と考えたことがある。

 だがそんなこと自分が思うだけで現実にはどこかで必要とされ死んだら悲しまれ惜しまれる。


(別の世界に居る現状は結局のところ向こうで死んだのと同じではないか?

いや、だがこうして俺は「俺」として個を確立し、意思を持ち行動している。現実世界との交信もできなくはない、であるならばそれはまだ生きているということではないのか?しかしそれが判明したとしてただのゲームの中で俺に現実の何ができる?生きていればいつかどうにかなると言う話は聞くがこれは死んだも同然なのではないのか?わからない・・・・・わからないわからないわからない・・・・・)


 鬱屈とした至高の奔流が俺の頭を埋め尽くす、そして自分が生きているのか確認するために右手を持ち上げ目線の高さでグーパーを繰り返す。

 そして何度目かの後にぐっと力を込めて握る。


(動く・・・・この体は俺の言うとおりに動く・・・・感じたままに感じる・・・・俺は生きている・・・・意思がある・・・俺は「俺」だ・・・・体は違えども俺は「俺」なんだ・・・・)


 目や体は動く右手を自分のものだと理解しているが頭はそれを幻想だと断じられれば反論することが出来ない。

 否定されることへの不安の中で俺は右手を強く握りしめるのをやめることが出来なかった。


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